GAI

オッペンハイマーのGAIのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3

被爆した側からは到底受け入れ難い表現(“成功”を喜ぶシーン、投下地点を選ぶシーンなど)はもちろんあったし、被爆のメタファーだと分かっていても原爆はそんな綺麗なもんじゃないと思う箇所(光線を浴びて体にピロピロしたものがはりつく、吐く、泣き崩れるなど)は多々あったため、被爆の視点が足りないと言われるのはその通りだが、総じて、核兵器がどれほど恐ろしいものであるか、世界を新時代に突入させるほどの脅威を持った怪物なのかというのは分かる映画だった。
アメリカで社会現象になるほどの映画と考えたら、思ったよりも核にNOを突きつける映画だったという印象。それを直接主張しない描写でも、間違いなく一石を投じる映画だった。原爆を正当化する民衆がどれだけ狂気じみているか引き立っていた。アメリカ人たちはどんな気持ちでこの映画を見たのだろうか?

愛する人1人亡くなってうちのめされているオッペンハイマーだったが、原爆を使ったらそのような愛されるべき存在がどれだけ亡くなって被害を被るかなんて考えたら怖すぎて、心を保つためにも自分を正当化するしかなかっただろう。

元靴屋?のあの悪役を通して人間の心は核兵器のように底知れぬ穴だなと思ったが、一緒に映画を見た仲間が「オッペンハイマーの描写を美化させすぎないという意味で、必要な役だった」というようなことを話していてそれも確かにそうだと思った。

3時間を感じさせない、かなり作り込まれた映画だった。

“Now I am become Death, the destroyer of worlds”
GAI

GAI