みずきち

イニシェリン島の精霊のみずきちのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原題は「バンシーオブイニシェリン」。バンシーは死が人の近くに現れて叫ぶ、アイルランドの聖霊や妖精というより死神。観ているときは、島に蔓延る閉鎖的感情が精霊の正体かなと考えていたが、原題をみて、あの魔女みたいな老婆が化身だったのかなと納得。結局「日曜に2人死ぬ」という予言は完全には的中しなかったが、喧嘩はあいこにならず続いていくようなので、近いうちにどちらかに、または両方に死が訪れることになりそう。

全体的に客観的で鬱屈とした雰囲気の映画。おじさん同士が喧嘩しちゃったぴえんな話が続いてるだけなのだが、その原因はわかることはなく、解決もしない。とにかく平坦で一定で、ジメジメしていて、一定距離を保ちたくなるような雰囲気。
指を切り落とす描写も放火描写も、人知れず死んだバリーコーガンの描写ですら、退屈な島の島民と同じく自分の心も死んだかのように、スン…と特に共感もなく冷静に鑑賞することになる。妹のシボーンと同じように、この環境から距離を置きたい、という気持ちを観客に共有できる絶妙な魔力を持った素晴らしい映画。
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