Kenyさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

わたしを離さないで(2010年製作の映画)

3.5

なんと、原作を読んでから3年も経ってしまっていた…。

イシグロの物語は、まるで静かな湖のようでありながら、そこにはいつも得体の知れない何かが住んでいる。

翻ってみれば僕らの世の中だって、条理から逸
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アネット(2021年製作の映画)

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新感覚のメタフィクションであり壮大なロックオペラでもある。こりゃすごい。

ストーリー性ではなく、その表現手法こそ映画の主役なのだと言わんばかりだ。

好きかどうかは置いておいて、これを作ったカラック
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ベルファスト(2021年製作の映画)

3.7

紛争という渦の中。社会という渦の中。家族という渦の中。
人はたくさんの渦に揉まれながらも生きていく。そのために僕らは手を繋ぐのだ。

子供目線で語られるとシンプルに幸せというものを眺めることができるの
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サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)(2021年製作の映画)

4.5

音楽そのものが紛争を終わらせることはできないけれど、闘う人を鼓舞し、目を背けてた人に気づきを与えてくれる。

ブラックミュージックってさ、身体で表現するのよね。だから映像で観た時のインパクトったらすご
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ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

4.0

流れる時間のカケラたちの中から語られない言葉に耳を傾ける。

東京の街が発する虚無の雑音が良い。そしてラストシーン。

ソフィアコッポラは映画というものをマジで心得ている。
これ観ると東京って嫌だなあ
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ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019年製作の映画)

3.7

冷え切った心に毛布を掛けたくなった時、この映画は実にうってつけだ。

ウォーミング系だけどやりすぎてない。良い距離感で寄り添える。

ダコタとシャイアラブーフとタイトルに惹かれたけど、なかなか良き映画
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.0

雑誌の映画化とは面白い試みだ。
ウェスアンダーソンの頭の中を紙面にアウトプットして、それを映像に再アウトプットした感じね。

独特なストーリーと個性的なセリフの応酬が魅力なんだろうけど、ディズニープラ
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オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)

4.0

洒落っ気の配合が的確すぎる。

ソフィアコッポラにしか出せない、この余裕のストーリーテリングよ。

何もない人生には常に何かがあって、でも何もない。OKそれでいい。

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

3.5

年齢という時限爆弾、人生の尺は普遍じゃないという無常。
しかし、その悩みは普遍だから胸打つのよね。

甘口なんだけど、アンドリューガーフィールドが結構鬼気迫る演技してくれてるから結構観れる。
モノロー
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ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間(1992年製作の映画)

3.0

前日譚。
ドラマ版の暖かでユニークで親しみのあるツインピークスワールドに浸かった後に「さて!」とコーヒー片手にソファに座る。冒頭から満足のリンチテイストに心躍る。

と思いきや、である。

どうした?
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.5

人生色々あるけど吹っ切れて楽しくやろうぜ!(用法要領を守って正しく)

マッツミケルセンの伸び伸びとしたジャズバレエシーンがすてき。

ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート(2022年製作の映画)

5.0

定期開催して欲しい。

この音、このライブ感。
いい時代に生きてるなあと思いながら、一方で常にかつてそこに存在した現象を追ってしまう。

そこに確実に在ったのだ。そこに。

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

3.5

どうしようもない人生から脱するためには犯罪が必要だった。

ラストが素晴らしいね。

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.2

抑制された女性たちの生命が燃え上がる様、その美しさ。あゝこんなに美しい映画を作れるとはなんて素晴らしいんだろう。

愛に生きるか、思い出に生きるか。
オルフェのメタファー。静かな孤島の静かな女性たち。
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シェルタリング・スカイ(1990年製作の映画)

4.2

一糸纏わない太陽とグロテスクなほど生々しい大地のもとに晒されてはじめて、僕らは自分自身の人間としての生を体験するのかもしれない。

無限を前提とした世界の中にいるとつい忘れてしまう。
空の向こうと大地
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パルプ・フィクション(1994年製作の映画)

4.5

「映画とは何か?」と聞かれる。
「パルプ・フィクションを観ろ」と僕は言う。
つまり世界中の議論という議論を一発でガラクタに変えてしまう代物なんだ。

やっぱ、いつまでもこいつはマイベイビーだ。

僕を育ててくれたテンダー・バー(2021年製作の映画)

4.2

もうね、色調がとっても好き。
派手じゃない、それでいてグッと掴んでくる。それでいいんだ。人生の浮き沈みやら笑顔やら涙やら。

うん、聴き古したカセットテープみたいな映画だ。

背中で語るベン・アフレッ
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サウナのあるところ(2010年製作の映画)

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フィンランドサウナのこと知りたいなーくらいのテンションで観たのですがね、これは実に素晴らしい文化映画でした。

ぶっきらぼうで陰のあるフィンランド男たちが語る寂しい身の上話。
サウナという土着文化によ
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ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ(2022年製作の映画)

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ホグワーツという家を持てた彼らの人生って、魔法よりずっとずっと奇跡的なんだなあ。

3人が大人になって顔を合わせて語り合うだけで感情込み上げる。
ナイスなプロジェクトでした!

それにしてもヘレナは普
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水を抱く女(2020年製作の映画)

3.7

水の精ウンディーネの心にスッと潜っていく潜水士クリストフ。
そこにかつて沼だったベルリンという都市の悲しき発展の歴史が重ねられて、どこか息詰まる。

よく練り上げられたストーリーとバッハと水のイマージ
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ライフ・イズ・ミラクル(2004年製作の映画)

4.2

スタートから畳みかけるカオス!危うく乗り遅れそうだったぜ、クストリッツァ特急。

列車を繋げようとしたルカが自らトンネルを閉じ、愛の逃避行へ。なんて素晴らしいメッセージなんだ。。
生々しくワイルドな動
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トニー滝谷(2004年製作の映画)

3.5

散文を大胆にも紙芝居的に(あるいはパラグラフ的に)ぶつ切りしてくるとは、面白いじゃないか。紙を捲るように展開されていく。

映像はあくまで平面的な補完であって、前景にあるのは坂本龍一の音楽と西島秀俊の
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シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014年製作の映画)

3.5

Happiness is Hereな映画はいいねえ。気持ちの良いプロットにシズルと音楽で読後感最高さ。

Sexual Healingを歌いながらドライブするとこ好き。
そしてヤンチャなナイスガイやら
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シャロウ・グレイブ(1994年製作の映画)

3.7

金なんていらない、そうだろ?

リズムと意外性がいい!
終わり方のトレスポ感〜♫
ロン毛ユアンかっこよすぎるネ。

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

4.0

喜劇は悲劇よりも深く心に刺さるものだ。
「笑えるけど、笑えない」という心情は涙が生むカタルシスよりもよっぽど客観的で粘着力がある。と、改めて思います。

なんとまあ、忠実な現実の戯画。素晴らしいではな
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.0

I feel if I'm losing all my leaves.
美しくせつない表現です。

純粋に重たく悲しいわけでも、涙を誘うわけでもない。生が直面する不条理をうまく映像化した映画だ。だから
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ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)

5.0

ミュージックとしてのBeatlesは文字通り浴びるほど聴いてきた。
その短命で濃厚で宇宙規模のキャリアを堪能するにはLP盤を擦り減るほど聴くしかなかったから。

今ここに、伝説としてのBeatlesが
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クルエラ(2021年製作の映画)

4.0

素晴らしい脚本、これに尽きる。さすがだディズニー。

クルエラという人物像を決して壊さずにストーリー設定しつつ、分厚いパラレルワールドを作り上げてる。
フィニッシュの練り上げ方なんて最高さ。

エマス
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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

4.2

不条理な現実を執拗なまでに描くのが映画の一つの役割であり、その一方で希望としての物語を紡ぐのもまた映画の存在意義だ。

ドキュメンタリーとミュージカル。相容れないはずの2つの要素が放つ不協和音に僕らは
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イマジン/ジョン・レノン(1988年製作の映画)

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8年後の映画。
哀しみとか無念の匂いが染みついていた。

ビートルズでの栄光。分裂。そして人間ジョンレノンとしての生き様。

モダン・タイムス(1936年製作の映画)

4.0

機械的な動きをしていた男の生き生きとしたダンスに心打たれる。天才だなあ。

余計なことはしない。映画ってこれくらいシンプルでいいんだ。

情報だらけの昨今は疲れる。

さらば愛しき女よ(1975年製作の映画)

3.5

マーロウの小粋な話し方がいいよね。
真面目にふざけたこと言う感じ。

原作をうまーくキュッとまとめてるなあ。

SOMEWHERE(2010年製作の映画)

4.0

こんな(なんてことない)脚本を書けてしまうって、余裕というか気負わないセンスを感じるよね。

リズムのない生活、娘がもたらす鼓動、そして虚無。

それにしてもエル・ファニング。
strokesのタイミ
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アレックス(2002年製作の映画)

4.2

開始10分後
うわー、とんでもない映画だ、これ。。

観賞10分後
うわー、とんでもない映画だ、これ!

悪なんて存在しない。あるのは行為だけだ。
未来は決定づけられている。あらゆる要素がチェーンのよ
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ジェームズ・ボンドとして(2021年製作の映画)

-

ダニエルクレイグがジェームズボンドを演じたのではなく、文字通り"Being James Bond"だったということ。
賛否両論を背にバシバシ受けて、結果成功させるってのは映画産業冥利に尽きるというか。
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