方眼

オッペンハイマーの方眼のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
2023年”Oppenheimer”。量子力学では、物質には粒子性と波動性の両方があるとされ、両性質は同時には観察されない。人間に火を与えたプロメテウスとして、オッペンハイマーを描くにあたり、監督は量子力学の概念を映画手法に援用する。粒子性、白黒はっきりさせる視点としてのモノクロ、ストローズの野心、その視点からの人物像。波動性、揺れ動き色彩豊かな自然界、女性と共産主義とオッペンハイマーの関係も固定されず常に揺らぎがある主観。茶番の聴聞会で、キティは幻視を見るが、これも観察者の主観。時間を操る監督、モノクロ・カラーそれぞれで時間は飛び入れ替わる。その時々で自分に正直な答えを出してきた人生を、ある時点からの解釈でまるごと断罪して良いのか。また、技術を使う側、創り手の視点ではこんな見方も可能。映画はモノクロからカラーへと技術が進歩。ただ新しい技術を何でも使うのが良いのか。カラーの世界でものづくりする悪魔よりも、モノクロで吠えている小人物のほうが人類にとって害が無いのでは。マンハッタン計画は、SFファンタジーのようにプロジェクトが進行、盛り上がっていく快感と背徳。アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルク、フェルミ、ファインマン、おまけにゲーデルまで20世紀物理界のオールスター登場。演じる俳優たちも登場時は遠景だったり後ろ姿だったりだが、観察されることでその像が確定する。オールドマンは英首相と米大統領の両方やってスゴい。実験成功後の演説会、喜び抱き合う人々や多分飲みすぎて吐いてる人も、被害者や死病人に見える演出。監督大好き回転機構は、裏表使う黒板、ロスアラモスのゲート、円卓、コンパス。芸風、手法は過去作そのままに、架空の物語世界でなく、実在の人物を堂々と描いた本作はノーランの集大成。ほぼ常に鳴ってる音楽もなめらかに変化。編集がすごく良い。
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