このレビューはネタバレを含みます
ベタだけどなぜか好感度の高い作品。
凄く凝ったキャラクターやストーリー…というわけではない。
それなのに、鳥肌が立つシーンの連続で鑑賞後の満足感がある。
ベタだけど胸を打つストーリー、圧倒的な音楽、音楽を際立たせるアーティスティックなアニメーション。
これらの完成度が非常に高く、なんというか素手でぶん殴られた感じがする。
○好きなところ
・キャラクターが良い
メインの3人全員好き。
大は完全に主人公属性。優しさも持ち合わせているが、ジャズで世界一になるという夢のためなら、周りの人間をも傷つける。
悪意は全くないが、純粋に夢を追うからこそ自分にも周りにもシビア。
初ライブに実力不足の玉田を出し、「玉田は笑っていた」と言うところ。
平さんに酷評され壁にぶち当たる沢辺を1人で部屋に置いていくところ。
少し恐ろしさを感じたが、世界一になるプレイヤーはこういうものなのかもしれない。
結局大は「ジャズをやる」と言って上京し、「ジャズをやる」と言って海外に飛び立つ。最初から最後まで変わらない。
玉田は観客が最も感情移入しやすいキャラクターなのではないだろうか。
打ち込んでいたもの(サッカー)があって、でもダメで、新しく打ち込めるものに出会って。
しかし、玉田は周りが驚くほど努力を惜しまなかった。
愚直に練習し、自分の下手さを自覚し、悔し涙を流し、それでも諦めずに仲間に食らいつくところに胸を打たれた。
沢辺は非の打ち所がない完璧キャラ…かと思いきや、平さんの酷評で地に落ちる。
個人的には沢辺に悪い印象を抱いていなかったが、平さんの意見はごもっともだなと納得した。
「人を馬鹿にしている」という言葉、意外と観客の多くにも刺さる気がする。
・音楽が良い
これは音楽経験があるかないかでだいぶ違うと思う。
私は楽器をかじっているので楽しんで聴けた。
でも、音楽に疎い人にも伝えたいという意図を感じた。
きっと初期の玉田の拙さは誰が聴いてもわかるし、徐々に成長しているのも伝わったのではないだろうか。
Cotton'sでのピアノソロも良かったな。
・アニメーションにこだわりを感じる
ライブシーンで流れるアーティスティックなアニメーション。
画面の移り変わりがリズムにビタビタにハマっていて気持ち良い。
特にラストのアンコールは印象的だった。
後半で惑星?宇宙?のような描写があったが、あれは物語中盤の「アルバム発売が月旅行だとしたら~」(記憶が曖昧)というくだりを彷彿とさせる。
玉田のソロをCGではなく手描き(多分)で表現していたのにも涙が出そうだった。
○微妙なところ、疑問点
・初期の大はそこまで上手くない気がする。
いや私の耳がおかしいのかもしれないが…大が初めて沢辺に演奏を披露した時、そこまで上手くないように感じた。
もちろん指は動いているし音量や勢いは感じる。感情も乗っている。
しかし、肝心の音が雑というか、特に高音はノイズ気味だった。
あの演奏で沢辺を泣かせられるとは思えない。
・主人公に成長が見られない。
これは微妙というわけではなく、珍しいと思ったところ。
大のスタンスは一貫している。ブレない。
ジャズで世界一になりたくて仲間を集めて上を目指す。
仲良しこよしをしたいわけじゃない。
熱いけど淡々としている。
という感じで主人公に変化が見られないのは、王道漫画と異なる点だと思った。
・なぜJASSを解散したのか。
アンコールの前に沢辺と大が「わかってるよな」「解散だ」的なことを言っていたが、なぜ?
沢辺の右腕は治るかもしれないのに。
それまで活動を休止すればいいのに。
なぜ解散までいくのかわからなかった。
・あえて声優に俳優をチョイスした。
アニメ映画のゲスト声優として芸能人を~という感じではなく、メインキャラクター3人全員が俳優。
正直、そこまで悪くなかった。
むしろ、大は山田裕貴で良かった。
元々山田裕貴の声は好きだったし、演技も一般人とプロ声優の間という感じで「大らしさ」が出ていた。
玉田は普通~ちょっと違和感、くらい。
ただ、間宮祥太朗演じる沢辺は若干違和感があった。話し方が硬い。