Monsieurおむすびさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

Monsieurおむすび

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家探し(2023年製作の映画)

3.9

東京国際映画祭2023にて。

首都テルアビブから夫の故郷で何もない地方都市ハイファへ移住する為に家探しを始める出産間近の妊婦とその夫の珍道中。

子どもが産まれるというのに何かとだらしない夫アダムと
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.0

かつて居住地区へと追いやったオセージ族がオイルマネーで富を得ると、その利権に群がり搾取していった白人たちが築いた血と暴力のアメリカ黒歴史。

1920年代の一連の事件を、妻への愛と叔父への服従に揺れる
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おまえの罪を自白しろ(2023年製作の映画)

3.8

政治家の孫が誘拐されたことに端を発する内閣、政治家家族、警察、地域を巻き込んだポリティカル・サスペンス。

「64ロクヨン」の久松真一脚本で、64ほどの重厚感はないが、政治ドラマとしての面白さがテンポ
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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.9

これまで自らの正義を否応なしに振りかざしてきた西洋と東洋の価値観や美徳の対立構造の果てに、人とAIが対峙するべく未来像。

SF大作でありながらアメリカ近代史への批判を見せ、更に「ローグ・ワン」にも似
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ゲート・トゥ・ヘヴン(2003年製作の映画)

3.6

見つかれば強制送還
見つからなくても奴隷暮らし
ドイツ入国を夢見てフランクフルト国際空港の地下に住み着いた多国籍な不法移民たちのファンタジック・ラブコメディ。

他国との玄関口、可能性に拓かれてるはず
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海外特派員(1940年製作の映画)

3.7

第二次大戦前夜、現地取材の為にアムステルダムを訪れたアメリカ人特派員の目の前でオランダの政治家が暗殺される…。

雨降りのアムステルダム、衆人環視での要人暗殺からカーチェイス追走撃と、巧みかつサスペン
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サーチライト-遊星散歩-(2022年製作の映画)

3.9

若年性アルツハイマーを患う母親の看病をする女子高生 果歩。
ヤングケアラーで極貧生活、世間からは認知されない真っ暗闇だが、作品全体に通底する温かさに、救われこそしないが希望を失わずにいられる。

最近
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宇宙探索編集部(2021年製作の映画)

3.8

90年代、一世を風靡したが今は廃刊寸前のSF雑誌「宇宙探索」編集長タンと仲間たちが中国西部で目撃されたという宇宙人を探しに行く西遊記宛らのロードムービー。

カメラマンの存在を意識させるフェイクドキュ
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ロストサマー(2023年製作の映画)

3.7

フユ、秋、春、季節を冠する名前を持つ3人の孤独と喪失、自然には移り変わらない季節の物語。

それぞれの「夏」に対して、自分自身では巡らすことができない哀切の刻。それでも無軌道ながら誰かと繋がることで微
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オペレーション・フォーチュン(2023年製作の映画)

3.9

「ロック、ストック〜」でロンドン下町のチンピラから始まったリッチーとステイサムが政府御用達の敏腕エージェントまで登り詰めたこの四半世紀。
クセ強なキャラクターがサクサクと回していき、説明シーンですら1
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間違えられた男(1956年製作の映画)

3.7

顔が似ているという不確かな証言により強盗の濡れ衣を着せられた男とその家族が、訳もわからぬまま日常から逸脱していく。
これが映画化の数年前に起きた実際の出来事という恐怖も相まって、ヒッチコックらしからぬ
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逃走迷路(1942年製作の映画)

3.4

航空機工場火災の犯人に仕立て上げられた青年が逃亡者となり真相を追うサスペンス。

モノクロなのに炎の迫力が伝わる冒頭の火災シーンと自由の女神でのクライマックス。
正直、面白かったのはこれくらい。
あと
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キリエのうた(2023年製作の映画)

3.8

良くも悪くもこれまで熟成され続けた岩井俊二エキスを余す事なく搾り出した集大成のような気がする。それはもちろん搾り過ぎたことによる余計なエグ味も含まれる。

大好きでも、年間ベストでもないと今は言える。
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春画先生(2023年製作の映画)

4.1

江戸時代は笑い絵と呼ばれ男女問わずの娯楽だった春画に取り憑かれた変態たちのツイストの効いた偏愛劇。
その猥雑さに目を向けているだけでは気づけない、情緒に訴えかける繊細さ。
ちょうどこの映画の大胆さとイ
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白い恐怖(1945年製作の映画)

4.0

精神病療院へやってきた新任所長が抱えるトラウマに起因する奇病。そこから始まる二転三転と幻惑する疑惑と夢想の極上サスペンス。
記憶喪失や夢診断、精神医療といった下地の粗さを補って余りあるバーグマンとペッ
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見知らぬ乗客(1951年製作の映画)

3.8

電車で出逢うガイとブルーノ。
互いにいなくなってほしい人間がいる事でブルーノが持ちかける交換殺人。相手にしないガイを他所に勝手に実行し、執拗にガイを巻き込もうと迫るブルーノの欠落感満載の恐怖。
ヒロイ
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旅するローマ教皇(2022年製作の映画)

3.8

第266代ローマ教皇フランシスコの就任直後から始まった世界53ヵ国を旅して訴える平和と対話を追うドキュメンタリー。

アイコンとして笑顔を振り撒き、手を振る大仰なプロモーションではなく、世界を見つめ直
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ジャム DJAM(2017年製作の映画)

4.1

世界中を覆う絶望と怒り。だけど、流浪の魂は悲しさを隠して、どこでだって国境線のない自由な音楽を奏でて生きていく。


ギリシャ レスボス島からトルコ イスタンブールへ、叔父さんのおつかいへ出る破天荒娘
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第3逃亡者(1937年製作の映画)

3.5

殺人容疑をかけられた青年と警察署長の娘の真犯人探し逃避行。
いつもの巻き込まれ系ではあるが、サスペンスよりもロマコメ要素が強く、ヒッチコックのその後のフィルモグラフィーへと繋がるような実験室の様相。
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

3.9

「パンズ・ラビリンス」にも通ずるギレルモらしい不気味さと死を纏わせ、生きることを描いたピノキオ。
圧巻のストップモーションアニメと劇伴。
木は木のままに、ただ周囲の心を変容させる冷たく哀しい成長譚は、
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アンダーカレント(2023年製作の映画)

4.0

表層と深層、そして底に溜まる澱。その虚と実を、嘘と秘密を誰もが抱えて生きている。

向き合い、探ろうとするほどに綯い交ぜになり濁る真実を他人はおろか、自分だって理解できてはいないだろう。

わかってる
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レプタイル -蜥蜴-(2023年製作の映画)

3.7

惨殺された不動産業者の女と怪しさ満点の夫、元夫、近所の異常者と諸々の関係者たち。そんな難事件に挑む敏腕刑事で激渋なデル・トロおやじのサスペンス。

全貌の見通し悪さと回収されない伏線はいただけないが、
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極限境界線 救出までの18日間(2020年製作の映画)

3.8

タリバンに拐われた人質解放へ、厳格な組織人と孤高の工作員の共同戦線。
彼の地の慣わし、国の思惑、人命の重さが絡み合う五里霧中を駆ける渇いたネゴシエーションの緊迫感。
ファン・ジョンミン&ヒョンビンの熱
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ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)

3.9

古来より領有権が推移してきたトランシルヴァニアの山村を舞台に、移民排斥が刺激する歴史と人間の獣性を描いた寓話。
多様化の促進と共に広がる寛容の精神に反発するように強まる差別意識。
世界規模のこの矛盾と
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シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)

3.8

他者の喜びや悲しみには不感なくせに、自分の欲求には敏感なエゴをポップでシニカルに描く現代の寓意。
醜さが顕在化したヴィジュアルを糧に肥大する承認欲求は、それすらも多様性として消費する社会の合わせ鏡のよ
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栗の森のものがたり(2019年製作の映画)

3.9

第二次世界大戦後に廃れたイタリアとユーゴスラビアの国境沿いにある〝栗の地〟スラヴィア・ヴェネタを舞台に、土地とともに死にゆく老人マリオと戦地から還らぬ夫を求め続けるマルタが紡ぐ静謐な寓話。

フェルメ
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白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

3.8

夢見る博と夢を忘れた南。
2つの時制、2人のピアニストの運命が交錯する昭和63年銀座の1夜。
白と黒が共存する鍵盤のように、時を経て変わり果ててしまっても過去と未来とifが今の自分と繋がっている。
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君は行く先を知らない(2021年製作の映画)

3.9

果てない荒涼の大地を進む1台の車。
目的が明かされないままの4人と1匹の旅路の明朗さが余計に事の深刻さを物語る。

お父さんのジャッファル・パナヒよりも曖昧な立ち位置から捉えた、自由なショットとユーモ
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イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

3.8

「この街の人たちを好きになりかけてる」

孤独な仕事人マッコールさんが腕時計を外すほど癒された安住の地に迫る魔の手。
いつもの「おせっかい」じゃ済まないホラーじみたサイレントキリングにお怒り具合がうか
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アナログ(2023年製作の映画)

3.9

なんでも手元のスマホでできてしまう世の中だからか、人の手を介在した何かに触れた瞬間、感じるぬくもりが確かにある。
そんなことを強く感じる。出逢いも、愛の育みも、時間の慈しみ方もが温かいラブストーリー。
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アントニオ猪木をさがして(2023年製作の映画)

3.8

タイトル通り、関係者や各世代で猪木に熱狂した人たちにとってのアントニオ猪木探し。

各エピソードがさわりだけで、ファンには物足りなく感じるかもしれないが現在位置から振り返る、あの頃のアントニオ猪木の視
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(2023年製作の映画)

3.9

「頑張って生きて、なんの意味があるの?」
「人ってなんですか?」

自分と合わせ鏡の登場人物が、本音と建前や頭をよぎった別の考え、無かったことにしてやり過ごした心情を炙り出してくる。

社会の一員とし
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熊は、いない/ノー・ベアーズ(2022年製作の映画)

4.1

虚実の壁を突き破り、メタフィクションの講話でそれぞれに巣食う〝熊〟を解き明かす決死のパナヒ最新作。

あらゆる規制を強いられながらも、飄々と、どこか楽観性すら纏いイラン社会の実情をカメラに収めてきた監
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PIGGY ピギー(2022年製作の映画)

3.7

自分をいじめるグループが殺人鬼に誘拐されたらあなたは?

同級生からは太った容姿をバカにされ、家族からは抑圧され、鬱憤を溜め込む女子高生サラの選択。
圧倒的に弱い立場で被害者の彼女が、親にも警察にも頼
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ヒッチコックの映画術(2022年製作の映画)

3.8

没後40年、ヒッチコック自身による作品の演出意図や技術的な解説を「模した」ドキュメンタリー。

数々の撮影技法を試みた監督ヒッチコックの映画論というよりは、彼というイタズラ好き、もっと言えばペテン師の
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コカイン・ベア(2023年製作の映画)

3.6

熊が薬物摂取してしまった実話とアニマルパニックを掛け合わせたちゃんとしたB級。

同時多発的に起きる熊アタックを有機的みせる群像劇やCGの精度はとてもよくて、アナログなゴア描写とのコントラストもやり過
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