oさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古(2012年製作の映画)

3.6

演出家と役者たちが行ったワークショップのドキュメンタリー。
演出家の指導も、演出家の言葉を咀嚼しながら行われる役者たちの演技も濃密。

「 "綱渡り"は本物の想像力とリアリティを容赦なく要求してくる。
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パリ・オペラ座のすべて(2009年製作の映画)

3.2

パリ・オペラ座の舞台裏のドキュメンタリー。
スタッフの活動やミーティング、ダンサーの練習風景。

細くて長身の体、柔らかく美しい動き、わずかな修正を加えて繰り返される稽古。

「"修道女でありボクサー
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忍術児雷也(1955年製作の映画)

2.5

戦国時代、父と領地を失った青年がガマガエル忍術を会得して児雷也となり、ナメクジ忍術を操る許嫁と協力して敵のヘビ忍術に立ち向かい、失った家の再興を果たそうとする話。
ガマガエル、ナメクジ、ヘビの三すくみ
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戦艦バウンティ号の叛乱(1935年製作の映画)

3.0

18世紀末、ジャマイカで働く奴隷用の食物の苗木を入手するためにイギリスからタヒチに向かった船バウンティ号の話。
実話が元になっている。

タヒチの首長はイギリス人に「親友」という意味の言葉を教えて、イ
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博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)

2.7

ホーキング博士とその妻ジェーンの半生の話。
エディ・レッドメインの演技が圧巻。

「巻き戻せ、ある点に到達するまで」

セルロイド・クローゼット(1995年製作の映画)

3.6

ハリウッドやイギリスの映画のなかに描かれた同性愛の歴史を追跡したドキュメンタリー。作品の引用と関係者へのインタビュー。

同性愛は初めは笑いの対象として、
1934年から1968年のヘイズ・コードの時
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国境の夜想曲(2020年製作の映画)

3.6

イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯の人々を撮ったドキュメンタリー。

銃で武装した若い女性たち、
過去をカウンセラーに伝える少女、
自分が描いた何枚もの絵の前で現実とは思えないほど凄惨
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孤狼の血(2018年製作の映画)

3.3

暴対法施行直前の昭和末期、二つの組織が対立する広島の街で、新人刑事(松坂桃李)が違法捜査を繰り返すベテラン刑事(役所広司)と組んである失踪事件を捜査する話。

街並みの昭和感も良いし、見慣れた顔の俳優
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タイム・アバンチュール 絶頂5秒前(1986年製作の映画)

3.5

タイムスリップした女が現代に戻ろうとする話。
公開時の近未来である2001年を舞台にしたSFポルノコメディラブストーリー。

個人的に最近観た映画では『キャット・ピープル』に似ていて、両作品とも性的刺
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マルモイ ことばあつめ(2018年製作の映画)

3.5

日本統治下の時代、秘密裏に朝鮮語(韓国語)の辞書を作るために奮闘した人々の話。

言葉を集めるために主人公の昔の仲間たちにそれぞれの出身地の方言を話してもらったり、広告を出してそれを見た人々から手紙を
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博士と狂人(2018年製作の映画)

3.1

オックスフォード英語大辞典の編纂責任者だった異端の学者マレーと、有能な協力者で精神を病んだ殺人犯マイナーの話。

英国の威信を賭けた編纂事業。
膨大な数の単語があるために膠着するが、郵便を使って一般の
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グラディーヴァ マラケシュの裸婦(2006年製作の映画)

2.8

モロッコ滞在中の絵画史家の男が街で見掛けた美しい女の虜になる話。

その女は美術商の絵、芝居の舞台、夢の中にも現れる。男のいる場所はいつの間にか切り替わって、男はやがて自分のいる場所が分からなくなる。
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牛久(2021年製作の映画)

3.0

東日本入国管理センターに非正規滞在のために収容されている人々に取材したドキュメンタリー。

「収容は人身の自由を奪う行為ですから、刑事手続きであれば裁判所の令状が必要ですが、入管の手続きでは不要とされ
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311(2011年製作の映画)

3.0

震災から2週間後に岩手、宮城を訪れたドキュメンタリー。

撮影者のモラルをあえて問題にしているようなシーンがある。

当時の空気感、現地の光景、人々の表情。

波のした、土のうえ(2014年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

復興工事の進む陸前高田の人々がそれぞれの記憶を回想する。3部構成。

回想の言葉は当事者のインタビューを元に、映画制作者と当事者が書き直しを繰り返したもの。

『息の跡』や『二重のまち/交代地のうたを
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タイトロープ(1984年製作の映画)

3.3

女性を狙った連続猟奇殺人が起きてクリント・イーストウッド演じる刑事が犯人を追う話。

イーストウッドは刑事として、そして幼い娘達の父として犯人を強く憎むが、犯人の嗜好や特徴がなぜか自分自身のそれと一致
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北国の帝王(1973年製作の映画)

3.5

1930年代、無賃乗車でアメリカ各地を移動しながら仕事を探すいわゆるホーボーの人々と、彼らを厳しく追い払う車掌の対決の話。

ホーボーを追い払うために車掌が使う凶器が多種多様。使い方も。
ハンマー、鉄
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王の願い ハングルの始まり(2019年製作の映画)

2.9

15世紀の李氏朝鮮、漢字を知る一部の人々だけが知識を独占していた時代に国王世宗が自国独自の文字ハングルを作る話。

宮廷内の祈りの儀式で自国の言葉ではなく漢文が読み上げられることに王が違和感を持つ場面
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.1

アメリカの新聞社のフランス支局で働く記者達が自分たちの雑誌の最終号を制作する話。

ストーリーの構成が複雑なわりに求心力も緩急もなくて惹きつけられない。
ただ、これは雑誌や編集長の実在のモデルに興味が
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四月(1962年製作の映画)

3.1

何も持たずに2人だけの新しい生活を始めた男女の話。

最初は幸福だったけど、物欲に囚われて家具を増やすと互いのことを見なくなって関係が険悪になる。

アダムとイヴの物語を翻案したようなストーリー。
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デスティーノ(2003年製作の映画)

3.7

人間の少女と神のラブストーリー。アニメ。

タンポポの綿毛になっても踊り続けて時間を超える。

ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

3.2

対立し合う移民グループに属する男女の恋の話。ミュージカル。

更生してマリアと共に生きようとするトニーも、マリアに片想いしながら夜間学校で学ぶ真面目なチノも、一度は離れかけた不毛な連鎖にまた巻き込まれ
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哀しみのベラドンナ(1973年製作の映画)

4.0

中世フランスの貧しい村で、愛する男と結婚した女の話。

アニメーションとしての楽しさもあるけど、一つ一つの画面が素晴らしくて、アニメというより動く絵画。不吉で官能的。静止画のパンニングも効果的で面白い
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キャット・ピープル(1942年製作の映画)

3.4

自分がキャットピープルの末裔で欲情すると豹に変身してしまうと信じる女の話。

人々からは恐れられて、愛する夫には触れることもできない『シザーハンズ』のような悲劇。

処女ゲバゲバ(1969年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

滑稽で卑猥な内ゲバの話。

目隠しされた女は自分が連れてこられた場所、地平線まで誰もいなくて風で枯れ草が揺れるだけの荒野を地下の密室ではないかと言う。
罰を受ける男は滑稽な戯れで偽のボスとして扱われる
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トップガン(1986年製作の映画)

3.0

米海軍のエリートパイロットが集まる訓練施設、通称トップガンに派遣された若手パイロット(トム・クルーズ)の話。
型破りな天才の恋と挫折と成長。

『クリムゾン・タイド』の潜水艦、『サブウェイ123 激突
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素直な悪女(1956年製作の映画)

3.2

街中の男たちが1人の女に夢中になる話。

女の扇情的な美しさの虜になって翻弄される男、
欲望の視線しか向けない男に失望する女。

女は醜さのために愛されない『美女と野獣』の野獣に似た状況。
醜さではな
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理大囲城(2020年製作の映画)

3.7

2019年の逃亡犯条例改定案をきっかけに、香港の民主的な自治を守ろうと香港理工大学に籠城する学生たちと彼らを包囲する警官たちを撮ったドキュメンタリー。

学生たちも警官隊もマスクやモザイクで顔を隠され
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.0

自分以外の全員が聾者の家族の中で暮らすいわゆる健聴者の娘の話。

あなたにとって歌うことの特別さを言葉で語ってみなさいと音楽教師に言われた娘は、それを、健聴者である教師に向かって音声言語ではなく手話で
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カリガリ博士(1920年製作の映画)

3.5

ある男が祭りの見世物小屋で出会ったカリガリ博士と夢遊病者チェーザレのことを回想する話。

黒い帽子と黒い眼鏡に白髪のカリガリ博士、真っ白な顔で目の周りの隈が黒いチェーザレ。
歩道や壁、建物の扉や窓も歪
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愛についてのキンゼイ・レポート(2004年製作の映画)

3.1

ヒトの性行動を研究して1948年にいわゆるキンゼイ報告を発表した科学者、アルフレッド・キンゼイの半生の話。

キンゼイは、性についての道徳には根拠が無いと考えて研究によって道徳を変えられると信じるけど
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

3.5

西部開拓時代、案内人に導かれて移住の旅を続ける3家族の話。

信頼できない導き手と共に荒野をさすらう話として個人的には『眼には眼を』(アンドレ・カイヤット監督)を思い出したけど、『眼には眼を』と違って
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

3.5

働き口を求めて愛犬(ルーシー)と共に旅をする女(ウェンディ)の話。

ある事件の後に女はスーパーマーケットの店員から「ドッグフードを買えないなら犬を飼うべきではない」と言われる。
モラルとお金のテーマ
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

3.4

妻と堅実な生活を送る男が久々に会った旧友と短いキャンプの旅に出掛ける話。

現在は違う境遇のなかで違う問題を抱えていて、再会して語り合っても2人の間には見えない壁がある。

でも、旧友は「森の中にはゴ
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

3.5

さえない男とさえない女が逃避行する話。

破滅の予感と背中合わせの高揚感と自由がボニー&クライドにはあったけど、この映画の2人は罪を犯した後もそれらと無縁。

とりとめのないセリフや散漫に流れていく日
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バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

2.6

作家志望の貧しい青年、その幼馴染の女、紳士的で裕福な男の三角関係の話。

幼馴染の女は実際に目の前に蜜柑が無いとしても無いという事実を忘れれば無いはずの蜜柑を食べることができると言い、
紳士的な男は何
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