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ラーゲリより愛を込めてのikumiのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
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1956年といえば、日本史では「もはや戦後ではない」が流行語になった年だと学ぶ。しかし戦争の代償をその年まで払わされ続けた罪なき人たちがいる。
 つい数年前に亡くなった私の大伯父さんはシベリアに長いこと抑留された帰還者だったけど、幼かった私にはもちろん、姪っ子である母にも多くを語らなかった収容所(ラーゲリ)。妹である祖母からは、極寒で周りの人がバタバタと亡くなる環境だったらしい、帰ってきた時には人が変わっていた、"赤"に洗脳されていて大変だった、とだけ聞いていた。だからもし感動モノに仕上げられた映画を観て安っぽい涙を流したらおじさんに申し訳ない気がしてしまい、映画館では観られなかった。
 戦争は人から名前と尊厳を奪う。また戦争は条約を締結すれば終わりではない。人々の生活、命、権利、健康、心、未来に大きな代償を遺す。
 映画としては地味かもしれないけど記憶の苦労にももっとフォーカスしてほしかったし、シベリア抑留ってもっとずっと厳しかったんじゃないかと思ったし、おじさんが頭をよぎって全然泣かなかった。言わなかったのは言えなかったことがたくさんあったんじゃないかとか、どんな気持ちだったのだろうかとか。
 しかし戦争は決して始めてはいけないものなのだ、と今この時代に再提起したのがこの映画なのだと受け取った。おじさんや映画に登場する実在した人々のどの人生も、もう未来につくり出してはいけない。
 クロが史実だという話は感動しました...
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