ほーこんそん

ノースマン 導かれし復讐者のほーこんそんのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

 やばい、あまりにも刺さりすぎました。ヴァイキングオタクとして文句なしです。無慈悲な殺戮と略奪、大海を股にかける旅路、確かな家族愛と、その裏返しでもある復讐の連鎖。ヴァイキングの多面性がふんだんに盛り込まれ、なおかつ巧みに統合されていたように思います。あと、ドラマ版ヴァイキングでフロキを演じていたグスタフ・スカルスガルドの兄であるアレクサンダー・スカルスガルドがかっこいい。兄弟共にヴァイキングというのもなかなか珍しいのでは。

 悲しき王子アムレートを復讐へと駆り立てた両親への敬慕と愛情は、他ならぬ母によって打ち砕かれてしまいました。それでもアムレートを突き動かすのは流血を求めるノルドの民の性なのでしょうか。それとも、もはや見ることの叶わない2人の子供たちのためなのでしょうか。

 復讐は、シェイクスピアのみならず中世北欧の「サガ(文学)」でも定番のテーマ。ヴァイキングは復讐を「美徳」とみなしていましたが、サガにおける復讐譚は多くが悲劇的な結末を迎えています。「復讐は何も生まない」という言葉がありますが、仇討ちの虚しさはヴァイキング自身が誰よりも理解していたのかもしれません。アムレートとフィヨルニルも、復讐で大切な人が帰ってくるわけではないことをわかっていたでしょう。それでも戦うのをやめられないのが、ヴァイキングの性なのかもしれません。

 余談ですが、シェイクスピア作品には意外とヴァイキングが出てきます。アムレートはいうまでもなくハムレットのことですし、元ネタはデンマークの歴史書です。マクベスに登場するシーワード伯も、元ネタはデンマークのクヌート大王に従ったヴァイキングの1人です。シェイクスピア本人はつゆほども意識してはいないでしょうが、ヴァイキングの視点からシェイクスピア作品を読み解くのも意外と面白いかもしれません。