Koshii

ブラック・フォンのKoshiiのレビュー・感想・評価

ブラック・フォン(2022年製作の映画)
3.8
この町では子供がよく失踪する。

人さらい『グラバー』がこの町に潜んでいるというのだ。

グラバーは子供たちを誘拐した後、黒電話が壁にかかった地下室に監禁する。
黒電話の電話線はとうに切れ、その役割を失っているように見えるのだが。

地下室で唐突に鳴り響くのはその黒電話。受話器の先にいるのは失踪したはずの子供たち。


この陰惨な連続誘拐事件を止めることは出来ないのか、、?


以下、ネタバレを含みます。











ブラムハウスらしい暗すぎないホラー。
劇中の不穏な音楽達は、ブラムハウスらしさ全開で、この世界観に閉じめ込めようとする圧さえ感じる。

ホラー映画でまさか涙するとは思っていなかったのだが、友情と兄妹愛には打たれるものがあった。

設定と展開が素晴らしい。大好きなワンシチュ。黒電話以外ほぼ何もない部屋であるにも関わらず、死者との電話で次々と標が生まれていくところが素晴らしい。そこで必然、友情と兄妹愛は深まっていくのだ。

妹の能力は外部からの助けとなり、警察を巻き込み、僕らを焦らせ、時には安心させる役割をもつ。最終的に、フィンは自らの力だけで、脱出することになったのだが、そういう外部の動きがあったからこそ、「自分の身は自分で守る」というメッセージは鑑賞者に力強く響いたのだ。


また、ワンシチュものとして、音が外に漏れない防音の地下室という条件が上手い。その前提を提示しておくことで、鳴り響く電話と、その対話に関して安心して動向を追うことができる。

ただ、あまりにも監禁している少年を放置しすぎているようで、グラバーが「ゲーム」を楽しみたいという前提を鑑みても、衝動性の強い彼の性格からは、ここまで少年の脱走を我慢できるほどの理性があることが意外で、違和感を感じてしまった。

故に、彼の行動心理の深堀りがなされていると、その違和感は払拭されたのではないかと思う。あまりグラバーの本質が描かれておらず、魅力が薄かったことだけが物足りなかったところである。


お気に入りのシーンはラストで、フィンがグラバーに反撃する場面。「お前に電話だ」が名シーンすぎて、『ターミネーター2』Hasta la vista Baby!くらいの痺れがあった。このシーンめっちゃ好き!!


ブラックフォンを通じた「死者たちとの交流」が美しくて好きだ。単に彼を助けるという名目ではない。仇をうって欲しい、こんな殺され方はして欲しくないという、純な子供たちの願い。そして、彼らを心底敬うフィンの優しさ。
彼は一人ではないという一体感が、熱い涙を誘ったのだ。
Koshii

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