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デューン 砂の惑星PART2の教授のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
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前作は眠かったのもあって、あまり記憶に残っていなかったのもあるが、物語としては「何も起こらなかった」という印象があったのだが、そのあと観返すと、そういうわけでもなかった。
原作の世界観に没入するための情報が自分に不足していたというのがよくわかりその「セットアップ」が万全となると、本作は非常にエンターテイメントとして極上の気分で楽しめるシリーズであることは段々と実感する。

そもそも。今回は展開が慌ただしく、前作と大きく違って「スペクタクル」満載。
砂漠に放り出された主人公のポール(ティモシー・シャラマ)が虐げられた砂漠の民「フレメン」と共闘し一族の復讐を誓うという基本ライン。
ヨーロッパの騎士道物語的なプロット。そこにスペースオペラ的味付けの原作。
中東と欧米圏でのエネルギー問題などの世界的情勢などを、古典SFとしての「風格」をルックに示したドゥニ・ヴィルヌーヴの腕の確かさは見事過ぎて溜息が出る。

その「神話的」豊かな画面設計によって「大きな物語」が王道的に進行していく中で、さりげなく示される「個人崇拝」の危うさと、ポールの心持ちの一端にある「政治的エゴイズム」のグロテスクさ。
白人酋長的なエリートとしてのティモシー・シャラメの存在感が見事に体現しながら滲ませる「政治的」であることと「為政者」としての覚醒は個人の「死」であることの示唆。
「理念」と「野心」の双方によって捻れていく中で生まれてくるのは更に巨大な戦争と虐殺でしかないわけで、本作は現実でもまさに起こっている「アナロジー」として機能しまくっている。

そして、その上でチャニ(ゼンデイヤ)は現実を受け入れる強さも、受け入れられない現実を跳ね除ける力も、その矛盾する両方を携えてプロフェッショナルに生きる姿を示すラストシーンによって本作の主人公が誰であり、何を描こうとしているのかを目の当たりにする。
全ては恐らく製作されるだろう「3作目」にこそより混迷の世界に進むことになるだろうが、楽しみだ。
とにかくあらゆる面で凄かった。
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