【サンパウロ街角蟹工船(銃あり)】
Netflixブラジル産。プリジョネイロって何じゃろ?と思ったが、タイトルが『7 PRISIONEIROS』と表示され納得。Prisonerのことね。
7という数字にも残酷な意味が込められている、と後で分かりますが、本作も拾いもの!
小さく静かですが、力作でした。田舎の山中に住む青年が、貧しい家族を助けたい、とサンパウロに出稼ぎにゆくが、仕事先は超ブラック企業。その廃品処理場は、巧妙に仕組まれた牢獄だった。彼は、騙された仲間たちと脱出を試みるが…。
…という展開で、そこから痛快エンタメで着地もできたでしょうが、本作の要は、脱出したい主人公の揺らぎ。悪の誘惑が巧妙なのですね。
これ、悪がマトリョーシカの如くどこまでも連鎖しているという、いわゆる構造的問題が根にあって、優秀な人材ほど、悪の世界に登用されてしまうという。
また、それに巻かれないと、サバイブできない。主人公と同じ立場だったら、それでもあなたは正義を貫けますか?というのが映画の問いかけでしょう。堂々と、できる!と言える人間を、私は信用できませんが。普段から強がってる奴ほど、怪しいよね。
でも、これが現実だし。またブラジルある面の、リアルなのでしょう。
廃品処理場だけで物語は基本、成立していて、低予算で済んでいるのでしょうが、作りが巧くて充分、引き込まれます。一種の密室サスペンス。街角の、表向きただの工場が、抜けられぬ無間地獄に変貌する。
主人公を、あまり表情変えない演者としたのは狙いでしょうが、ちょっと不親切に転んだかな、と思いました。
また、問いかけぶっつりエンディングも意図はわかりますが、で?と聞きたくなる。この先は映画の役目ではない、との判断でしょうが、作り手は投げ過ぎだと思う。
93分でまとめたことは拍手。無駄に長いのは作り手の怠慢だからね。
ワケありブラックな役で、ロドリゴ・サントロがいい味出していますが、『300』のひな壇でブイブイ言わせていた、クセルクセスだと後から知って、相変わらず搾取しとるなあ、と苦笑してしまいました。
<2021.11.19記>