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イニシェリン島の精霊のmomomのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

普通の街に住んでる人には感情移入が難しいかもしれない。私も、強いて言うなら妹くらいにしか出来なかった。
退屈な話ばかりする人の相手より自分の夢への時間を優先したい気持ちも、突然態度が変わった友人に対して怒りと疑問が湧くのもわかる。でも次第にそれが異常なほどになっていき、同じ気持ちにはなれなかった。
そして、何故異常なほどまでになっていくのかもわからない。

「絶望感がある」「でも何もしない」これに全てが詰まっている気がした。

ロバや犬や、他愛のない会話を楽しみながらも、絶望感がうっすら心の底にみんなあった。
同じ国にいる仲間のはずなのに、思想の違いで内戦が起きる。2人の喧嘩の異常性は戦争と同じだ。
2人とも本当は優しくて、絶縁した友が警官に殴られれば助け、見下していても傷だらけの話し相手を家に泊めるのに。
自分が正しいと思い、悪循環にいる。幼い頃から慣れ親しんだ閉塞感のある環境でも、すぐ近くで内戦が起きていても、「悪くない」と思ってしまう。
ニュースが入らないあの土地で、妹は本を読み外の世界を知っていて、考える人だった。自殺寸前まで追い込まれ、自分のために外に出る決断をした。
視野は広げる方が良い。自分のためになり、周りのためになり、選択肢が増えるから。

「田舎のこんなところがいやだ」と、ずっと閉塞感など愚痴垂れながらそこに住むことをやめない。
都会でも文句を言いながら原因を取り除かない人はいるが、何故その土地を出ないのか?今でも疑問に思う。

でも「悪くない」と言い、動かない。良いところを見つけて言ってるわけではない。
映画のメッセージはアイルランドへのものだと思う。でも私は、村社会限定の話ではなく、アイルランドだけの話でもなく、増税に頭を悩ませながら日本にい続ける私もそうだなと感じた。

悲しくてもどかしい、素晴らしい作品でした。
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