【世界を変えてしまった男】
まず最初に､本作は"日本人だからこそ見た方がいい映画"だ｡
戦争を語る上で､"敵を知る事"はとても重要な事で､厳しい事を言うと､逃してはならない事なのである｡
勿論､本作を見たからといって､原爆の事やましてや"オッペンハイマー"の事も全部知る事ができると言うことでもないが､殺傷能力の高い爆弾を作り､その後の世界をガラッと変えてしまった人物の事を本作を通して､少しでも興味を持つことは､これからの社会に繋がる重要な要素なのではないだろうか？
そして､オッペンハイマーを擁護してしまうような要素になってしまうのだが､彼の"政府に対する疑問"がかき消されていく要素がとてつもなくしんどい要素であった｡いわゆる"赤狩り"だ｡本作の大部分は､原爆の事ではなく､共産党員を排除しようとする政府の"口封じ"とオッペンハイマーと仲間たちが戦う場面が描かれている｡オッペンハイマーが"一度は広島や長崎の現状から目を背けながら"も､疑念は消えず､最終的には戦っていく姿勢が描かれているのがとても興味深かった｡
そしてオッペンハイマーと"アインシュタイン"…この2人の関係が箇所箇所ながらも､よく描けた方じゃないかなと感じた｡むしろ描かれてなかったらどうなっていたのか想像できないが､｢核｣に関係した2人の会話が見れてとても良かったと感じたし､社会や歴史に興味がない人向けにもこの2人の関係性を知るいい機会になれたのではないか？
ネタバレしすぎるといけないのでここまでにするが､本作の公開に対して日本のメディアや配給会社が割と活発に動いてくれたり､SNSでもいろいろな議論が重ねられている所は良い傾向だと思うし､日本のこの動きこそ､本作においての最大の戦果だろう｡
原爆投下から今年の8月6日で78年を迎える日本…まだまだ平和に向けて｢核｣の存在について議論すべきだし､本作がそれを語る上で一つの要素となっていく事を私は願いたい｡
オッペンハイマーのラストの言葉が､私を更にそう感じさせた
