五十嵐忠雄

カッコーの巣の上での五十嵐忠雄のネタバレレビュー・内容・結末

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ムショの強制労働から逃れるため精神異常を装って精神病院に入った男の話。

まずこの物語には主人公が3人いると感じた。
強制労働から逃れるため精神疾患を装っている主人公マック、ろうあ者のインディアンであるチーフ、チックのビリー

主人公マックは粗暴な言動が多いが、ろうあ者のインディアンに話しかけたりチックのビリーの話を遮らずに聞いたり見ていると平等な精神を持ったイイ奴。
病棟での生活を通して、彼らに希望と光と夢を与えられたのは、外の世界のことをよく知っているからこそだよね。
最後はチーフに枕で押しつぶされ死亡。
でももう戻ってきた時点で、彼の人格は既に殺されていたようなものだから、トドメを刺してあげたといったところか。
シャイニング、恋愛小説家、アバウトシュミットなど多彩な役柄を演じたジャック・ニコルソンのコミカルな演技が気持ちいい。

ビリーの複雑な役柄を演じ切った俳優さんに拍手だよ。
チックの演技だって大変なのに、自殺未遂した過去、真面目な好青年だけど美人で愛嬌のあるキャンディに恋をするというちゃんとした人間味もあるところ、一番難しい役所なんじゃないかなと思います。
そして私が好きになるキャラはもれなく死ぬ。やはりビリー、お前もか。

婦長は医療従事者としての責務を果たそうとしているわね。
「ビリーは労働農場に行っても転院してもあのままなら、うちで責任持って治療すべき」と。最初冷たくて融通の効かない人だと思ったけど、長年閉鎖病棟にいるからなのか何が起きても割と冷静。強いですね。ただ、患者さまのプライバシーをビリーのお母さんが親友だからと言って一線を超えたこと報告するというのはあり得ないというか。息子と言えど個人情報だぞ…。精神科なんだからさ…もう少しホスピタリティ持ってほしいよ…守秘義務という言葉を知らないのか…てかお前がそんな個人的なこと持ち込まなかったらあの子は死ななかったんだぞおい。
てか、ミーティングという名の、あれはグループセラピー的なやつ?
ああいうのは看護師が行うものなの?臨床心理士ではなく…?それとも何かしらの資格お持ちなのかしら。

ろうあ者のチーフ。実はろうあ者じゃなかった。まぁ余計なこと話したくないしな。分かる。マックとの交流を深めるにつれ、人間味が徐々に徐々に出ていくのがよい。渋い演技なんだよなぁこれが。
あの病棟にいて、唯一まともでいられたのは聞こえないふりをしてたから...?
人格がかなり自立しているイメージ。
最後の主人公という感じ。個人的にはもっとマックとのバディ感見たかったよ...悲しいね、でも最後はマックからの意志を受け継いで自由という名の選択肢を選べて良かった。ほんとうに幸せになってほしい。

2時間以上ある映画とは思えないぐらいサクサク観られたのは、展開とテンポの良さ、細かな伏線の回収、人間味あり個性的なキャラクターたちの多さにあるよね。
基本は病棟にいるけど、その中でマックが巻き起こす数々の出来事が本当に濃い。良かったです。全員の演技が光っていた。面白かったです。
五十嵐忠雄

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