涼

オッペンハイマーの涼のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.4
 なぜ今オッペンハイマーなのか?
 最近彼の名誉回復がなされたことがきっかけなのか?
 もう過去の人だろう。

 などと想念が去来する。

 原爆完成のためにあんなに科学者を集め、実験に成功した際にはあれほど皆が喜んだとは知らなかった。あれで当然人が死ぬとは皆わかっていたはずだが。科学者にそういう想像力は無いのか?

 10何万の日本人が亡くなったわけで、原爆完成に喜んでいる姿を見ることは正直気分が悪い。レビューで褒めてる人も多いが、俺と同じように感じた人も多いのではないか?
 例えば、過去にフランスに原爆が落とされたとして、フランス人が本作を見たら物凄い反対運動が起こるだろう。
 商業映画で、原爆を作って喜ぶシーンを入れて日本も含めて全世界で公開して儲けているわけだ。
 日本人は舐められてるのだと思う。もっと怒るべきだろう。いや、アジア人全般がそうだ。
 アカデミー賞授賞式で、アジア人プレゼンターが侮辱を受けたと取られてもしかたのない行為をされても、相手に届く形で抗議してないだろう。それがいけない。
 アジア人差別の意識がクリストファー・ノーランにもあったから、これを公開しても日本人なら何も言ってこないと踏んだから企画したのだろう。
 地味な本作がヒットしたのは、欧米人のアジア人への差別感情をくすぐったことが最大の要因なのではないか?

 もう一つ、科学の軍事転用という大きい問題がある。オッペンハイマーは、ナチスに先を越されてはならないと、最初から原爆を作る意思があったわけだが、一般の科学者にはそこまで積極的ではないが自分の研究が軍事に使われてもかまわないと思っているケースは多いであろう。
 このように、その成果が民生目的と軍事目的のどちらにも使える研究のことをデュアルアルユース研究と言う。
 代表的なものに、①火薬②核③AIがある。
 オッペンハイマーが作った核を落とされた日本であるが、その日本の科学者がデュアルユース研究をしないかと言えばそういうことはない。
 2022年7月、日本学術会議はデュアルユース研究を事実上容認する見解を公表しているのである。

 しかし、すでに核の段階で世界滅亡の危機が迫ってきているのであり、科学の軍事転用の歯止めをどこかで掛けないと、地球の滅亡はほぼ確定的になってしまうのではないか?
 そういうことを考える上では、本作は意味があるのかも知れない。

 これで、クリストファー・ノーラン監督作品は10本見たことになる。
 順位を付けると、以下の通りである。

1 インターステラー
2 インセプション
3 ダークナイト
4 バットマン ビギンズ
5 ダークナイト ライジング
6 ダンケルク
7 TENET
8 メメント
9 オッペンハイマー
10 プレステージ

 
涼