champavertさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

4.1

いくらでも換えの効く使い捨て労働者の夢は、アメリカのフロリダに移民するか、当時まだソ連だった海の反対側にあるエストニアに行くかくらいしか選択肢がなかった貧乏フィンランド。東でも西でもないこの国の不確か>>続きを読む

マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

3.5

ちょっと展開がダラーっとしてる気がするが、アニャの目力の強さがさすが砂埃とよく合ってて、長尺さはあまり感じなかった。でもイモータン・ジョーは動かないし、前作ほどの高揚感はなかったな。エンドロールの前作>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

3.0

ルドルフ・ヘスによる自伝『アウシュヴィッツ収容所』の淡々さを、さらに俯瞰したような突き放したカメラと、ほとんどダーク・アンビエントやインダストリアルのようなノイズが時々鳴り、その合間のあるドイツ人一家>>続きを読む

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)

3.5

10年ぶりくらいに見返したが、エピソードは結構ぶつ切れなのに全体のトーンが統一されているからか、観ていて飽きないのはさすが。足利の田園地帯のおかげでもあるか。
蒼井優の援交は悲しいしそれで得たお金なん
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コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

3.5

「労働者階級に祖国はないわ」
ジョー・ストラマーのスレたテレキャスがかっこいいのだが、そのスレ具合くらいこの映画もスレている。虚無のフランス移民と乾いた殺し屋の悲しくて滑稽な物語。

蛇の道(1998年製作の映画)

4.0

久々に再見。高橋洋x黒沢清コンビの作品では最恐なんじゃないかと思える禍々しさが、画面から演技から溢れ出ている怪作。パンパンと乾いた銃声で殺されるヤクザたちの命の軽さが、逆説的に子供を殺された親の辛さを>>続きを読む

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)

2.0

何十億年も先のまったく未知の世界から語りかけられているのに、映像はたかだか数十年の間に社会主義ユーゴで作られた物質的で妙な建造物を見せられるだけなので、その2つの乖離が気になって朗読が入ってこない。ヨ>>続きを読む

最も重要なものは愛/大切なのは愛すること(1975年製作の映画)

2.5

武者の甲冑、インポ、血まみれと三拍子揃ってるが、ズラウスキーにしては単調でなにか物足りない。でもここから『ポゼッション』に行くのよね。

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

3.5

15年ぶりくらいに再見。記憶よりもスペイン内戦の影は強く、母が宛もなく書いている手紙は内戦ではなればなれになった誰かで、脱走兵は「ゲリラ化した共和派の残党マキ」なのだろうか。また「若きフェルナンドの思>>続きを読む

清作の妻(1965年製作の映画)

4.0

元妾のあややの孤独になりたくない一心と強烈な愛ゆえに盲になってしまった清作だが、それであややの孤独の胸中を知り、模範=国家に従うことを止め、自ら売国奴として生きていくことを悟ったのは、ある意味ではハッ>>続きを読む

風よ あらしよ 劇場版(2023年製作の映画)

2.5

伊藤野枝という田舎者がいて、青鞜という女性の雑誌があって、こういう出来事がありました、というのをさらっと伝えるためだけの伝記映画。で結局伊藤野枝や大杉栄の主張した無政府主義思想とは何だったの?という謎>>続きを読む

浮き雲(1996年製作の映画)

4.0

失業貧乏フィンランドの淡々ハッピーエンド。アル中の失業者が寒空の下で集まってるところから、アル中矯正施設行ってピシッとなって帰ってくるのが最高。この頃のカウリスマキはまだ底明るさがあるからいいね。暗い>>続きを読む

明日なき街角(1997年製作の映画)

2.5

金子賢の各行動の動機がさっぱりわからないので、ただ男が何かやってる、程度の印象しかない。的場浩司も一本調子でつまらない。特にラストは意味不明だが、まあこの時期の若松孝二が面白いわけがないか。ポジティブ>>続きを読む

追憶の森(2015年製作の映画)

2.0

妻の死はわざわざあそこまでしなくてもいいのに、というように、ご都合主義のファンタジー脚本で希死念慮も蔑ろにしてしまったナヨった年収2万ドルのワープア理系非常勤講師マシュー・マコノヒーを見るだけの映画。>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.0

世間の評価がかなり高い映画だと思うが、90年代のアメリカの貧困やらドラッグ問題が裏にあるのはちゃんとしてるが、どうも主役の子がガキすぎて没入できず、どこか引いて見てしまった。レイを主役にしたらよかった>>続きを読む

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

4.0

お先真っ暗atg映画に現代のシスターフッドをぶちこんだような佳作。マリコがああなってしまったのも父親という男のせいなわけだし、シィちゃんが日本の果ての海でマリコの亡骸を使ってぶん殴るひったくりレイピス>>続きを読む

フォルス・ポジティブ(2021年製作の映画)

3.0

不穏な出来事はすべて富裕層ママ脳のせいにして、おまけに虚実をあえてあいまいなままにしているのは最近の映画っぽいが、最近の映画ということであればマジカルニグロのことを白人が一方的に「見たいもの」として否>>続きを読む

TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.0

何の前情報もなしに観たら、何度も( ゚д゚)ポカーンとしてしまった。開いた口が塞がらない。前半は車とのセックスもありクローネンバーグの『クラッシュ』の影響が強いが(ジョン・カーペンター『クリスティー>>続きを読む

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)

3.0

おばあさん含め劇映画版ほど毒々しさがないのが残念。ジョゼが台所の台からドスンと落ちる描写もない。あれがジョゼのぶっきらぼうさ、諦念をよく表してたんだけどな。良くも悪くもアニメ向けに丸くなった凡庸版。

ニューオーダー(2020年製作の映画)

3.5

初ミシェル・フランコ。これはすごい。ミヒャエル・ハネケのディストピア版とでもいうくらい、ドキュメンタリー的で、劇伴なしで、画面に緊張感があって、救いがない。メキシコだからこれくらい最悪な差別のレイヤー>>続きを読む

(2023年製作の映画)

2.0

原作を読んでから観たが、これは完全オリジナルで作った方が良かったのではないか。原作及び、311や死刑についてなど、肝心なところで辺見庸の過去の文章や言葉に引っ張られすぎで、その結果物語が強度を失ってい>>続きを読む

永遠に美しく…(1992年製作の映画)

3.5

この程度の特殊効果で映画も止まったらよかったのにな〜。CG全盛の今ではもう出せないザラッとしたアナログ感が良い。

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)

2.5

ラストの尾野真千子の謎演劇が象徴するように、上級国民による池袋母子交通事故殺人やらシングルマザーやらいじめやら貧困と風俗業やらDVやら近親相姦レイプやら、ヘヴィな社会問題を詰め込みすぎたからか、焦点が>>続きを読む

事故物件 恐い間取り(2020年製作の映画)

2.0

幽霊の扱いがどれも雑すぎて幽霊に失礼。赤い服の女はどうなった? 息子に殺されたばあさんは? すべて辻褄はまったくないし(あのラスボスは報われない幽霊たちの集合的意識?大阪にも東京にもいるのか?なぜ線香>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

マジメな歴史家たちはこれ観て怒るのか褒めるのかのまっぷたつだろうと思うが、加瀬亮の信長はじめ配役は全員完璧だし、秀吉は百姓の出なので始終浮いてて楽しいし、衆道はもはやBL化してるし、相変わらず愉快に針>>続きを読む

君は永遠にそいつらより若い(2021年製作の映画)

4.0

社会からのはみ出しもの、弱いもの、「普通」に弾かれる人たちに対する、温かくて強い思いやりみたいな視点が原作の底層にはあったが、それはこの映画版でもうまく引き継がれている。
佐久間由衣のとっ散らかった感
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赤い暴行(1980年製作の映画)

3.5

そこそこ演奏はうまいのに(一応メジャーで内田裕也もレコードチェックしてる)若さで突っ走りすぎて瓦解していくバンドマンたちとその周辺の不思議な女性たち。金借りて自殺願望の女が謎でいいが、高校生ファンは唐>>続きを読む

暴走パニック 大激突(1976年製作の映画)

3.5

複数の小エピソードを、終盤の何見せられてるかわからない轟の大混乱で無理矢理まとめてるわけだが、カーチェイスに一番合いそうな赤いスポーツカーがその混乱に参加しないのが謎で楽しい。高級車に傷つける性癖のメ>>続きを読む

直撃地獄拳 大逆転(1974年製作の映画)

4.0

前作よりはるかに面白い東映史上でも最高のバカ映画の一つ。ペーソスが1ミリもないので、鈴木則文みたいにエモくなることもなく、余計にバカが際立つ。この映画にあれこれといちいちツッコむのも野暮というもの。中>>続きを読む

野良猫ロック セックス・ハンター(1970年製作の映画)

4.0

黒人の混血を追い払い、白人には日本人のスケを差し出す、インポの藤竜也率いる情けない似非愛国チンピラたちは、戦後日本社会そのものの戯画であり、それに立ち向かって自らの命を消すカズマは戦争の残した傷そのも>>続きを読む

空気人形(2009年製作の映画)

3.0

公開時はペ・ドゥナのあまりの可愛さとそこからは想像もつかない肢体の美しさに、関連グッズを買い込んでしまったことをここに白状しておくが(確か「ユリイカ」でペ・ドゥナ特集までしてしまってたよね)、肝心の映>>続きを読む

ロックダウン(2021年製作の映画)

3.0

良くも悪くもエドガー・アレン・ポーに尽きる。アン・ハサウェイの上半身は完璧、下半身はパジャマでの飲酒ZOOMミーティング姿は今後二度と見られぬだろう。

ずっとお城で暮らしてる(2018年製作の映画)

3.0

原作は「病んだ」いんちきお転婆魔女みたいな妹の視点だったが、それが映画化によってある種の客観性を帯びると、何を考えているかわからない、単なる変人にしか映らないから視覚というものは不思議である。
民衆が
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海賊版=BOOTLEG FILM(1999年製作の映画)

2.0

ブートレグということで『レザボア・ドッグス』ぽいことのかなり安いパクリだが、音楽が高田渡でエンディングは「仕事さがし」というのは良い。小林政広は高田の弟子だったか。
埋められた死体がむっくり起き上がる
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KITE LIBERATOR(2008年製作の映画)

3.0

一般向けだからか前作よりは全体のトーンが控えめだが、それでも見入ってしまうのはキャラ設定がうまいからか。別に前作の続きにしなくてもいいとは思ったが。
カルシウムと放射能だけで銃弾すら弾くプレデターみた
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パーフェクト・ケア(2020年製作の映画)

3.5

後見人ビジネス、というと聞き慣れないが、まあどの業界にも制度を悪用して儲けようとする悪いやつはいて、その悪いやつを淡々と演じるロザムンド・パイクはやはり魅力的な女優。ラストはあっけないが、まあ因果応報>>続きを読む