カウボーイと僕と惑星さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

チチを撮りに(2012年製作の映画)

3.8

必ずしも人の死はこの世を去ることだけではなく、生きる我々の背後として、今も息を続けていくこと。オーセンティックに感情が高鳴り、エキセントリックな描写を通過しながら、いつも笑顔で映画が終わる。中野量太監>>続きを読む

奇跡(2011年製作の映画)

4.7

君はもっと強くないから、頑張り過ぎてしまった時も、とってもとっても寂しい夜も、何度でも思い出してほしい、何度でも逃げてきてほしい。そう囁いてくれる日本映画は珍しいと思った。

モヒカン故郷に帰る(2016年製作の映画)

3.8

あれだけ精神性を言及しているのにちゃんと矢沢サウンドを流さないし、観賞後にはあの場所が恋しくなる、というか全てが恋しくなる。むしろ見た人が帰る場所になってしまう故郷を描く沖田修一のとっても軽く、とって>>続きを読む

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.5

祭りのような華麗さの中にある歴史の惨事。楽しい人生は当たり前のように破壊され、その過去が今に繋がる。だからって、誰にだって宝のような心はある。それは、今も昔も変わらない。心を心へと繋げるのがアートの役>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.5

社会と文化の真ん中に、二人はいた。坂元裕二の美しい脚本と土井裕泰の演出の飛躍。全てがあり得ないほど交わった結果、「マリッジ・ストーリー」や「ブルーバレンタイン」に匹敵するかそれ以上の、それはそれは素晴>>続きを読む

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)

4.5

アニメーション映画として、現状成し遂げうる領域の最前線にいる。ピクサー史上最も実験的で挑戦的でエキセントリックでいて、新たな傑作。

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

4.9

名匠エドワード・ヤンの代表作にして映画史に残る大傑作。長きに亘って綴られる物語は、まるで一人の人生を追体験したよう。巨大な虚無と情熱の間に位置する本作、つまりは我々自身の内面そのものではないのか。

ショート・ターム(2013年製作の映画)

4.2

誰にだって、その強さは存在する。誰にだって、その弱さは存在する。何かのきっかけで、その力は君を苦しめ君を救うけど、あたりまえをあたりまえじゃないに変える力が君にはある。懸命に生きてるその姿が、誰かを繋>>続きを読む

籠の中の乙女(2009年製作の映画)

3.9

ただただギョッとし、果てしなくグロテスクな本作。終盤、ひたすら逆撫でされる神経に待ち構える予期せぬパワフルさに静かな熱狂が訪れた。

セールスマン(2016年製作の映画)

4.1

容赦なくその後を描く。だからこれほど特別なのだ。

河童のクゥと夏休み(2007年製作の映画)

4.5

「ありがとう」という気持ちを、「ありがとう」と言わずに伝えるのが表現の形ならば、本作は「ありがとう」と素直に言う映画。

町田くんの世界(2019年製作の映画)

3.7

こんな作品好きにならないわけがないと願うように理想化された映画空間は、あまりにも大胆でエネルギッシュで。登場するニヒリストに全くの怯みを感じさせないほとんど神的な存在である町田くんを描いた石井裕也監督>>続きを読む

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜(2011年製作の映画)

4.1

人を信じることへの力を最大限に持っている映画というメディアが、今なお続くレイシズムに、トランプ支持者たちに、どう脳裏を反転させるか、どう真っ直ぐな心を、真っ直ぐな言葉を導かせるか、映画が自滅しないこと>>続きを読む

それから(2017年製作の映画)

4.2

まばたきの余地も与えない光が導く画面の中で、ホン・サンスはいつも通りの醜さと人情深さを見せていく。ホン・サンスの映画ならではの距離の近い親しみやすさは新たな領域へ。圧倒的でした。

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

4.0

巨大すぎる地球を前に、僕は精一杯持つ力に不信してしまう。2020の一年は、来世の始まりか?。本作の「頑張れ!」が人間の尊厳、生きる価値への回答だ。

ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-(2020年製作の映画)

3.9

泣きたい気持ちも、好きっていう気持ちも、ずっとずっと堪えてきた。そんな僕たちを、街はいつも見守るだけ。格差社会や男性主義、もっと言えば社会の影を皆の頭の中心から除き、少しでも優しい明日が訪れることを願>>続きを読む

カツベン!(2019年製作の映画)

3.8

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」以降の目からすると、その時代にふさわしいナラティブに仕上げてもいいのではないのかと余計な一言を加えてしまうが、周防監督のこの変わらない語り口こそ、とてつ>>続きを読む

透明人間(2019年製作の映画)

4.4

クラシカルな佇まいの中に前衛的な表現を組み立てる。思い出すたびアンモラルで清々しいのはヒッチコックが創造するサスペンス映画の傑作群すら彷彿とさせるが、そこから浮かぶフェミニズム的視点は、至って現代の映>>続きを読む

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.3

夢で描いたことがある、この最高に楽しい時間。近年の傑作ティーンドラマにより更に更に時代が開拓されたのか、この驚異的な完成度に、これから先はきっと悪いことが起きないと安心させてくれる。途中から僕は、目で>>続きを読む

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)

4.5

新たな巨匠S・クレイグ・ザラーによる余裕でいて安定の超骨太な傑作。静寂な禍々しさと無造作なバイオレンスに皆がついて行かなくとも、映画は彼について行くだろう。

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)

4.2

世を去った先祖たちもそうだが、自分自身に出会えた人は一体何人いるのだろうか。好きという気持ちの中にはいつも邪悪な心が潜んでいて、真面目になればなるほどくだらない事に愛を向けてしまう。あなたを知りたいけ>>続きを読む

ヴィジット(2015年製作の映画)

4.3

エンジン全開のM・ナイト・シャマラン。得体の知れなさと懐かしさと曖昧さと微かな世界への慈しみ。古典的要素とモダンな表現が堪能できる本作は、もしかしたら彼の最高傑作かも。

レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019年製作の映画)

3.7

ひとり謳歌するセレーナ・ゴメスが結論にくるあたり。「カフェ・ソサエティ」以来だろうか、だんだんウディ・アレンが柔らかくなり懐が深くなっている。

Mank/マンク(2020年製作の映画)

4.5

波乱の2020年最後の祝祭は、6年ぶりに映画に帰還した天下のデヴィッド・フィンチャー最新作。大恐慌の余波が消えないハリウッド。曖昧な光に映るかつてのメジャー映画とアメリカの風景は、まるで現代史を物語っ>>続きを読む

メリーに首ったけ(1998年製作の映画)

4.7

最近、ポップカルチャーに触れて泣きそうになることが多い。赤い公園の新曲、真造圭伍の入魂の傑作漫画「ノラと雑草」。その度僕は、悲しい時は悲しみ、嬉しい時は喜ぶ。あなたは素直でいていいと作品は呼びかける。>>続きを読む

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020年製作の映画)

3.9

もはや余裕すらも感じる中心のマーゴット・ロビーに憧れと嫉妬が隠せない。ポップにカラーリングされたサイケデリック空間が眩しく、自分の脳裏を刺激し離れない。パーフェクトにカオスで楽しい娯楽映画に祝福を。

続·ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画(2020年製作の映画)

3.8

かつての狂人コメディアン、サシャ・バロン・コーエンの正義が久しぶりに復活した事を知り、焦りと不安と震えが来たのを覚えてます。蓋を開けてみると、それは容赦ない、アイデアに富んだエクストリーム過ぎるギャグ>>続きを読む

メアリー&マックス(2009年製作の映画)

4.2

僕は君に手紙を書くよ。僕がすでに世界になれた頃、君は初めて呼吸を覚え、母の存在を知り、光の眩しさを知った。あれから大きくなっただろう。君との手紙で孤独を癒せた。いつかは2人で外に出よう、そう信じさせて>>続きを読む

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)

4.7

真っ直ぐな彼の眼差しは、僕に力があることを教えてくれる。汚れゆく世界の景色は、メル・ギブソンの特別な才能で再び可能性を取り戻す。僕は知っている、真実が屈することはないことを。

マディソン郡の橋(1995年製作の映画)

4.4

幼い頃、未熟だった頃の恋を体験した時のエモーションがようやく形として浮き上がってきた。誰かに愛情を注ぐ、誰かに愛される、それは自分を肯定でき、初めて自分を定義できる。そこで、世界の一部になれるのだ。あ>>続きを読む

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)

3.8

カットが変わることにこんなに怯えてしまうのは、監督スティーヴ・マックィーンの映画特有の感覚で、いつも自分の体力の限界が試される。抵抗の力を目撃することと、超越した肉体的暴力描写を目撃すること。やはり桁>>続きを読む

バッド・チューニング(1993年製作の映画)

4.3

破壊的なまでのテンションは、映画が幕を下ろす時には儚さへと切り替わる。昨日見た夢を思い出すのは、映画の記憶を思い出すのに似ていて、時々、奇跡の様で忘れられない体験となる時がある。

JUNO/ジュノ(2007年製作の映画)

3.8

16歳のエレン・ペイジが人の痛みを受け持ち命を生む物語構造に胸が一杯になった。