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オッペンハイマーのfkyのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
アインシュタイン「神はサイコロを振らない」。

3時間の伝記映画にふさわしい疲労感と、ノーラン映画特有の「あっここで終わり?」まで走り抜ける爽快感。3年に一回くらい1800円(クーポン使って1200円)で楽しめるこの世界がどれだけ贅沢か、この瞬間だけ何かに感謝したくなる。

ロスアラモスや大学で議論するパートは、他の科学映画よりもかなりしっかり「論理的」である印象を受けた。誰かの主張に対する検証が即座に入り、天才の閃き的なシーンは無い。あくまでそれぞれの頭からのアウトプットが共有されるシーンを見せられる。

モノクロパートは普通に「おしゃれな絵だな」と思った。静的なシーンとして機能していて安心感を与える(話は最も複雑なパートだが)。ウェスアンダーソンの近作みたいで良かった。

シーンとして「ここがすごい」みたいなものは少なかったし、「TENET」で大興奮したような劇的なドンデン返しも無かった。ただ、裏を返せばアクションが無くても編集の力と「音」があればスペクタクル映画が出来ることを実証している。流れ続けるストリングスに身を委ね、時にハッとしながら見終えた感覚はとても良い。

(追記)
原爆の危険さを日本人は「知っている」みたいな感覚があるが、日本での事例も一つの結果に過ぎず、作った本人達も確率論でしか語れないという当たり前の事実に気付かされる。それを人間で実証したという事実が何より恐ろしい。
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