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オッペンハイマーのno6clubのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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メメントも正直よく分からなかったしインセプションも途中リタイアだったので映画館でノーラン映画見られるかしらと不安だったけど題材が題材なだけに自分の中ではあっという間だった。京極夏彦の『鵼の碑』読んでたときからずっと観たいなと思ってたのでようやく叶って嬉。

登場人物多いしそれぞれの立場や相関図とかも歴史に明るくないのでめちゃくちゃ難しかったんだけど、なるべく私はオッペンハイマーの良心の呵責とか葛藤とかそっち方面メインでみてたので楽しめた。
「物理学300年の集大成が、大量殺戮兵器なのか」って言って泣いてた人のとこでもう心がグウてなった。コナンが初期に灰原に「人間を殺す毒薬を作った人間をどう理解しろってんだ!」て怒り爆発してたこと、ゴールデンカムイの有坂閣下が「戦争は儲かるが、私の作った兵器でたくさん人が死ぬ。つくづく呪われた仕事だ」て言ってたこと思い出した。

京極夏彦の『塗仏の宴』で敦ちゃんが「(原発について)科学の進歩は暮らしを充実させ生活を豊かにしてくれるものだけど、その原子力とやらで数年前に何十万人もの命が奪われた事実はどうなる」みたいなこと言ってて…科学者や物理学者って、今まで知らなかったことが分かる嬉しさとか、常識だと考えられてきたことが実は違っていた衝撃とかに突き動かされてそれに夢中になって研究し続けるみたいな、それが本懐なのかなと思うんだけど、それを突き詰めたら人を殺すものになってたっていうのはめちゃくちゃ悲しいし今までの人生否定するレベルだろうなと思う。

マジで歴史分かんないんだけど、この映画みる限り、アメリカが日本に原爆を落としたのって、アメリカがロシアよりも絶対優位に立ちたかったからってことなん?この戦争をはやく終わらせて、ロシアとの冷戦で決着つけたかったってことなん?ほっといてもどうせすぐ滅びるような国にわざわざあんな爆弾落として叩き潰すことないじゃん…死ぬのは民間人って分かっててやってるしな。「京都はやめよう。あそこはいい街だ。文化的財産で溢れている。」とか言っててえーそんな理性あるんだ?落とすこと自体やめれば!?になった。

爆破実験のカウントダウンのシーン、ガチで怖すぎて逃げ出したくなった。耳塞いじゃったもん。爆破寸前、生で見ようとゴーグル外して小屋飛び出した奴、おおこれが開発者の性かね…になった。もっと歴史に詳しくなってこの映画もう一回みたいな。

日本の監督が「いつかこのオッペンハイマーのアンサー映画となるものを作りたい」ってアカデミー賞のスピーチで言ってたけど、本当にやるなら舞台は現代の日本で、題材は「日本人は原子力発電とどう向き合うか」にしてほしいと思う。戦争時が舞台の作品はもうすでにたくさんあるし、悲惨な体験記もたくさん貴重な資料が既にあるので。世界で唯一原爆を落とされた国が、本来忌み嫌うべきものとどう向き合っていくのかみたいなものが私は観たいな。今あるものでオッペンハイマーのアンサー作品となるものはやっぱり京極夏彦の『鵼の碑』だと思う。オッペンハイマー観た人ぜひ読んでみてください。
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