田山信行

ウーマン・トーキング 私たちの選択の田山信行のレビュー・感想・評価

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カナダを代表する映画作家に成りつつある、いやもうなってる?鬼才サラ・ポーリーの長編監督4作目。デビュー作から前作『物語る私たち』まではある一貫したテーマを描いていたが、本作ではより現代の世相に切り込むテーマへと。作家としての鋭さは増していくばかりだ。

カナダからハリウッドを完全に席巻する日も遠くないかも。オスカーにも食い込んだし。まだまだ進化を遂げていくであろうこれからの作品が楽しみだ。役者としての活躍もまた観たいんだが。

Metooに端を発した諸問題からその先まで考えた話。これからも生きていく上で迫られる選択。赦すか?闘うか?去るか?
何を選び取るにせよ、行動に移すのは決して簡単なことではない。延々と考え続け、対話も繰り返していかなければならないこと。この世を少しでも変えようとするならば。

TwitterなどSNSでも常に語られている問題ではあるが誰もが性急に答えを出すことばかりに躍起になっている様に思える。本作の様な建設的なディスカッションなんて夢のまた夢。

長考すらしない。如何にこの手の問題を考えずに済むのか解放される為に考えるフリをしているだけだ。お為ごかしの言葉を吐けばそれで終わり。そこで思考停止。

この手のテーマを描いた映画を観るのも一時の慰みの為だと思えてしまう。確かに自分はこの手の問題へ向き合っているのだと良識ある人間なのだと思い込みたいが為の。じゃあいざ現実の社会において何か出来ることがあるか、何かしているのかといえば。

この感想にかこつけて綺麗事のひとつやふたつ書き殴るくらいだ。自分よりも軽薄だと思える人間を揶揄したりもしてみて自分が正しい立ち位置にいるのだと確認する。そして数日すりゃ忘れる。その繰り返し。
田山信行

田山信行