Monsieurおむすびさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

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アル中女の肖像(1979年製作の映画)

4.0

他者と喋るどころか笑みすら浮かべずに、鏡に写る自分を眺めながら酔っていく。
壁に囲まれた70年代ベルリンで女は酒を飲む。ひたすら酒を飲む。

調和の象徴たる千鳥格子トリオと対になるそのアイコン。世間的
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駒田蒸留所へようこそ(2023年製作の映画)

4.0

地震災害の被害で失われた幻のウイスキーを復活させようとする蒸留所の若き社長とその家族の再生記と新米記者の成長譚。

どんな仕事にもあるプロへの道筋とその困難。望んだ場所ではなくても理想の為に前へ進むお
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法廷遊戯(2023年製作の映画)

3.7

法科大学院で同窓だった3人が、卒業後に被疑者、被害者、弁護士として対峙する法廷ミステリー。

怠惰な司法と脆弱な人心。
罪を問われないことよりも難しい、正しく生きるということ。持たざる者にしてみればそ
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暗殺の森(1970年製作の映画)

3.9

トラウマを克服するためにファシズムに堕ちた弱き男マルチェロの心の牢獄をフランスとイタリア、2つの時代、国、色で描いた映像詩。

純潔を貫くイタリアは白
自由へ憧れるフランスは青
それぞれの風土を白と青
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ぼくは君たちを憎まないことにした(2022年製作の映画)

3.7

憎まないと決めた。
そこから始まる暗く深い底での葛藤。

2015年、パリ同時多発テロで妻エレーヌを失ったアントワーヌは、妻の遺体と対面した直後、犯人たちに向けて手紙を送る。
君たちを憎まない。幼い息
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正欲(2023年製作の映画)

4.0

ふつうのことです。
「いなくならないから。」って

無形無色無味の水をモチーフに、滑らかに社会に浸透した多様性へのアンチテーゼ。

多様性をどれだけ社会が標榜しても誰にでもあるだろう生きづらさ。
人そ
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バレリーナ(2023年製作の映画)

3.7

生きる喜びをくれた親友を自死に追いやった男へのリベンジ・アクション。

主人公オクジュ自身の背景やミニとのエピソードなどは最小限に留め、冷徹な復讐マシーンと化したオクジュの暴走を美しく活写。
カメラア
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こいびとのみつけかた(2023年製作の映画)

3.7

こちらの方が「まともじゃないのは君も一緒」じゃないのか?と言いたくなる、まともから外れた2人の関係。

凡そ、ただいまもおかえりも言う相手のいない人生を歩んできたトワの子供時代から時間が止まったかのよ
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パトリシア・ハイスミスに恋して(2022年製作の映画)

3.9

旅をして恋をして、静けさを求めては孤独を恐れて。作家として成功しようとも、許されぬアイデンティティは罪悪感となって彼女を縛り、解放のように、贖罪のように文章を綴る。

たくさんの出会いと恋を書き留めた
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さよなら ほやマン(2023年製作の映画)

4.1

「パーでもグーでもぶつけたらいい」
震災から12年半、石巻の離島で暮らす兄弟アキラとシゲルのもとに都会から逃げてきた訳アリ女性漫画家ミハルが転がり込むオフビートな導入から、予想もしない嵐のような深みへ
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人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした(2023年製作の映画)

3.8

元アイドルの華やかな人生からのセカンドキャリアに夢を膨らませ、現実にぶち当たり墜落寸前の低空飛行女子の切実。
思ったよりコメディ感は薄く、アラサー女子の等身大ドラマとして見応えあり。
いわゆる「詰んで
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私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?(2022年製作の映画)

3.7

中国への技術提供を内部告発し、会社の未来と従業員の雇用を守った労働組合代表モーリーン・カーニーは、その一件で利権にしがみつく保守派権力者たちの怒りを買ってしまう。

事件の背景から政治絡みの社会派サス
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サタデー・フィクション(2019年製作の映画)

3.8

雨にけぶる大戦前夜の上海。
1人の女スパイを軸に日中欧の諜報機関が謀略を巡らすスパイアクション。

虚実の境界を往来し、意識を混濁へと誘う劇中劇と苛烈な銃撃戦。ロウ・イエの撮る歴史スパイものもやっぱり
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人生は、美しい(2022年製作の映画)

4.1

余命モノ✖️ミュージカルのまさかの組み合わせが彩る愛が溢れる人生という時間。

無愛想な夫ジンボンと絶賛反抗期中な2人の子供に人生を捧げたセヨンが、突然告げられた余命宣告にも前向きに、ジンボンを巻き込
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映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ(2023年製作の映画)

4.0

まさかまさかの○○○映画を彷彿とさせるスリラーテイストで過去2作と少々趣きが違うが、すみっコたちのかわいさはいつも通りで、最後はやっぱりほっこりとしてウルっときてしまった。

色々と固執してしまった人
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私がやりました(2023年製作の映画)

4.0

軽妙洒脱な会話劇、クセ強なキャラクター、古き良きスクリューボール・コメディの系譜とMeTooの時流。

主演2人のコケティッシュな佇まいに衣装や美術の可愛らしさが目を引くも、彼女たちが消費される社会へ
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.9

戦争を生き抜き、復興の兆しをみせる戦後日本を絶望の底へ叩き落とす無慈悲な破壊の権化ゴジラの描写は、どれもこれも恐怖を抱くほど容赦なくて好感。
いわゆる特撮ではなくVFXの分野でこれほどのものを日本映画
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雪豹(2023年製作の映画)

3.7

東京国際映画祭2023にて。

現代チベットと文明社会の歪な相関をあらゆる噛み合わなさでみせる不協和音。
長回しやCGを用いたり、要所でファンタジーと思しき描写を加えたりと、いくつか観たペマ・ツェテン
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私たちの世界(2023年製作の映画)

3.9

東京国際映画祭2023にて。

2007年、独立前夜のコソボ。
未来のない田舎から逃げ、夢を見て都会へやってきた従姉妹だったが、大学は講師がいない状態が続き、卒業しても就職も安定しない。ラジオからは各
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台北アフタースクール/成功補習班(2023年製作の映画)

3.9

東京国際映画祭2023にて。

厳しい指導方針の予備校へ通う3人組男子高校生が風変わりな講師と出逢い、人生を大きく変えていく。1994年から十数年を描いたクロニクル。

台湾産の青春ドタバタコメディか
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青春の反抗(2023年製作の映画)

3.8

東京国際映画祭2023にて。

1994年、戒厳令解除後の台湾の美術学校を舞台に、自由を求め学生デモに身を投じる3人の男女の青春と恋模様。

時代的に理解の及ばないジェンダー問題を抱えて、自由を渇望し
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ミツバチと私(2023年製作の映画)

3.8

東京国際映画祭2023にて。

女の子になりたい。
でも私はそうじゃない。
8歳アイトールのどうしたらいいかわからない惑い、ノンバイナリーの我が子を受け止め切ることができない母親、母として祖母として、
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ザ・キラー(2023年製作の映画)

4.0

重要な仕事に失敗し、制裁を食らった冷酷な殺し屋の復讐劇。自らの流儀を独白して刻みつけ、道を外れてはまた心に刻んでいく。
これはブラック・コメディだよね?

フィンチャーの真意はさておき、キレキレで端正
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パッセージ(2023年製作の映画)

4.0

結果を省みず衝動の赴くまま、愛から愛への移行を階段を降るように雑作もなくしてしまう身勝手なバイセクシャルと、彼の愛に身を焦がす男と女の恋愛二等辺三角形。

端正な画のつくりと色彩設計やキッチュな衣装、
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.3

誰も気に留めないあるトイレ清掃員のシステマチックな日常を通し、そこに訪れるささやかな機微に心の襞を震わせる。

同時に街や建築物と音楽の調和が素晴らしいヴェンダース印のロードムービーでもあり、日本人が
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相撲ディーディー(2023年製作の映画)

3.8

東京国際映画祭2023にて。

インド史上唯一の女性力士ヘタル・ダヴィの実人生にインスピレーションを得たスポ根コメディ。

太めの容姿が原因で幼少よりいじめられたり、当て馬にされたりのヘタルは柔道を始
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マリア(2023年製作の映画)

3.7

東京国際映画祭2023にて。

自分の結婚式当日に別件で車を走らせる男は次の瞬間、陸橋から落ちてきた女性を撥ねてしまう。
事故か?自殺か?誰かに突き落とされたのか?

男とその親族が真相を紐解いていく
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犯罪者たち(2023年製作の映画)

3.4

東京国際映画祭2023にて。

自分が働く銀行から大金を盗んだモランは、金の半分を隠し、もう半分を同僚のロマンに無理矢理預け自首してしまう。モランがおよそ2年と見積もった服役期間中隠し通せば、預かった
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ほかげ(2023年製作の映画)

4.1

東京国際映画祭2023にて。

戦後、活気ある闇市の外れ、半焼けの居酒屋に集まる心に絶望を刻まれた人たちの再出発への祈り。

戦争は終わったのに、生きることに地獄をみる悍ましい世界。フラッシュバックも
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北極百貨店のコンシェルジュさん(2023年製作の映画)

3.8

人間が働き、動物たちがお客様の不思議な百貨店の新人コンシェルジュ奮闘記。

柔らかな線と豊かな色彩設計が印象的な絵本のようなアニメーション。
70分の尺でお仕事映画や成長譚としてほのぼのほっこりさせな
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蟻の王(2022年製作の映画)

4.0

60年代イタリア、同性愛への不寛容と暴力的な鈍感さが蔓延する社会で、繊細な愛を紡ぐアルドとエットレ。
G.アメリオ監督が描く厳格で冷徹な現実と人間の尊厳のグラデーションが生む心のざわめき。
他人が罪と
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ドミノ(2023年製作の映画)

3.7

R.ロドリゲスらしいデタラメさと映画作りへの愛溢れるアナログ感がテンポよく疾走。虚と実とジャンルを横断し、最後の1ピース、そこにあるのは愛と自由。
セレブ界随一の困り顔B.アフレックが右往左往し、翻弄
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タタミ(2023年製作の映画)

4.1

東京国際映画祭2023にて。

イランの柔道代表選手が国際大会でイスラエル代表選手との対戦拒否を自国政府から強いられた実際の出来事に着想を得たドラマ。

緊張感溢れる政治劇と瞬間ごとに情動が沸き立つス
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ゴンドラ(2023年製作の映画)

4.3

東京国際映画祭2023にて。

牧歌的なジョージア山岳地帯を走るロープウェイで働く女性イヴァとニノのロマンス。
ロープウェイがすれ違うたびにお互いを楽しませようと試行錯誤。監督の緻密さと遊び心が乗り移
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白い小船(2023年製作の映画)

3.6

東京国際映画祭2023にて。

母親の海外赴任の間、疎遠だった父親のもとで暮らすことになった15歳の少女シェンが、父親の写真スタジオで働く女性の娘ミンメイと出会うひと夏。

家庭にも学校にも居場所のな
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毒舌弁護人〜正義への戦い〜(2023年製作の映画)

3.8

歯に衣きせぬ言動と傲慢な職務態度で左遷された裁判官が一念発起して弁護士へ転職。
ウォーミングアップにと任された簡単な児童虐待案件だったが、その裏にある闇は暗く深い。

香港歴代興行収入No.1の謳い文
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