クロ

イニシェリン島の精霊のクロのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
予告編を見た時はあまりそそられなかったのだけど、おじさん2人の仲違いからこれほどの作品が作れるとは。
見終わっても延々と考え続けてしまう。


最初はパードリックに同情した。が、コルムの気持ちもよく分かる。歳を取ると特に、「無理に付き合わなくても良いかな」という気持ちになりがち。

でもそこまで拒絶はしないかなーと思っていたが、あまりのパードリックの愚鈍さとしつこさに、段々コルムに同情し始めてしまった。これ、多分「突然」じゃないよ。ずっとコルムはイラついて態度に出してたけど、パードリックが気付かなかったんだよ。まるで妻から「突然」離婚を突きつけられた中年男性だ。

そして「起きて仕事して、パブで友達と飲む」以外にやる事が何も無いど田舎の閉塞感。特にパードリックには、本当に他に何も無い。「じゃあ他の友人と過ごす」「他の趣味を持つ」などの選択肢が全く無い。

コルムの作曲した曲が誰かの「優しさ」より長く後世に残るのかは疑問だし、コルムの態度は傲慢だ。でも「話したくない人とは話さない」権利もあるような?


ただ、シボーンの言う通り「この島に退屈じゃない人なんていない」。コルムもパードリックもどっちもどっちなのだ。

そしてこの2人の諍いがアイルランド内戦に絡めて描かれるのは、監督なりの(内戦やその後のアイルランドへの)批判でもあるのだろうか。

『スリー・ビルボード』は何となく希望がある終わり方だったけど、この映画は泥沼の内戦そのもの。でもヒントがあるとすれば、やはり「優しさ」なのだろう。

シボーン役のケリー・コンドン、演技も良いし素敵だなぁと思ったら、アベンジャーズシリーズのフライデーの声の人!
バリー・コーガンもとても良かった。
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