いつもいっちゃん

オッペンハイマーのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
第96回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、編集賞、作曲賞最多7部門受賞。
クリストファー・ノーラン監督の新たな傑作。
日本ではセンシティブな内容かつ時期的な関係もあり、物議を醸しつつ公開が決まらなかった作品。
間違いなく日本で観られるべき作品。

原爆の父と呼ばれた男、オッペンハイマーの嫉妬と疑念に翻弄された人間ドラマ。
研究仲間、政治家、軍人、先駆者など登場人物が多い中で交錯する人間の愚かさの物語。
発明と進歩の先にある結果への警告を美しくも恐ろしく描いたクリストファー・ノーラン監督の新たな次元。
倫理に揺れる者と倫理が見えない盲目の権利者。
作る側と落とす側の境界が見誤ることの恐ろしさ。また作る側の使用される未来を見据えない程の発明意欲。
ドイツに負けてはならないという目先の視線。
また赤狩りの対象になり、ソ連のスパイ容疑にまで追い詰められる男の重圧。
その精神が壊れそうなオッペンハイマー像をキリアン・マーフィが複雑かつ繊細に演じていました。
視線1つで語られた罪の意識。
また原爆の実験、粒子に至るまでの神秘的かつ脅威的な映像表現も凄まじい。
編集も見事で、時系列や物語の転換までテンポが良く、180分は長く感じません。
原爆の被害を直接描いていないようで、既に最初からその脅威は常に映している。
何故今語られるべきなのか。
アメリカと日本とでは相違のある見方になってしまうことも含め議論されるべき作品。
また見直したい。

今だけというセリフが刺さる。