ikumi

バービーのikumiのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

We can be anything!
 かつて赤ん坊の人形しか選択肢がなかった少女たちは、こぞってお母さん役を演じた。その後バービーが誕生し、女性は何にでもなれる存在なのだと少女たちに教えてくれた...とバービーは女性をエンパワメントしてきた象徴なのだと語られる。(のちにバービーが社会に引き起こしてきた問題も元持ち主の少女が提起するけど)
 前半のバービーランドの設定や住人たちの動きはとても凝っていて、かつての人形遊びの記憶を呼び覚ます。懐かしくて楽しい。
 リアルワールドに来たバービーには口臭やセルライトがあり、どんどん"完璧"な女性ではなくなっていく。性的な視線やセクハラに晒され、やがて悲しみの感情や加齢にも出会い、世界を知る。「女は常に素敵じゃないといけない」という呪いと向き合う。
 この映画でケンはバービーランドの平穏を奪う者。しかし私たちの世界を見て嬉しかったケンの気持ちもよくわかる。だって現実の女性たちはバービーランドにおけるケンのような存在としてずっと生きてきた。私も向こう側に行けたなら、たぶんこちらの世界にはもう戻って来られない。
 ケンに乗っ取られた世界で苦しむバービーを見て「自分だけじゃなくあらゆる女性たちが人に好かれようと苦労するのをこれ以上見たくない」と救いの手を差し伸べるのは、アランと現実世界で苦しんできた人間の女性たち。マンスプレイニングを利用して洗脳を解いていく。選挙と投票によって世界を変える。
 最後は男女二元論に着地させない、本当に優しい結末だと思った。属性で人を軽視してしまう人は人格が悪なのではなく、多くは環境によって作られてきたものだと気づく。
 それぞれ幸せに生きるために必要なのはパワーや泣かない強さではない。この世界にたったひとりしかいない自分の存在に気がつくこと。
 私たちの生きるリアルワールドも、他人を軽く扱う・他人に軽く扱われることなく、またそれぞれが生まれた属性に関係なくなりたい姿を目指し、意思決定に誰の許可も必要とせず、誰もがありのままでリスペクトされる世界になることを願ってやまない。
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