ひで

オッペンハイマーのひでのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.6
作中の言葉を使って表現するのならば、神が作り出した映画と言っても過言ではない。

クリストファー・ノーランといえば、複雑な法則や設定、時系列を操ることで、強烈な世界観を生み出している。
本作は伝記映画のため、その要素はないものと思っていたが、良い意味で予想は裏切られた。
カラーとモノクロの描き分けや、過去と現在を行き来することで、らしい演出を見せてくれた。

オッペンハイマーを人間くさく描くことによって、より苦悩が身近に感じられる。
また「シーツをしまえ」というこのセリフ、脚本家として見事という他ない。

前半部のピークとしては、原爆実験のシーンだろう。人と金を大量に動員し、理論の実証のために心血注いで取り組んだ実験が成功したわけで、観客も興奮する。
何よりあの映像。世界を壊すかもしれない凶悪な兵器にも関わらず、あまりに綺麗に見えてしまう。一瞬の静寂の後に、爆風と轟音が響くあの迫力は忘れられない。

後半は一転して、科学の世界から離れ、人間同士の争いに巻き込まれる。
原爆を落とした罪悪感に苛まれながら、周囲の人間に陥れられ、絶望の縁に立たされる。
そんな中でも、誠実で人間くさい彼を信じ続けるいる人はいるわけで、救いのある物語に落ち着く。

冒頭のアインシュタインとの会話のシーンが肝となるだろうと思ったら、ドンピシャり。
私ではなく、我々と巻き込んだことで、アインシュタインはあんな態度を取っていたんだなと。

間違いなく今年のマイベスト作品になると思う。
クリストファー・ノーランと、キャストの圧巻の演出に脱帽。
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