Yone

BLUE GIANTのYoneのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
5.0
音楽映画×名作。
この類の映画を見るのは正直怖かった。
この映画を面白く感じられなければ、
自分は音楽をやるものとして
センスが「死んだ」と言われたようなもの
だと思っていたから。

でもそんなくだらないこと、
全く考えなくてよかった。
音楽のアツさ、不条理さ、
そして何より楽しさ。
全てが詰め込まれていた。

ピアノとドラム。
この二つは、楽器の中でもとりわけ
特殊だと思う。どちらも大雑把に
カテゴライズしてしまえば打楽器。
この打楽器というのは厄介である。
なぜなら四肢が健康でなければ、
いい演奏ができないからだ。

一度、左手が思うように動かない
病気にかかったことがある。
自分はドラマーなのだが、
何気なくしている演奏が
実はこんなにも緻密で、細かな左手の
コントロールが必要だということに、
初めてその時気が付いた。

そのとき打楽器という
空間を支配する楽器の責任の重さ、
そして四肢が健康である
ということの幸せにも初めて気付き、
何より思う演奏ができないことに
絶望していた。

しかし、リハビリを経て、今はむしろ
昔よりよく左手は動くようになった。
今はドラムを叩くたびに
当たり前にビートを刻める幸せ、
音楽をできる喜びを以前よりも
全身で感じるようになった。

このピアニストは本当にすごいと思う。
自分の人生に絶望するわけではなく、
仲間の門出を、自分のできる限界で
最大限に祝福した。
プレイヤーとしてここまでカッコいい人が
突き抜けるんだと思うし、彼は永遠に
ピアノを弾き続けると思う。
まさに「Players' Player」。

「音楽は呪いだ」
こう感じたことは一度や二度ではない。
でもそれ以上に「楽しいもの」なのだ。
そんなシンプルで一番大事なことを、
この映画は真っ向から全力で教えてくれた。
リスペクトでしかない。
やっぱり音楽は最高だ。
Yone

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