げんげん

オッペンハイマーのげんげんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8
日本人の私がこの感想なのが申し訳ないのですが映画として本当に面白かったです。上映時間3時間ですが体感2時間ぐらいに感じました。途中何度か鳥肌が立ちました。

『原爆を扱うのに広島長崎の描写がない』というのが批判の理由とのことですが、今作はオッペンハイマーの生涯を描いた映画で、学者の彼は原爆が落とされたことはラジオで聞いたぐらいだったそうなので史実を描くのならこうなるだろうな、と思います。原爆の被害者は当初2〜3万を想定していたが実際は22万人以上いたこと、その時死ななくても後で苦しんで死んだ人もいたこと、原爆投下に反対する科学者の署名活動があったこと、水爆の是非が問われていることなど決してアメリカ賛美の映画でもありませんでした。

時間軸の編集が相変わらずのノーランですがこの編集は流石と思います。オッペンハイマー視点のカラーパートとストローズ視点のモノクロパートで時間軸が異なり、その2つの場面が交わる時がありちょっと鳥肌が立ちました。

そしてそして、音楽が本当に素晴らしい。ハンスジマー降板後のノーラン作品をゴランソンという作曲家が見事に引き継いでいます。普通会話劇は無音になることが多いですが今作は会話だけ、説明だけの退屈なシーンでも緊迫感溢れる曲でぐいぐい引っ張ってくれます。まさに音楽の力。アカデミー作曲賞も納得!

ただ全体的に登場人物が多いので関係性は公式で確認しておきましょう。オッペンハイマーの公聴会とストローズの公聴会が何やってるか知っておくと理解しやすいです。両方とも戦後の話です。オッペンハイマーの公聴会は『実はオッペンハイマーはソ連のスパイで技術を漏洩させていたのでは?』という告発から開催されました。ストローズの公聴会は出世を狙うストローズが商務長官に任命されるかの承認を巡り開催されました。

なお、本国アメリカでは2023年7月に公開されました。ノーラン監督作品は日本もほぼ同時公開が通例でしたが今作は原爆というテーマだけに2023年の公開がありませんでした。制作はユニバーサルなので本来は東宝東和が配給するはずなのですが東宝東和は降りてしまったため本作はパラサイトやperfect daysなどのビターズエンドが配給を行いました。配給に至るまでには何度も話し合いを重ねたそうです。今回IMAXスクリーンも用意してもらいビターズエンドには感謝申しあげます。

映画人生でここまでリアルタイムで追ってきた監督、たぶん他にいないと思う。自分は40代なのでヒッチコックやビリー・ワイルダーは世代が違うし、スピルバーグやジョージルーカス、ジェームズキャメロンは物心ついた時はすでにヒットメイカーだった。タランティーノも高校生の時だからちょっと時期がズレてる。メメントを映画館で見て『なんて凄い才能!』と思ったのが大学生の時。そこからハリウッド進出→ヒットメイカーへ→アカデミー賞受賞と常に追ってきたのだった。だからTENETの時にもかいたけど、やっぱりノーラン大好き。愛してる。

2024年29本目
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