ジャン黒糖

オペレーション・フォーチュンのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

3.3
飛行機で日本未公開のガイ・リッチー監督作『The Ministry of Ungentlemanly Warfare』を観たことをきっかけに、そういえば見逃していた同監督作。

今回、初見では「やっぱ苦手だわガイ・リッチー、、」と彼の監督作特有の、群像劇なのにキャラ説明がガチャガチャした"手癖"によって全く飲み込めなかった、というか手癖のせいで面白みが頭に入って来ず、感想を書くにあたってもう一回観たら「なるほどたしかにここは笑えたかもな!」となり、2度観たことで気付いた仮説だけど…、ガイ・リッチーあなた…初見の人にどう観られるか、考えて映画作ってないな?!!と思ってしまった…!!笑

【物語】
ウクライナの厳重警備の研究施設で"ハンドル"と呼ばれる何かが盗まれ、闇取引ではたちまち高値になり100億ドルの値が付けられた。
闇取引の黒幕と、ブツの正体そのものを調査するよう依頼を受けたMI6のネイサンは、御用達のエージェント、オーソン・フォーチュンをリーダーに、美人で天才ハッカーのサラ、新米スナイパーのJJらを招集。

果たして彼らは、"ハンドル"がマーケットに流出する前に闇取引の黒幕を阻止することができるのか…。

【感想】
まず、音楽使いが初見で思った、良かったところだった。
特に最初の2分で、本作のマクガフィンとなる通称"ハンドル"がウクライナで盗まれるまでの場面を、MI6のネイサンが廊下を歩く場面での革靴の足音がリズムとなって始まる音楽と重ねてシーンを切り替えながら共に描く演出は無駄がなく、格好良くのっけからテンションが上がった!
こういう無駄のない演出はたしかにガイ・リッチーいいよ!!

また、前半の見せ場である豪華客船のチャリティイベントに乗り込む場面で、ネイサンが主人公フォーチュンと同じく集めた仲間の1人、サラが敵と遭遇するとき、敵の「そうだったそうだった」と思わずする指パッチンを合図に、その指パッチンの音がそのあとのスリリングな劇伴のリズムとなっていく展開も、「なるほどオシャレじゃん、スマートな演出いいじゃんガイ・リッチー」と思わず姿勢を正すように座り直して見始める笑


ジェイソン・ステイサムが最強なのはもう説明不要として、チームのみんな良かったな。
JJはあまり見せ場こそなかったけどネイサンからの前評判通り「オールマイティ」なそつない仕事ぶりが良かった(悪く言えば印象の残らないんだけど…)し、ハッカーであり頭の切れる策士であり潜入も出来るサラはそれこそステイサム御大を食う勢いで活躍する。
自分がいかに頭切れるかを示す仕草がクセあって良き!

そしてネイサン(を演じるは観たことある顔だと思えば『SAW』1作目でゴードン医師役だったケイリー・エズウィル!!この人、あの役とか関係無しに色白な顔だったのね!笑)はステイサム御大に手を焼きつつも目的のためなら淡々とコーディネートしていく手腕がスマート!
近年すっかり悪役が板についてきたヒュー・グラントは本作でも嬉々として闇業界の大物を演じている。
そしてジョシュ・ハートネット!数年見ない期間があったところ、同じくガイ・リッチー監督作で自分的には好きな方の作品『キャッシュトラック』でまさかの抜擢に驚いたけど、それが再ブレイクへのホップだとしたら本作はステップ!
(※そしてジャンプは現在公開中の主演作にしてM・ナイト・シャマラン監督最新作『トラップ』なのかな、と推察!)
ダニー・フランチェスコ役を存分楽しんで演じているのが伝わり、いいよー!彼の最近の活躍カムバックぶりいいよー!!



ただ、初見で思わずテンション上がったのはそこぐらいで…。
それ以外は個人的にはやはり彼の手癖というべきガチャガチャした細かい演出が飲み込みづらく、結果観終わって凡庸な印象だけが残ってしまった。

たとえば"ハンドル"の奪還を命じるMI6の上官とそれを受けるネイサンの冒頭場面は、細かいカット割りのなかで、別チームに所属するマイクとはウマが合わないこと、今回ネイサンが任務で組成するチームのリーダーに主人公オーソン・フォーチュンを推そうとするも上官は彼をあまりよく思っていないこと、などがセリフだけで説明されるので、シンプルにキャラが頭に入って来ない。
登場して初めて「あ、彼が予算を食い潰すオーソン・フォーチュンか」「あ、こいつがウマが合わないマイクか」と納得するけど、手前で聞いた情報通りの行動を取ってくるので、「なんか二度手間だなぁ」と感じてしまう。
そして頭が追い付こうとしていたらもう作戦実行に移ったりして、なんだか忙しない。。

また、二度手間といえば中盤の、"ハンドル"に関わりのある武器商人グレッグの売人たちが住む屋敷にフォーチュンが潜入する場面。
あそこも、潜入が終わったあとに仲間たちから「あのときどうだった」と聞かれて、わざわざ2回に分けて回送として描くのも、それを面白いと捉えるより先に、なんかちょっと回りくどい語り口だなぁ、と感じてしまいこの辺りで「やっぱガイ・リッチー監督の"手癖"が自分は苦手かも…」と思ってしまった。
(というか、自分が彼の手癖に敏感な節は絶対ある笑)


そこからはトルコの場面はなんとなく派手な見せ場もあってそれなりに楽しめたけど、ラストの方はちょっと肩透かし喰らった感あって、あまり間空けずに2回見直したにも関わらず正直ちょっと忘れてしまっていたほど。

ネイサンがコーディネートし、フォーチュンが率いるチームと、彼らに任務のため利用されるハリウッドスターのダニー・フランチェスコと、ネイサンを出し抜こうとするマイクのチームと、"ハンドル"のヒントを握る武器商人のグレッグと、グレッグとビジネスで関わりのある富豪たちの、それぞれの動向、見せ場が、観る観客目線としてゴチャゴチャややこしく、スッと頭に入って来ず、その割にセリフで説明したりするからストレートに面白さが入って来ないんよ!



ただ!!
大方の話の流れや登場するキャラが予め頭に入った状態で観る2度目は、キャラ同士のしょうもない会話劇とかはスッと入って来やすくなり、楽しめた。

なるほど全然目立ってなかったチームの1人、JJは実は浪費家なフォーチュンに比べて倹約で、飛行機のなかでフォーチュンに注いで貰ったワインのボトルを実は袋に入れて持ち帰ってる所の面白み(初見時はここのクダリわりと流して観てしまっていた)とか、グレッグとダニーに芽生えるミッションを超えた友情の非現実的な滑稽さ(初見時はここ理解が出来なかった笑)とか、オチを知ってる分の許せる笑いが増え、観ていてそれなりに楽しめた。

でもそれって、裏を返せば、1回しか本編を観ない人のことはあまり考えてないよね、、、というのは2度目観ながら思ったこと。笑

うーん、、なのでやっぱ全体的には手癖がやっぱり肌に合わない、、、
でもキャラは良かったよ!そんな一本でした!
ジャン黒糖

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