篠村友輝哉

デューン 砂の惑星PART2の篠村友輝哉のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
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前作を含め、一貫して「出生」と「運命」という主題を描き続けているヴィルヌーヴだが、「Part2」ではそれらを引き継ぎつつ、さらにそこに今日における信仰の位置付けや侵略という問題が盛り込まれた。
ポールの、自身の予見する未来=運命を避けられないものとして引き受ける姿は、『メッセージ』の主人公とも重なるが、本作で強調されるのは、ここで彼を「救世主」であるとし、その運命をもたらしているのは神でもなければ、それに類する存在や概念ですらなく、支配欲に浸された人間の策略だということである。神的なものや信仰は、もはや自らの生存戦略のために他なる者たちを対立させるための装置でしかない。
ヴィルヌーヴは過去作では、出生を懐疑しつつも最終的にはそれを肯定する結末を用意してきた印象だが、本作において、その運命──ポールの予見によれば最終的には破滅を迎える──を策略によって背負わせているのが母親であるという設定には、逆に反出生的なニュアンスも感じ取れる。
外部から来たものが、やがて権力を手にして領地や民を支配するようになるという筋書きには、やはりいま現実に起きている問題を重ね合わせずにはいられず、その亀裂の根底にはやはり信仰の問題がある。
ただひとり、チャニの曇りなき眼差しだけが、その危うさを見透し、自らの意志の力を信じようとする。ほんとうの信仰は、最後まで本来のフレメンの魂を捨てなかった彼女だけが体現していると言えるかもしれない。
篠村友輝哉

篠村友輝哉