まうす

オッペンハイマーのまうすのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

観てよかった。
良くも悪くも、(オッペンハイマー1人のことではなく)これが原爆のアメリカ的な見方なんだなというのが分かる。
ノーランだけどかなり分かりやすい。強いて言うなら登場人物が多すぎて、聴聞会のシーンで誰が誰だか理解が怪しくなる。(が、少なくともストローズがはめようとしてたことは分かる)

どうでもいいが、ストローズが最初オッペンハイマーに「シュトラウス」と呼ばれたの、へえ!となった。
RDJ似合いますね〜アカデミー賞のあの態度だけはどうなのよと思うけど、まあこういう役か〜とさえなったよね(そういう問題じゃない)
ストローズの気持ちはわからなくもないけど、あまりの被害妄想の強さに引いてしまう。名誉欲って怖いね。

オッペンハイマーの奥さんのキティ、めちゃくちゃ強かった。この映画の登場人物の中でいちばん強い。映画化されるような天才たちの妻、どうして皆こうも強いのだろうか。
不倫相手のジーンが自殺(なのか他殺なのかはっきりしなかったが)した知らせを受けて、ショックと自責でボロボロなオッペンハイマーを、不倫されていたキティが「罪を犯しているのに!しっかりしなさい!」ってやってるの、覚悟が決まりすぎているし、結婚って強い、と思った。

オッペンハイマーの印象は割と右肩上がり。マット・デイモンに言われてたように、当たり前のこととして才能はあるが、酷い女癖で傲慢で人として終わってるんだよね。最初。
「ドイツは降伏したけど日本が残っている!」発言もまあ酷い。死体蹴りなのよ。けど、大金をかけて、何年も研究して、たくさんの人を巻き込んで。そりゃ今更引き返せないよね、という気持ちもある。
ロスアラモスでのリーダー然はかっこよくさえ見えた。
で、開発成功後の会議では本当に日本に落とすのか迷いが生じている。
アメリカ国民が原爆投下の成功に湧く中、色んな幻覚に苦しめられているのを見ると、結果的に最悪であることに変わりはないんだけど、同情さえする。
発明とそれをどう使うかは別の話、というのはその通りだと思うから。
トルーマン大統領との対談では「長崎も」と付け加えるし、罪悪感を口にする。(一方のトルーマンと言えば、恨まれるのは開発者じゃなく指示した自分だと言った上で、オッペンハイマーを弱虫扱いする。)

アインシュタインとの会話、「一通り叩かれて苦しみ、歳をとったら名誉を与えられるが、それは君のためではなく彼らのためのものである」ってやつあまりにもしんどかったなあ。
ナチスにその威力を知らせれば誰も使わない、は多分嘘だと思うな。そんな都合の良い事起こらないと思う。

後爆発実験のシーンずごく良かった。割と呑気に構える人々。爆発の瞬間の無音。しばらく経ってからの轟音。
爆発の瞬間、なんで音を消したんだろうと思ったんだ。そこまでが大分張り詰めた音楽で、構えに構えてたし。光と音の速度差がそれだけあるということだったのね、と後に爆音が鳴りはじめて漸く思った。
「ニアゼロ」の世界を破壊する可能性。
まうす

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