近本光司さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

近本光司

近本光司

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素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)

3.0

二人合わせて所持金35円の、恋人たちの待ち遠しくない日曜日。ヒロインを演ずるのはすらりとした長躯のファニー・アルダンではなく、いくらかふっくらとした中北千枝子である。沼崎勲が浮浪児にメシ食ってるか? >>続きを読む

忘れられた人々(1950年製作の映画)

5.0

この映画は完全に真実の生における出来ごとにもとづき、あらゆる登場人物はみな実在する。と、ブニュエルが冒頭に掲げる高らかな宣言文をあえてくどく訳してみた。あまりに忌々しく嘆かわしい現実のざらつき。なんの>>続きを読む

ジュ・テーム、ジュ・テーム(1968年製作の映画)

3.5

タイムマシンで過去に送られた自殺未遂の男が無事にピストル自殺を果たすまでの断片的記憶の集積。ばちりとショットが切り替わって海の青が視界に飛び込んでくる至福!

アエリータ(1924年製作の映画)

4.0

妻の浮気をうたがう夫が突如として囚われる火星人たちの夢。現実と夢の境目は融解し、火星の女王アエリータはいつしか妻と重ねられ、火星でも奴隷たちによる社会主義革命が企てられる(”Socialistes s>>続きを読む

輝かしき灰(2022年製作の映画)

4.5

 ベトナム最南端の小さな村で暮らす三人の女性の生活を描く静謐な映像詩。それぞれの女性は愛する男性との関係に問題を抱えている。女は何かを変えようと働きかけるが、男はあまり口を開かず、自身の世界に浸ったま>>続きを読む

タバコは咳の原因になる(2022年製作の映画)

3.5

会場の熱気に身を任せて、げらげらと笑いながらスクリーンを見やる愉しい映画鑑賞。あの気の抜けたアンチ喫煙のタバコ戦隊のめいめいが、いつどのようにして煙草に火をつけるのかと考えをめぐらせていたがやや拍子抜>>続きを読む

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

4.0

母の少女時代に会うことができたとしたら、わたしは彼女と友だちになれるのだろうかという、だれもが一度は想像を膨らませたことのあるような素朴な疑問に、この映画はきわめてシンプルに、力強く応えている。
 双
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パシフィクション(2022年製作の映画)

4.0

 異様なまでの緩慢。ハリウッド的な明瞭さ、あるいはジェームス・ボンド的な瞬発力とは対極の話法。この物語が三時間近くの尺を要する必然性は見当たらないにもかかわらず、かくたる緩慢さこそがこの作家の筆致にほ>>続きを読む

預言者(2009年製作の映画)

4.0

十九世紀にヴィクトル・ユーゴーは学舎がつくられるたびに獄舎は閉じられると言った。しかし百年余り経ったいま、しばしば獄舎は犯罪の学舎であるとも言われる。根無草の若者が悪の跋扈する刑務所で生存するには、み>>続きを読む

理大囲城(2020年製作の映画)

4.5

2019年の香港。複数の映像作家からなる匿名のグループが、香港の理大に立て篭もった動乱の一部始終を収めた映像を観ながら、わたしの脳裏には四方田の著した書物で知った「敗者は映像を持たない」という大島渚の>>続きを読む

自画像:47KMのおとぎ話(2021年製作の映画)

3.5

47KMという名で呼ばれる中国奥地の山あいにある集落。章梦奇は姪っ子と連れ立って、これから建てようとしている新たな家のちかくの木立で、スマホから「イマジン」を流す。彼女はまだ英語を解さない姪っ子たちに>>続きを読む

復讐は私にまかせて(2021年製作の映画)

3.0

B級映画というジャンルの再検討が、日本にゆかりをもつエドウィンの手によって、インドネシアの地で果たされた。芦沢明子がこれほどアクションを撮れるなんて知らなかった。

よだかの片想い(2022年製作の映画)

2.5

左頬にべったりとついた青痣が、かつてまるで琵琶湖のようだと同窓生から嘲られ、大人となったいまでも琵琶湖という語にトラウマをもつ女性。この人物をショートヘアでほっそりとした首筋を覗かせる松井玲奈が演じて>>続きを読む

(2022年製作の映画)

1.5

おじさんにときめく若い女。中年男性との逢瀬の数々がスナップされていくのかと思いきや、結局行き着くのは同年輩の男の子であって、それでいて中年男性の幻想を増長させるようにもなっていてタチが悪い。いまロマン>>続きを読む

誰かの花(2021年製作の映画)

2.0

「誰かの花」という題はいい。団地のバルコニーから植木鉢こと頭上に落下して命を奪った花。その事故現場に誰かが手向けた花。あのひとを偲んで贈る花。そのタイトルの多義性と裏腹に、気合の入りすぎたショットや、>>続きを読む

アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター(2022年製作の映画)

5.0

わたしにとっての偏愛映画。現実と夢の位相が逆転する。あの主人公の傷痍兵隊に倣って、まるでいままで観ていた映画が現実で、灯りのともった劇場が夢であるのではないかと錯覚させられる魔法。空を飛ぶという極上の>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.0

「わたしのひいひいひいじいちゃんも馬の調教師で、マイブリッジの撮った連続写真の被写体、あの馬に乗っていた黒人ジョッキーでもあったのよ。つまりは映画は生まれたときから黒人が支えていたってわけ。知らなかっ>>続きを読む

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.0

喪服のような黒々としたスーツに身を包んだシイちゃんが、ささやかな仏壇から骨箱を奪い取り、裸足のまま二階のベランダから飛び降りて、河をわたっていく。親友の遺骨を抱えた逃避行。ロード・ムービーとしてはこの>>続きを読む

LOVE LIFE(2022年製作の映画)

2.0

運動神経が鈍すぎる。成瀬の『驟雨』を観たばかりということもあって、あの少年と仔猫を除いては、画面に映る一切がもったりと緩慢な動きをしていて正視に堪えなかった。無邪気にロメールの真似っこをして『ほとりの>>続きを読む

驟雨(1956年製作の映画)

4.0

成瀬らしさが凝縮された逸品。生活のひとつひとつの機微が短いショットの連続で軽やかに活写されていくことで、夫婦として過ごした時間の厚みが立ち上がってくる。湯呑に茶を注いで、割り箸を割って、立ち上がって、>>続きを読む

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)

1.5

何百何千という人間が、何百何千という時間をかけてこの作品をつくったという事実に、いいようのない虚しさが胸を衝いた。その不運も逆から見れば幸運だったのかなあ。

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.0

かつての海岸線を示す川に架けられた橋に、「洲崎パラダイス」というネオンの文字が掲出された大きな門が聳え立つ。日夜その門を通っていくのは、遊郭で身を売る女たちであり、その女たちを銭で買う男たちであり、東>>続きを読む

津軽のカマリ(2018年製作の映画)

2.5

三味線を支える力さえも失ったあとの最後の公演

山歌(2022年製作の映画)

1.5

俗世から隔絶された山の生活はどんなものか。いかにして山を下りるという決断はなされたのか。これって、この映画でいちばん大事なところじゃないのかなあ。なんだかなあ!

夜を走る(2021年製作の映画)

3.5

映画の最後のショットはほんとうに難しい。もうひとりの自分が父親として子どもと戯れる姿を見て、ベランダで静かに涙する場面で終わってもよかったし(『ペパーミント・キャンディー』)、宗教団体の壁に残る銃痕の>>続きを読む

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

4.0

よい気分はいかにして生まれうるか。隣の席に上野千鶴子が座っていた。ぜんぜん笑ってなかった。