心の動きをそのまま撮ろうとした映像に思えた。
自分の人生だからこその思いの詰まったショットの数々。それを撮ろうしていた若松孝二監督。
人生で誰もが一本は傑作を撮れる。それは自分の人生を撮ること。
そし>>続きを読む
時間は流れていく。
そして、過ぎていった一瞬一瞬の時間は、その時だけのもの。
過去を同じ形で取り戻す事など出来ない、ある意味で残酷な時間。
ただ、その諦めは、決して後ろ向きではなく、美しい刹那を感じ>>続きを読む
タルベーラの世界に浸る。
あの広場に漂っているかのように空気感を肌で感じる。
宇宙規模の運動としての日常。
コントロールなど出来ないのにも関わらず、その日常をコントロールしようとする人間。そして、あ>>続きを読む
家族の崩壊、家族への執着。
形としての家、囚われる概念としての家族。崩壊していくしかないその概念としての家族。
もう崩壊するしかないのにも関わらず、
その事を分かっているにも関わらず、
逆に分かっ>>続きを読む
美しい自己発見と周囲からの消えない烙印。そして自己否定。
姉に見えていたであろう、
そして見えすぎてしまった美しく自由で、調和した世界。
ただし、現実の世界は余りに美しいものを引き摺りおろす。
自ら>>続きを読む
冒頭の誰もいない部屋。
外の光が段々と暗くなっていく様。
この時間の感覚に浸る。
夜の寒い街を彷徨う。
そこに漂う出身地の異なる多種多様な人々。
夜によって際立つそれぞれの孤独。ただ背景にある繋がり>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
1つの原子爆弾による核分裂が連鎖し続け、世界を破壊する可能性。
理論上(計算上)だけでは、実際に爆発させるまでその可能性は【ニアゼロ】でしかない。
この【ニアゼロ】、世界を破壊する核分裂の連鎖範囲の>>続きを読む
砂の世界に入り込み、
砂の世界に魅了される。
人間の社会が未だ開拓できない未開の地の存在を今の時代でもリアルに感じる。
想像も出来ない程多くの人が関わったであろうこんな大作で、世界観の表現をここま>>続きを読む
全編を貫き通す精神性。
ショットから感じる歴史、複数の時空間の存在。
ショット1つ1つが持つ時空間の圧倒的表現に加えて、主人公、歴史の中にいる音楽家、ドメニコの記憶が重なり合い、色濃い時空間の混ざり>>続きを読む
劇中、ゲアトルーズが求める愛は自らの信念を貫く事。
夫とも愛人とも昔の恋人とも分かり合える事のない、その全く噛み合わない会話を徹底して見せられた。
社会における女性の存在、その中で自らの信念に従って>>続きを読む
何が凄いのかは言葉に出来ない。
とにかく凄い映画。
ゆったりとした動きと、
それを成立させる始まりから映画全体を貫き通す精神性のようなもの。
カメラには映らない背後で起きているかもしれない恐ろしい何>>続きを読む
日々を生きていく上で、
本来個人個人が対処できる範囲は、
自分が思っているより狭く、
その一方で豊かさを感じる思考や感覚は、
自分が思っているよりとても浅い、シンプルなものなのだと感じた。
ただし、>>続きを読む
延々と続く長回し。
繰り返される何処にも行きつかない時間。
埋め込まれ、抜け出せない日々。
ただそれは10年前の話。
後で振り返っても、何の意味も見出す必要のない日々。
そんな意味のないダラダラと続>>続きを読む
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瞳を閉じた先にあるものは何なのだろうと、自分もエンディングでつい目を閉じてみる。
そこにあるのは世の中を正確に記述するような事実としての記憶ではなく、
朧げで名前もつけられず実在したかも分からない、湧>>続きを読む
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過去に生きる父親、
その分からなさ。
子供にとっては知らなくていいとされる政治的な思想も含めた対立と挫折。
その絶対的な分からなさに、
映画、写真で心地良く漂わせてくれる。
それは、エストレーリャの>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
笑えそうで、笑えないそんな絶妙なラインで終始何かが起こり続ける。
ボーにとっての現実と、
ほか大勢の社会にとっての現実が恐らく異なるだろう描写。
こんな中にいるボーはおそれるよなと。。。
自分もこんな>>続きを読む
冒頭、厳しい寒さの中で地面に降り積もった雪を踏みしめて何とか前に進む。
ふらついているのにも関わらず、その足取りからは前に進む意志の力強さ、気迫を感じ取る。
海の太鼓を叩くその姿、鉄パイプを投げ捨て>>続きを読む
夜の海辺でのコットとショーン。
「沈黙は悪くない。たくさんの人が沈黙の機会を逃し、多くのものを失ってきた。」
孤独に沈黙せざるを得ない時が人生には必ずある。
自分の中に渦巻く、他人には伝えられないし>>続きを読む
フィルムカメラの粒子、差し込んでくる光。
夜明け前の暗さ、闇を抱えた人たちにゆっくりと、そして繊細に差し込む光。
三宅監督のこの繊細な光の表現、画づくりは、もうストーリー云々ではなくそれだけでグッとく>>続きを読む
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poor things、哀れなる私たち人間。
この悲劇を喜劇に捉え直す。
ゴットによって作られた人。
閉じられた世界から外の広い世界を知っていく。理性からの倫理を絶対的なものとする西欧的な合理主義か>>続きを読む
映画館でこんな体験が出来るとは。。
流れる音楽、リズム、
そして映像から伝わってくる空気感。
何も考えず、ただただそこに身を任せて、至福の時間だった。
このレビューはネタバレを含みます
失った平和で穏やかな生活。
その生活、そしてその中での自分自身を何処かに持っているからこそ、
戦時下、戦後の現実の中でもがき苦しむ。
何とか過去の別世界、夢の中のような生活や自分自身に蓋をして、前に>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
挟み込まれる街や自然のショットの構図が余りにも美しい。
そして、振り子時計が刻む時の残酷さ。
父と姉と明子。
それぞれの孤独の向き合い方。
晩春とは違う悲劇的な形でまたもや一人となった笠智衆。
それ>>続きを読む
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最後の3人での通しの本読み。
そこには映画で物語を表現する大きな要素である物語の為につくられた舞台はなく、あくまで現実上。
そして人と言葉しかない。
この映画は物語を物語るのではなく、
あくまで物語>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
ふつうに回っている日常の切り取り。
ショットの日常そのままさが凄い。
ふつうにまわっているように見える日常の中、見逃してしまうそれぞれが抱える孤独感、喪失感。
ふとみせる何か虚空を見つめるような、何>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
ダイニングキッチンを中心にウージェニーの寝室も含めた空間の慎ましい美しさ。
これだけでもうこの映画が好きになってしまう。
時間経過とともに入れ替わる部屋を飾る植物、部屋に差し込む暖かい太陽光。
夜はキ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
大きなうねりの中で、忘れられた人たち。
荒くれ者や富を持つ主役たちが寝静まった夜の森で、自分たちの歴史を作ろうと夢を追い求めるお菓子作り。
ハラハラする冒険でもありつつ、2人だけの親密な時間が流れる。>>続きを読む
明るく前向きな家族を映した冒頭シーン。
そして強制収容所への連行を待つ想像を絶する空気感。
スピルマンを救った人々。
そして、スピルマンの全身の動きから生きようとする強い何か根本的な凄みを感じる。>>続きを読む
何度でも偶然を起こしてくれるカウリスマキの優しさ。
そして、その偶然の慎ましさ。
大好きな世界観、空気感だった。
厳しい境遇を抱えた市井の人。
スーパーや工場で鳴る人工的なサウンド。
ラジオから流れ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
取り立てて大きな事が起こっている訳でもない日常。
何でもないようでもあるけど、日々を生きていく中で生じるものすごく微妙なやり切れなさや、いらつき、不安がそのままダイレクトに映っている感覚を得る。
特>>続きを読む
他者に対して暴力的にしか触れられない部分を思う。
通常そこには、自己保身かもしれないけど、気遣いという要素が発生する。最初の出会いの暴力性をどう捉えればいいのか分からないし、そこがずっと引っかかる。>>続きを読む
構造、パターン、反復の中にある揺らぎを通して感じる世界の不確かさ、分からなさ。そこにある生活の豊かさと、その豊かさを得るために切り離さざるを得ない世界の存在、不穏さ。
孤独、可笑しさ、哀しさ、喜び、愛>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
普段は裏側に隠れているショットの持つ時空間の複数性が、
2分割画面によって可視的なモノとなり、余りにも強く目の前に提示される。
そしてその複数性が、
私は私の世界を生きていて、あなたはあなたの世界を>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
昔ある所に国があったという歴史。
外からの侵略、内部の分断。
そして国家の消滅。
そのような場所で生きた人を、
人間の愚かさが引き起こした流れにただただ翻弄される人としてではなく、
人間臭く、狂ったよ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
ストーリー云々ではない。
蒸し暑く汗の滴る部屋の感覚が沁みてくる長回しのショットが刺さる。
母が鼻歌を歌って料理を作り、家族が笑顔で囲む食卓。
目の前にある現実のどうしようもなさ。
鼻歌の食卓の記>>続きを読む
伝え聞いた事、経験した事や見た事から想像するしかない御伽話としての世界の認識。その哀しさとともに、その孤独な想像の重なり合いが生む豊かさや美しさを感じる事のできる素晴らしい映画だった。
マルタの部>>続きを読む