じゃがいも

イニシェリン島の精霊のじゃがいものレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.5
アカデミー賞において多くの部門にノミネート。公開がとても楽しみだった作品。

前半部分はブラックコメディ要素が強く、終始クスッと笑える雰囲気。純朴なパードリックとその(元)親友コルム、そして二人を取り巻く島の人々の会話劇に夢中になった。閉鎖的な場所であるが故、何かが起こると次のカットでは島の誰もが知っている様子が滑稽。コルムとの会話でショックを受けるパードリックを、周りのみんなが必死でフォローするところはかなり笑える。
後半は一瞬たりとも気を抜くことができないような一触即発な展開が続き、かなりしんどい。
二人の喧嘩が、海を向こう側で起こっている内戦に直接的に例えられているのが興味深い。小さい喧嘩も国を挙げた大戦争も、こういう風にエスカレートしていき後に引けないところまで行ってしまうのだなと思った。

オスカーの演技部門で主要キャストの4人がノミネートされているのは、贔屓目なしに納得。主演のコリンファレルの、寂しさや怒り、戸惑いなどの様々な感情が入り混じった表情は絶妙で、後半は見ているだけで胸が締め付けられた。賢くて気が強い妹を演じたケリーコンドン、そして風変りだけど正直なドミニクを演じたバリーコーガンの存在感は抜群だった。

理解しがたい行動を取る他人への戸惑いや接し方、各々が抱えるコンプレックス、悪意...。こういう人間のリアルを描かせたらマーティンマクドナー監督の右に出る者はいないと思う。
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