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オッペンハイマーのmanamiのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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クリストファーノーラン作品というジャンルの中では、シンプルな構成、分かりやすい展開。伝記映画としては、素晴らしいものになっていると思う。
オッペンハイマーという人物とその業績を扱うからには、どんなものを作り上げても全方向から手放しで絶賛されるはずなどない、賛否両論が大前提なわけで、その枷ありきという点を考えれば、こうするよりほかないだろう。
まるで彼個人の年表のようにひたすらに範囲を限定して描く、天才科学者の人生。常人離れした慧眼と、人間くさく弱くだらしない面、あるいは周囲から与えられる光と闇。愚直なまでの手法に、「退屈」と感じる人がいても無理はないだろうな。
とは言え、おもしろおかしく扱うような研究開発でももちろんないしな。エンタメ要素やドラマ性を期待して観るべきものではないということだろう。
しかも登場人物もなかなかの多さな上、テロップで時系列が明示されたりすることもないため、時代背景などの知識があまり多くない人にはそういう意味でもおそらく難しい。
誰がどの立場で、どこの国がどういう状況なのか。1945年に世界で何が起きたのか、戦争終結後には各国がどう動いていったのか、冷戦とは何なのか。
パンフレットでそういう史実も補完されているので、もし「これから観ます」という人が身近にいたら、それを先に購入して予習してから臨むことをきっと推奨すると思う。「実験は成功するんだろうか」とかを見守るような話でもないしね。
世紀の実験シーンを筆頭に音響が素晴らしい。キャストも、演技の上手い人を集められるだけ集めてみました、というぐらいの布陣。
中でもやはり主演のキリアンマーフィは、これまでのキャリアはこの役のためだったのではと思わされるくらいの名演。地球のようなあの青い瞳が、繊細にこの星の未来を見つめる、彼でなければ創り出せないJ・ロバート・オッペンハイマー。

「我は死なり、世界の破壊者なり」

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