はた

デューン 砂の惑星PART2のはたのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.1
「スターウォーズ」かと思ったら「ゴッドファーザー」だった。

「DUNE」シリーズを批判する人の声で見受けられる意見の一つに「シンプルすぎる」という声があった。確かに、この映画シリーズはスペース・オペラ、復讐譚、宮廷モノと、血とロマン、興奮に満ち溢れるタイプのジャンルを数多く内包しつつもすさまじく淡々としている。自分自身、なぜ主人公が砂漠なんか似つかわしくないティモシー・シャラメなのかわからなかった。だが、Part2を観て確信した。これはある種のマフィア映画なのだと。

映画史上一番の傑作とすら言われる名高い三部作のマフィア映画「ゴッドファーザー」。この映画の主人公マイケルも、マフィアの一家に似つかわしくない小柄な俳優、アル・パチーノが務めている。マイケルは、当初父親の支配するコルレオーネファミリーを相続することを嫌がりカタギに生きようとする。しかし、とある不幸により「復讐」を遂行することになったマイケルは、いつのまにか父とは正反対の冷酷な男となりその冷たさをもってファミリーを支配するようになる。

ポールもまた、「英雄」になることに反発しチャニと平和な生活を送ろうとする。しかし、「命の水」を飲み、自分を取り囲む因果を知った結果、「救世主」としてフレメンを指揮する運命に準ずる。前作では何の脈絡もなく「地獄の黙示録」のオマージュが挟まれる場面があったが、今考えれば、それはこの展開の伏線だったのだろう。

映画は、皇帝たちとフレメンの大決戦によりクライマックスを迎えるが観方によっては確かに「シンプル」と思わずにはいられない終着点を迎える。なぜならサンドワームにより、皇帝の艦隊はあっさり破壊され、ものの数分で拠点は占拠されてしまうからだ。だが、「ゴッドファーザー」を踏まえているであろう監督からしたら、この戦いは「戦争」ではなく「粛清」でしかない。鳴り物入りで登場したフェイド=ラウサも、特に活躍することなくあっさり殺される。

かくして映画は、ひとり砂漠に姿を消そうとするチャニの表情で終わる。原作でチャニがポールの選択を受け入れたのに対して全く異なる展開だが、これにより支配者に堕ちるしかなかったポールは救われたのではないかと感じた。とは言っても原作通りいけば、part3は今作以上に陰惨な作品になると言われているのだが。
はた

はた