このレビューはネタバレを含みます
映画館レイトショーにて(R15+)
2024/03/30
(この映画は話を集中して聞ける人じゃないとついていけなくなると思うので気をつけて。
これまでもノーラン監督の作品はぼんやり眺めてたらついていけないのが特徴の一つだが)
拍手なんてするな!
複雑な締め付けられるような、そんな気持ちで苦しくなったシーンがある。
ここからどう描かれていくのか。
自分の未来のシーンが自分を苦しめる。
昨年海外でノーラン監督の新作が公開され、観たいのに日本では公開されず、モヤモヤした気持ちだったが、今年公開されるということで楽しみにしていた。
公開が決定されてから公開日までまだ時間があったので、原案となる『オッペンハイマー』(カイ・バード&マーティン・J・シャーウィン ハヤカワ文庫)上中下を読んでいたのだが、下のあとのこり少し残したまま映画を観に行った。結果的にはほとんど読んだ部分で、オッペンハイマーやキティの最期は映画では描かれてない。
はっきり言って物理学について書かれている部分は言葉は聞いたことあるのもあるけどわからない…でさらっと読んでいく。
ロバートが読んでいた小説などが所々に出てきたので一応メモったりしながら。また、読もうかなと思って。
ストーリーとしてロバートがどのような軌跡を辿ったのかがわかり、興味深かったが、共産主義についてや、スパイ容疑についてが細かく書かれていて、このしつこさはいつまで続くんだろうかという感じ。
さて、映画の感想。
科学者は自分が理論上で出したものが正しいか確かめたくなる。
そしてこれは政府からの国からの大きな仕事。
ナチスより先に作らなければならないという使命。時間との戦いで、ドイツに先を越されれば戦争に負けることになる。
さらに、ソ連にも先を越されるとまずいことになる。
こうやって、作らなければならない理由が出来上がってしまう。
原爆が作られたのは、必然だったように思える。
人は賢くてバカなところがあるから。
世界が、それを作ることは、『瓶の中のさそり』だと一致していたらこんなふうにならない。
自己中心的な考えの者が指揮者であれば、バカなことをするしかなくなる。
それは小さな世界でもたくさん起こっていること。
拍手喝采。日本人の私から見ると、やはり不快感はあった。胸が締め付けられる。
勝てば喜ぶんだな。広島の大多数の民間人がひどい死に方をしたのに。さらには長崎にまで。長崎は完全に実験台だ。
原案の本には、日本は負けであるし、降伏しようとしているという情報もあったと書かれている。そんな中落としたのだ。
完全に日本を叩きのめすこと、それが終戦に繋がる。ソ連に見せつける。
アメリカは強いところを見せつける。
ストローズの嫉妬から邪魔者であるオッペンハイマーを排除しようとたくらむ。
根に持っていたストローズ。オッペンハイマーのことが憎くて仕方なかったんだろう。
オッペンハイマーは共産党に入っていたのか、それでソ連のスパイだったのだと決めつけ、水爆に反対して邪魔なのだと。
このやりとりがずっと続く。
原案の本でも中盤からほぼこんな感じ。
映画でよくまとめてあると思った。
結局、ストローズは完全には思い通りにはならなかった。
オッペンハイマーとアインシュタインの会話。
オッペンハイマーの離れない未来のシーン。
現実になる時が来なければいい。
ノーラン監督は、いつも問いかけてきている。
オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーは薄いブルーの目が印象的でピッタリ、演技も素晴らしい。
意外と身長が低いんだよね。大きな存在に見えるんだけど。オッペンハイマーは身長が高い方でスラリと細身の体型だった。
ノーラン監督の特徴とも言えるその時の心情に訴える音楽。
音の迫力と静寂の波。
揺れる、今にも爆発しそうな、原爆を体験するような視覚的効果。
日本人からするととても複雑な気持ちにはなるかもしれない。
だけど、これからをどう見ていくのか?私たちに問いかけられてるんだと思うなぁ。