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デューン 砂の惑星PART2のくりふのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.5
【アラキスのロレンス】

さほど興味なかったものの、ある評を読んだら現代風アレンジが面白そうに思えたので、割引が効く日に行ってみた。前作はIMAXだったが、期待ほどの画ではなかったので、今回は通常版にて。

能天気なSFアクションとして楽しかった。原作はスッカリ忘れたが、対象年齢はだいぶ下げてあるよね?単純過ぎて、これが現実世界の縮図ではないでしょ。戦隊ヒーローものなんかのレベルでした。

ゼンデイヤちゃんが前より泥臭く見え、馴染んでいたのがよかった。観客に一番近い役で、現代女性の代弁者ですね。

相変わらず格闘はもさっとしてるが、アクションは全般、特異なデザインが稼働するから飽きなかった。リンチ版に比べると美術はずいぶん、アッサリしたなーと思うけど。

この監督は相変わらず生活感ヌキの映像をつくるので、砂漠暮らしの過酷さはまるで伝わらなかった。その困難が戦争とも関わっている筈では?まぁお陰で、精緻な画による絵空事として楽しめたワケだけど。

フレメンは、都会暮らしの人たちがベドウィンごっこやってるように見えた。

ハルコンネン家はもぉ見た目も人物像もギャグの域ですね。オレたちひょうきん族でのさんま…ブラックデビルとか思い出す。特に、満を持して登場する…ように演出される今回の飛び道具ヴィラン役オースティン・バトラーは、まるで狂気を醸さず怖くもないから、マジで拍子抜けしてしまった。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督って結局、ハッタリ屋なのに薄味なのが、イマドキにウケているのだと思う。

救世主うんたら話が今回の柱だけど、信者を愚人と描くことで単純化してあるね。フレメンのモデルはムスリムだろうけど、それならそれで次は、彼らを見下すキリスト教の傲慢さをちゃんと描いてほしいもの。

本作が絵空事なのはいわば“聖書に書いてあるから信じる”との盲信は描いても、“そもそも聖書は正しいの?”との理性的検証までは踏み込まないから。神の教えに染まる国では、そこが娯楽映画の限界なのだろうけど。現実では変わらず、聖書に異教徒を殺せと書いてあれば、その通り戦争を続けるのでしょう。

次はベネ・ゲセリットの悪を道理から明かして、解体してほしいもの。歴史的にみても、植民地を支配するのにキリスト教を利用するのは散々、やられてきていること。そして、現代の後進国でも…。

各人物の魅力は置いておいても、知られた俳優さんが揃い踏みなのは華やかで、楽しかった。総じて、ビジュアルを堪能するためだけでも、映画館に行く価値はあると思いました。

あ、そういや砂漠の惑星なのに、開放感より密室的な閉塞感の方が、高いことを不思議に思いました。

ところで、作中で使われる核爆弾には放射能汚染がないようですが、純粋水爆が実用化されたってコト?それとも、単につくり手がアホなだけ?

<2024.3.20記>
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