原爆の父の栄光と疑惑に追い詰められた半生。日本への原爆投下シーンが無い点は事前情報通り。ひとりの男の栄枯盛衰を描いた作品として3時間集中して鑑賞した。ノーラン最高傑作とは思わないけど凄く良かった。登場人物の多さや交錯する時系列もあり、予習必須かも。
本作は原爆実験のシーンがひとつのクライマックス。爆風と舞い上がる炎、歓喜する人たち、まるでトップガンでミッションを達成したトムクルーズのように歓迎されるオッペンハイマー。日本への原爆投下後のオッペンハイマーの講演に湧き上がる観衆、拍手、、満ち満ちた喜びはグロテスクの裏返し。
もともと日本ではなくドイツへの原爆投下が予定されていた点や日本の原爆投下候補地として「京都は文化的価値があるから」と外される場面など、淡々と決められるプロセスにヒヤッとした。一方で満場一致で日本に落とすぜウェーイみたいなノリはなく、反対派も多数いた点に救いを感じた。
多くの優秀な科学者が集結して大量の予算を投じて物理学、量子力学の集大成として生まれた大量殺戮兵器。戦争を終わらせ、新しい恐怖を生んだ事実に色々と考えさせられた。「もしあの時代に日本の方に原爆があったなら使わなかったと思うか？」とも考えてしまう。日本で公開されて良かった。
