近本光司さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

近本光司

近本光司

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砂漠の流れ者(1970年製作の映画)

3.5

砂漠の荒くれ者たちが徒党を組んで派手派手しい掠奪を仕掛けたりするよりも、偶然発見した水脈をもとに金策に走るほうがよほどアウトローで、現実みがあって、格好いい。土地の占有と町の興隆をめぐる考察。いつか「>>続きを読む

ワイルドバンチ/オリジナル・ディレクターズ・カット(1969年製作の映画)

3.5

サム・ペキンパーがしばしば完璧主義者と評される所以がよくわかる。終盤に待ち受ける高低差のある砦で繰り広げられる血みどろの銃撃戦は、目まぐるしくカットが切り替わり、いまやペキンパーの作家印としてあまりに>>続きを読む

プリースト判事(1934年製作の映画)

3.5

冒頭から軽妙なショットと言い回しの連続で、次第に多幸感のような情感が胸もとに溢れてくる。裁判ドラマの緊張の転覆を試みる歌や踊り。あの黒人たちの造詣は正当化はされうるか。

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

3.0

まるで街全体にマリファナの匂いが立ち罩め、だれもがハイになっているような、そんな1970年代初頭のロサンジェルスの気分にノれるか、ノれないか。

ご両親まで総動員されているハイムの面々、まことにご苦労
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阿賀に生きる(1992年製作の映画)

4.0

阿賀の老婆が、家族団欒の居間でひとりだけペヤングソース焼きそばを食べている。フィクションの設定ならば、これはあまりに強すぎるシンボルで、ナラティブの秩序を掻き乱してしまう。しかしわたしたちが生きる現実>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.0

あるとき友人から、彼が書いた小説のデータが送られてきた。わたしはしばらくそれを読めずにいたのだが、このあいだ仕事終わりにセブンイレブンで両面プリントした39頁を携えて彼の働く店に出むいた。彼はカウンタ>>続きを読む

ゆるキャン△(2022年製作の映画)

1.5

アニメシリーズも未見だが、なんとなくノリで観にいってみた。シャチホコ出版、名前がイカれすぎてて良い。

冬薔薇(2022年製作の映画)

3.5

舞台となった港町が横浜から遠くない場所に位置していることは窺い知れる。しかしその場所を安易に特定できるような情報は徹底して画面から排除されていた。ひょっとして作家は土地をめぐる観念の抽象度を下げないよ>>続きを読む

日曜日、凪(2021年製作の映画)

4.0

ビリヤードの演出がうますぎる。スタンダードサイズも小気味いい。

ひとひら(2018年製作の映画)

3.0

彼女がカメラのシャッターを下ろすことと、彼が唇に紅を差したこと。そのふたつは物語における意味体系ではまったく同等にもかかわらず、ショットの強さが伍していないという瑕疵。しかし丁寧にひとつひとつ積み上げ>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

-

気分がまったく乗らず途中退出。ぎゃくにもう一回観にいってもいいという気分になっている。

PLAN 75(2022年製作の映画)

2.5

鬱々とした話であることにはちがいないのに、鬱の気分が伝染してこない。それなりに巧くつくっているが、どこをとっても弱い。この主題をめぐってはいくらでも語りようがあるだけに、映画そのものがその設定に敗北し>>続きを読む

ドンバス(2018年製作の映画)

3.5

セルゲイ・ロズニツァとはロシア語の読みで、ウクライナ語ではセルヒー・ロズヌィーツャと発音するという。日本の配給者へのインタヴューで、本作緊急公開にあたって監督の表記もウクライナ語に改めるべきかとプロデ>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

4.5

まっさきに思いだしたのは『千と千尋の神隠し』。9才のジェシーは、10才の千尋でもあって、また同時にわたしたちの失われた過去でありながら、来るべき子どもたちの肖像でもある。傑作。

オフィサー・アンド・スパイ(2019年製作の映画)

2.5

数年前にポランスキーがドレフュス事件を題材に映画を撮ったと聞き及び、公開を待ち侘びていたのだが、いまいち焦点がどこに置かれているのか判然としない。かつて何某の撮った映画で、あのキッチュなゴダール擬きを>>続きを読む

名探偵コナン ハロウィンの花嫁(2022年製作の映画)

1.5

およそ20年振りに劇場版の名探偵コナンを観た。後ろの客はたびたび渇いた笑いを挟んでいて、ああもうギャグとして楽しんでいいんだと合点していたら、隣の客は号泣していて、途端にわたしは混迷の奈落へと突き落と>>続きを読む

ドウロ河(1931年製作の映画)

3.0

映画とはショットの切れ味だけでも成立する、とはやくもオリヴェイラは1930年代に喝破していたわけだ。

君と別れて(1933年製作の映画)

3.5

穴のあいた靴下。ぼろぼろの靴。すらりとした脚。成瀬は足が好きなんだなあ。足もとが階級をあらわすとでもいわんばかりである。

サッド ヴァケイション(2007年製作の映画)

4.5

あまりに中上健次で、軽く眩暈を起こしそうになった。この映画で浅野忠信が演じている男は秋幸にしか見えない(彼にはケンジという役名が与えられている)。舞台は新宮ではなく北九州。あの深き山々に立罩めていたむ>>続きを読む

妻よ薔薇のやうに(1935年製作の映画)

4.0

一家の主人は長らく東京の家を不在にし、淋しさを募らせた妻は恋慕の思いを綴った短歌ばかり詠んでいる。ひとり娘はあくまで気丈に振る舞って、また三人で仲睦まじく暮らす日々が戻ってくることを夢想している。トー>>続きを読む

悪夢の香り(1977年製作の映画)

4.5

人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。あまりにも有名なニーム・アームストロングの箴言を前に、タヒミックはわれわれにたいして判断留保を促す。ここでいう人類とは誰のことか。誰にとっ>>続きを読む

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

4.0

あくまで想像でしかないのだが、世紀の変わり目に『EUREKA』を観たとき、当時の人びとはこの映画を評するためにはあらたな批評言語を探究しなければならないと感じただろうと思う。ラスコー洞窟の壁画を見たと>>続きを読む

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)(2007年製作の映画)

4.0

重信房子はあと二日で刑期を終えて出所する。獄中でこの映画の完成版を観る機会を与えられたのかどうかはよくわからない。しかし彼女が往年の同志である若松孝二による運動の「総括」をどう受け止めたのかが、わたし>>続きを読む

距ててて(2021年製作の映画)

3.0

二階建ての古民家に暮らす二人を中心に綴られる四篇からなるオムニバス。脚本のもつ力学が絶妙に変てこで、ともすればただ散らかっていきそうなところを、ぎりぎり持ち堪えている。それはまるで、次々と思い掛けぬ闖>>続きを読む

モアナ(1925年製作の映画)

4.5

南太平洋の海に浮かぶ島で、わたしたちとは異なる衣装に身を包み、異なる言語をしゃべり、異なる風俗を実践する者たち。しかし彼らはわたしたちとおなじような顔つきで、おなじような身体性をもち、おなじような喜怒>>続きを読む

ベルイマン島にて(2021年製作の映画)

3.0

この話は映画になると思う? とクリスはトニーに尋ねる。彼女はいままさに滞在中のベルイマン島を舞台にした映画の脚本を準備していて、夫にそのあらすじを語り聞かせるのであった。いうまでもなく、これはミア・ハ>>続きを読む

教育と愛国(2022年製作の映画)

3.5

ゾッとした局面は枚挙にいとまがない。そこいらのホラー映画よりもよっぽどホラーである。’00年以降の公定教科書の記述をめぐる政治的介入に関する小史。従軍慰安婦はたんなる慰安婦と記述を改められ、沖縄の集団>>続きを読む