しの田

ウーマン・トーキング 私たちの選択のしの田のネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

 重たい題材だけれども、生々しい描写は無くて抽象的な会話が続き、徹底的な対立と言うものはない。誰かが泣き崩れるたびに立ち止まり、優しく手を引いてゆっくりゆっくり進んでいく、そんな感じ。
 広告やあらすじの感じから、アーミッシュが舞台かな、とは思っていたけど、途中で2010年の国勢調査が出てきた時にはぞっとした。
 会話主体で進む作品であるが、議論というよりも、みんなでゆっくりと合意形成する様子という感じ。宗教が主軸になっていて私には論理があんま理解できない。
 それに、「女」が子どもやLGBTQや障がい者含む「マイノリティ」を代表しているようで、少し大雑把に感じる。また、現代よく聞く言説を、無学で信仰心に篤い女性に「言わせている」感じもする。
 細かい内容としてはこんな感じだけど、大まかな設計としては良かったと思う。「加害者たる男」を殆ど描かないことで観客に強烈な敵愾心を起こさせないようにしていて、単純なミサンドリー映画ではなかった。その一方で、やはり身近な人物に暴行された登場人物たちの苦悩やショックが見えづらい。というかそもそも、この映画の人たちほど切羽詰まった状況に置かれることはない私たち観客は、やがて生まれるオーナの赤ちゃんと同じ立場として想定されていると思う。この物語は「私たちの物語ではない」。では、「暴力の証」として生まれた私たちは、「母たち」の話し合いの記録を見て、何を考えるのだろう。

 静かな農村に、「現代的な」音楽が響き、通り過ぎ、夜になって、雨が降る。やがて雨は止んで、また静かな鳥の声。
しの田

しの田