レオン

オッペンハイマーのレオンのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.7
アカデミー作品賞他7部門受賞作  (★平均4.0・ 映画コム★3.7 近隣IMAX劇場)探求の2時間半・堪能の30分。 進展の把握に神経を研ぎ澄ます2時間半、と楽しめる時間は残りの30分・・そんな作品。 米アカデミーはまたしても一般の方にはほぼ楽しめない様な作品に「冠」を呈した・・。
(感動の伝記ドラマを期待した方は、大きく裏切られるかもと・・)

オッペンハイマー博士の5つ位の側面が断片的に同時進行する。 物理学者として・政府要人として・複数の女性を愛した男として・被疑者として・ひとりの男から目の敵にされた者として・・・。
序盤からこの展開なので、なかなか引き込めない・・。

それぞれが2~3巡してようやく、各側面が進展していると理解出来、興味が追いつくが、楽しめてるというより、多い台詞を追うのに集中力が削がれ、解析しているという感覚になる。
その多い台詞が一般的な雑談などほぼ皆無で、重要会話が多いのでより、やっかいだ。
(脚本も兼ねてるノーラン監督は、この全ての台詞を書いているので途方もない労力を費やしている・・)

作品中、声を出して笑えるシーンはほぼ皆無で、作品時間の90%位を、緊張感を煽るようなBGMが流れている。 5つの側面はそれぞれ進むが、観てる方に感情に起伏がほぼ動かないまま、今作の山場に入る。

実験シーン・・。 この時間のみ他の側面をストップさせて、その瞬間に集中させ緊張感もクライマックスを迎える。
そう、夢中で画面に食い入て、作品を楽しめてる時間・・。

そして今作中、わずかな無音シーンでの会話は、トルーマン大統領が原爆投下の是非について話すシーン。
我々日本人なら、誰もが固唾をのんでその意向を知ろうとするはず。
(トルーマンは「真珠湾を忘れるな」の言葉を残したタカ派)

その後は再び、側面の再演。 今度は実験までと一変し、被疑者として・とある者から目の敵とされた一面にポイントが向けられる。
と同時に、時間軸に遡って描かれていたシーンが一気に結末に向かって増進する。
この時間帯も作品を楽しめてると感じ得る。
スパイ容疑を掛けられた彼は、果たして忠誠を証明出来るのか・・。

各役者陣=
キリアンは常に緊張感を醸す演技で存在感はあるが、いかんせん喜怒哀楽のうち、哀ぐらいしか感情変化のない役なので、唸るほどの巧さは感じなかった。
ダウニーJrは終盤の役柄人物が本性を現した時の演技が見入って、なるほど助演男優を獲ったのは納得。
(が、私は彼のアカデミー授賞式の態度に、彼の主演作は今後 "劇場鑑賞しない" と決めた。)
デイモンも押しの強うそうな将軍を、ややふてぶてしい貫禄で上手く好演している。
等、役者陣はほぼ、キャスティングが功を奏していて、その人物を違和感なく表現出来ていると感じる。

総合して十二分な力作で、その凝った作風に"一本の作品を観た"という充実感は沸くが、鑑賞中、十分楽しめたか、あるいは何度でも観たくなるかと言えば、まったくそうでなく、感情移入出来るシーンもほぼなかった。
(不理解シーンのおさらいにもう一度は確認したいとは思うが・・)

ノーラン監督は、2014年「インターステラー」までは多くの作品が私的に高評価だったが、「ダンケルク」「テネット」と今作で3連続やや期待外れに・・。

PS
今作ほど、鑑賞中に経過時間が推測出来ない作品は珍しい。
3時間を短くは感じなかったが、重要台詞を追うのに必死で冗長も感じず、実験シーンで2時間位か・・終了してようやく3時間近く経ったのかと・・。
レオン

レオン