このレビューはネタバレを含みます
ノーラン最新作。
相変わらず映像や雰囲気はリッチ。オッペンハイマーの人生を語るにふさわしいクオリティでした。
ただ、話がむずいな〜。
①オッペンハイマーの人生、②安全保障?のヤラセ聴聞会、③ストローズの閣僚承認会?の3つの時系列が同時に進行し、かなりややこしい。
しかも、②と③は初見だと意味がいまいちよく分からないので、終盤の対立構造まで、審問の目的も掴みづらかったです。
また、登場人物の多さ!
科学者がたくさん出てきて、各々の思惑もあるのですが、顔やキャラクターを覚えるのに苦労します。
加えて、政治色も中々強い。アメリカにおける赤狩りの歴史も分かっていないので、この辺りの雰囲気もあまり理解できていません。
以上のように、完全に楽しめたかと聞かれれば、正直微妙です。ただ、それでもやはり、本作は力を持った作品だと思っています。
その理由は、原爆投下後のスピーチのシーン。あそこの圧巻さ。
ドルビーシネマの音響で鑑賞したおかげでもありますが、あの足踏みのとてつもない圧迫感、そして饗宴のような盛り上がり。ふだんはあまり意識してませんが、日本人としては、あのシーン、けっこう気持ち悪くて、きつかった。
でも、その気色悪さは絶対に意図されたものだし、反核のメッセージも込められていると思います。まさに、劇薬のような。
また、原爆という「圧倒的暴力」の存在について、改めて考えられたのも良かったです。
当初はナチス、ファシズムへの対抗手段としてある程度の正当性を持っているように思えましたが、敗戦濃厚の日本に、降伏を促すために使うってのは、やっぱり無理あるよなと思いました。
勿論、自国民をいち早く帰国させる、という意義はあったでしょうが…。
でも、とんでもない金をかけて作った兵器を使わない手はないというか、いつのまにか手段と目的が入れ替わっている感も拭えませんでした。
そんなもののために、悲劇が起こったと思うと、やっぱりやるせない。
あとは、なんと言っても、ラストシーン。
爆発の連鎖は起きなかったものの、人類の破滅へのカウントダウンは始まった。ある意味、連鎖は起きている。オッペンハイマーは世界の破壊者で、破滅を導くプロメテウスである。痺れます。
平穏な日々を送れていますが、僕らの世界は、今も薄氷の上を渡るようなバランスなのだなと。
正直に言えば、「インセプション」や「インターステラー」の方が好き!
でも、やっぱりノーランって凄いや!