champavertさんの映画レビュー・感想・評価

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夜の鼓(1958年製作の映画)

4.1

公開時に谷崎潤一郎も絶賛したこの映画の有馬稲子の美貌と艶姿は、そこらの女優では到底出せないもので(元々は山田五十鈴が演じたがっていたとか)、相変わらずネチネチと気色悪い金子信雄に犯されそうになった挙句>>続きを読む

乾いた湖(1960年製作の映画)

3.6

60年安保の喧騒をひとりのニヒリスティックな学生の視点で無化したような、かなり挑戦的ともいえる作品。全学連のトロツキストどもをバカにしてブタ呼ばわりし、自らはヒトラーに密かに憧れて最後は暴力闘争にひと>>続きを読む

丹波哲郎の大霊界 死んだらどうなる(1989年製作の映画)

2.6

youtubeにあるのを発見してしまい、何を血迷ったか久々に再見するも、これを観ても霊界のことなんてのはこれっぽっちもわからないことは昔々観たときと同じ。冒頭のスペースシャトル爆破が示すように、ここに>>続きを読む

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)

3.6

底辺アメリカの切なさと理不尽さが詰まった北への旅。劇中で南妙法蓮華経を唱えまくる点では『日本暗殺秘録』の血盟団事件の千葉ちゃんに通ずるものがあるが、折伏ってそのまま動詞になるくらいに向こうの信者も使っ>>続きを読む

真夜中の招待状(1981年製作の映画)

2.6

小林麻美のド派手な衣装が浮きまくっている、暗い日本の田舎サスペンス、ですらないのかもしれないくらい、まとまりのない映画。兄弟の連続蒸発、精神医学、金持ちの令嬢、心霊研究、降霊術、心霊写真、東海村原発、>>続きを読む

MOON CHILD(2003年製作の映画)

1.6

日本の経済状況が悪化して中華圏へ移民する、という背景は2003年からすれば彗眼ともいえるし、この架空の都市はウォン・カーウァイ的な返還前の香港的雑多さをやりたかったのかもしれないし、あるいはジョン・ウ>>続きを読む

ナディア(1994年製作の映画)

3.1

リンチ追悼シリーズ。現代版(といっても90年代マンハッタン)吸血鬼ものだが、特殊撮影カメラ(ピクセル・ヴィジョンというらしい)や、マイブラ、ヴァーヴ、ポーティスヘッドという音楽がなんとも90年代の懐か>>続きを読む

アルカディア(2017年製作の映画)

2.6

異世界ループものなんだが、人によってそのループの長さがそれぞれ違うのはアメリカ的多様性の現れなんでしょうか。カルトから幼くして抜けた弟が不憫で、その弟の人生のやり直しの話なのかと思ったらそうでもなく、>>続きを読む

ワイルド・アット・ハート(1990年製作の映画)

4.1

リンチ追悼で久々に再見。やっぱりウィレム・デフォーの狂いっぷりよりも、砂漠で踊りだすニコケイとローラ・ダーンが最高だが、ほんと変人しか出てこないのにストーリーがちゃんとあって、ラストの「ラブ・ミー・テ>>続きを読む

九十九本目の生娘(1959年製作の映画)

3.6

これはなぜ長いこと封印されていたのか知らないが、岩手の「部落」(当時は集落くらいの意味で普通に使われていた)がサンカや被差別民を思わせるとか、そういう自主規制なのかね。話はわりと面白くて、名刀の秘密は>>続きを読む

イン・ジ・アース(2021年製作の映画)

3.1

ベン・ウィートリーお得意?のフォーク・ホラー&ドラッグ映画を、パンデミック下の森という閉じた空間で表現したんだろうと思われる作品。思われる、というのは、この人は『レベッカ』みたいなメジャーな作品以外で>>続きを読む

砂の器(1974年製作の映画)

4.1

久々に再見。これほど素晴らしいロードムービーは他に見当たらないだろう。らい病者を演じる加藤嘉の慟哭と、それをじっと正面から見据える丹波哲郎のシーンはもう泣くしかない。そしてそのバックには交響曲「宿命」>>続きを読む

MEG ザ・モンスターズ2(2023年製作の映画)

2.6

ベン・ウィートリーは今はこんな普通の映画も撮ってるのか。食うためには仕方がないのだろうか。ほとんどジュラシックパークのような、特に何と言うこともない映画。宇宙に行くよりも深海のほうがよりリアルなSF的>>続きを読む

テリファー(2016年製作の映画)

3.1

80年代スプラッターオマージュで特殊造形もCGじゃないので、何か懐かしい感じがするホラー。ストーリーはあってないようなものでダラダラしてるが、頑張って股裂け血みどろ死体作りました!という熱情が伝わって>>続きを読む

タンポポ(1985年製作の映画)

4.1

小さい頃にテレビ放映で観たときに、役所広司のエロいシーンで気まずい思いをした世代であるが(特に黄身の口移しはよく覚えていた)、こうして改めてオッサンになってから観ると、そのエロさが重要だったんだなとい>>続きを読む

殺しの分け前/ポイント・ブランク(1967年製作の映画)

3.6

10万ドルに満たない金を取り戻す復讐に燃えるリー・マーヴィンは、結局誰も殺さないノワール。組織の中で順に勝手に死んでいくんだから面白いよな。死神みたい。そういう死臭がどこか漂う変な映画。タイトルバック>>続きを読む

屋敷女 ノーカット 完全版(2007年製作の映画)

3.1

『ローズマリーの赤ちゃん』系かと思ったら、全然死なない女の復讐譚だった。が、音楽と効果音が仰々しいので、もう少し音が少なければより生々しくてよかった。身体損壊描写はそこまでではないが(左脳を銃で吹っ飛>>続きを読む

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.1

フランスの肉屋映画といえばクロード・シャブロルかギャスパー・ノエかといったところだが、この映画はそれらを踏襲することもなく、ただ不謹慎に現代フランスの暗部へと突き進むのが面白い。ライバル肉屋夫婦の白人>>続きを読む

哀しみのベラドンナ(1973年製作の映画)

3.6

単純に比較するものではないんだろうが、こういう絵画的なアニメーションを観ていると、今のデジタルアニメなんていうのは子供のお絵描きみたいなもんなのではないかと思ってしまう。ビアズリーやトーロップを彷彿と>>続きを読む

俺たちニュースキャスター(2004年製作の映画)

3.1

再見。今観ると、当時それなりに男性性批判にもなっていた部分があまりに弱いので、物足りなさを感じてしまうのだが、こういったコメディは時代に置いていかれるものなのかもしれない。バイカーに無碍にぶっ飛ばされ>>続きを読む

バーミリオン(2022年製作の映画)

2.6

20年ぶりくらいの山内大輔。朱色が晴れて透明になっていくような終盤の展開やラストは好きだが、そこにもう少し時間をかけてほしかった。あとこういう映画にもう少し予算があれば…(ピンク映画にそういうことを言>>続きを読む

オクス駅お化け(2022年製作の映画)

2.6

ラストがオーファンの悲運な子供たちの呪いを利用したヘル朝鮮ブラック企業批判になってて笑う。社長に呪い移して颯爽とスローモーションで去るなんて笑 てかもはやホラー関係ないし。ある意味で開発至上主義のイン>>続きを読む

ポゼッサー(2020年製作の映画)

3.1

公開時にチラシ見たことあるなあ、くらいで何気なく観始めたら、流血と身体損壊描写が執拗でなかなかきつかった。ストーリーはラストになってこんがらがるが、白髪女性の暗殺者としての自我の目覚め、ってことなんで>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.1

最近多い?90sノスタルジー映画(音楽も含めて)だが、ストーリーはほとんどあってないようなもので、観る人が勝手に解釈してくれ系の映画なんだろう。最初父は病気を抱えていてやがて死ぬのかと思ったが、そう単>>続きを読む

苦役列車(2012年製作の映画)

2.1

小説の北町貫多は中卒なのにクソみたいに自尊心が強くてその上小心者で卑屈で卑怯なのだが、この森山未來が演じる男は単なる異常者にしか見えないので、原作ものとしては西村賢太が当時酷評したように、ひどい出来で>>続きを読む

ザ・ヴォイド 変異世界(2016年製作の映画)

3.1

80sVFXホラーへの回帰がテーマだからか、おそらくこの映画の舞台はケータイ以前の世界なんだろうが、妙に現代っぽいので違和感があるのだが、死んでしまった娘を蘇らせるためにマッドドクターが死体カルト教団>>続きを読む

まむしの兄弟 恐喝三億円(1973年製作の映画)

3.1

終盤のゆるいカーチェイスなんかはほとんど『トラック野郎』前哨戦ともいえる、軽いギャグの応酬と、ディアスポラ松方弘樹をめぐる無理矢理な叙情はさすがの則文先生。バス旅ばあさんたちの田んぼで集団放尿は名シー>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.6

聴覚障害で発話もほぼできないケイコは何を考えているのかわからないのだが、それが周囲の会話やコミュニケーションからだんだんとわかっていって、会長の妻が会長の病室でケイコの毎日つけているノートを読むことで>>続きを読む

プラットフォーム(2019年製作の映画)

2.6

思わせぶり社会派シチュエーションスリラー。パンナコッタやアジア系少女が伝言というのがよくわからないが、有限である食べ物はみんなでシェアしようとか、自分のことだけ考えずに他人の子供も心配しよう、みたいな>>続きを読む

Cloud クラウド(2024年製作の映画)

3.6

名著『映像のカリスマ』に「拳銃ものシノプシス」があったように、黒沢清はたぶんこういうガンアクションがずっとやりたかったんだと思うが、黒沢清がやるとやっぱり空は暗く、ほとんど地獄にいるようである。転売ヤ>>続きを読む

シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

4.6

戦争なんて政治の極みのようなものなのに、政治的な背景が一切語られない戦争映画。カリフォルニアとテキサスが独立(どちらも分離運動は実際にある)、地方は巻き込まれたくないなど、こんなことアメリカでしか起こ>>続きを読む

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

2.6

トーキング・ヘッズ好きなら楽しめるだろうが、BLM(だからスパイク・リーなんだろうが)や有権者登録など、典型的なアメリカリベラル左派のメッセージを伴ったパフォーマンスは好みが分かれるだろう。映画的な驚>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

3.1

映画は記号の集合体だ、と改めて認識せざるをえない作品。高校生、青春、SF、学祭、恋愛、そこに時代劇=愛、といった記号が全部ごちゃまぜになって、それってつまりこういうものでしょ!と、各記号を背負った各シ>>続きを読む

憐れみの3章(2024年製作の映画)

3.6

前作『哀れなるものたち』(未見)でわりとメジャーなファンを掴んだ気がするランティモスだが、元々こういう不条理セックス・コメディを撮る人だったよな。詳しいことはよくわからないけど劇中でみんなが従ってる「>>続きを読む

の方へ、流れる(2021年製作の映画)

2.1

演劇でやっとけこれは。特段大した映像も撮れてないくせに、わざわざ中編にする意味がわからない。ラストもこれ見よがしで引く。表情のない唐田えりかは不穏でいいのだが、いかんせん男がチープ。

ビートニク(1999年製作の映画)

3.6

ジョニデやデニス・ホッパーの朗読のシーンはそんなに必要ないかもしれないが、ビート文学に関連する錚々たる面々の顔が拝めるのは貴重。ブライオン・ガイシンなんかも登場。