滝井椎野

シラノの滝井椎野のレビュー・感想・評価

シラノ(2021年製作の映画)
3.8
とても綺麗な作品で、場面毎の白色の使い方が印象的だった。特に貴族の白粉、街並みの壁、戦場の雪、最後の修道女たちのベールが、同じ白でもそれぞれが全く異なる意味と印象を持っており、対比が面白かった。
シラノのコンプレックスと愛が溢れる描写が胸を締め付け、故に紡ぎ出される言葉がスッと入ってくる。これがシラノの言葉だからという訳ではないのが、最後の突撃前のシーンで分かるのだが、想いの込められた言葉はどれも感情を揺さぶるもので、その対象が誰であれ愛の深さが情緒を揺さぶる。それを相手に伝える手紙というものは、単なる言葉を伝える為の道具ではなく、人の想いを形として残せる素晴らしいものなのだと改めて気づけた。
古典でありながら、現代でもなお通用する名作だと思った。
滝井椎野

滝井椎野