コミヤさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

グレイ・ガーデンズ(1975年製作の映画)

4.4

暴走する娘と卓越したワードセンスで畳み掛けるように罵る母の賑やかな共同生活。ここではないどこかを夢想し、現状への不満の責任を擦りつけようとするも稀に互いへの愛が垣間見えることで、一筋縄ではいかない二人>>続きを読む

コールヒストリー(2019年製作の映画)

4.4

「海に浮かぶ映画館」にて。他者の言葉によって語られることで解体される個人が、幾重にも重なることで浮かび上がるその人たるもの=本当の声というものに濱口竜介と佐藤真のエッセンスを感じる。こんなにも誠実な映>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

4.6

2回目。初見時より多少なりの人生経験を経たためか切実さがマシマシで襲いかかってきた。頭と心と体全部バラバラだからこそ偶然と想像で流動的に変化する関係性。私と他人の真心を完全に知ることはできないが、私>>続きを読む

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

4.5

2回目。言葉を発さずとも触れることで分かち合えることがある。逆を返すと触れないと分からないので、観客は登場人物たちが分かち合った何かの上澄みしか知り得ない。続編『FLOODS』が作られるなら、川底に溜>>続きを読む

ピンクカット 太く愛して深く愛して(1983年製作の映画)

4.7

この作品を好きと言うことは自分がどんな人間かの開陳になる恐れもあるが、これは自分にとっての"癖"であり、"喜び"であると宣言したい、名刺代わりの一本なのかもしれない。上映後沸き起こった拍手に間を置かず>>続きを読む

サウダーヂ デジタルリマスター版(2011年製作の映画)

4.5

この映画のリズムやムードに慣れるまで1時間かかったが、慣れてしまえばもう絶品でした…特にシーン変わりのカット繋ぎが快楽的。倫理観の危うさを自覚(自首)することで、とても倫理的な仕上がりになっている。自>>続きを読む

彼女はひとり(2018年製作の映画)

3.6

カメ止めぶりのK'sシネマで初日舞台挨拶。
技術、演出、脚本面で上手くいっているところとそうでないところムラがあったと偉そうに思ったが、『本気のしるし』から大注目の福永朱梨がこの上なく魅力的に撮られて
>>続きを読む

SELF AND OTHERS(2000年製作の映画)

4.5

「牛腸茂雄という写真家がいた」
不在を撮るということ。牛腸が撮影した写真を撮影する。牛腸が歩いた町を歩き、彼が見た風景を見る。牛腸が姉に宛てた手紙を他者であるナレーター(西島秀俊)が読み上げ、生前に記
>>続きを読む

草の響き(2021年製作の映画)

4.6

頻繁に観た映画の感想LINEを送ってくれる同期のシネフィルが
「相変わらず東出は良い。全体に慎ましいがゆえに、「で、どういう話なん?」みたいな声に応じてうっかり物語を要約しただけで、己のジェンダー観が
>>続きを読む

理大囲城(2020年製作の映画)

4.5

山形ドキュメンタリー映画祭のオンライン上映にて。
匿名の撮影者によって記録された、香港民主化デモのデモ隊が建て込んだ香港理工大学の内部での彼らの連帯、抵抗、疲弊、分裂。
何かが起こる瞬間を待つドキュメ
>>続きを読む

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)

3.3

土本典昭のドキュメンタリー2作を先に見てしまったから、本作ではあの2作に切実に記録されていた"怨"を映すことが出来てなかったように思った。『水俣 患者さんとその世界』を見た人なら、本作の株主総会のシー>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.7

2回目
自分は変えられないし、他人の気持ちは分からない。寄る方ない人間たちが行き着く幸福は、叶うか分からない希望を追い求める過程に身を置き、ふとした時に、今の自分は幸福なのではと漠然と思うことなのかも
>>続きを読む

ひいくんのあるく町(2017年製作の映画)

3.6

『東京自転車節』の精神安定剤的存在のひいくんを通して見える故郷の歴史。自転車節ほどのひいくんとの親密さが映し出されていなかったのは、やはり関係性がまだ深まっていなかったからで、距離が縮まったのはこの作>>続きを読む

水俣一揆-一生を問う人々-(1973年製作の映画)

4.3

前作終盤で解き放たれた被害者たちの怨念の熱量がひたすら持続する被害者vsチッソの激論の記録。本作の議論の軸は責任を認めたチッソに対して、被害者たちがいかにして今後の生活の十分な補償を獲得するのかという>>続きを読む

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

3.5

有害な父性に対して、母性が継承された生身の身体で抵抗する終盤のシーンには涙腺を刺激させられたが、なぜだろう。ここに向けて、経済的に場面が配置され、都合良く互いの感情を理解し合った他者たちが連帯する語り>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.4

面白いは正義。カメ止め同様に諸々のチープさは高校生が時代劇を作るという形式が免罪符となり、この世界観とキャラ造形を早々に受け入れられた。それ抜きにしても、大事故になりかねない設定の中でキャラクターを生>>続きを読む

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.4

ジャンル横断もあり物語的には一切飽きが来ない。『隔たる世界の2人』を連想する、安易なカタルシスで消費することの憚られる力及ばない世界が描かれている。風化させるものか、人間なめんななラストは音楽も相まっ>>続きを読む

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

4.6

これぞセンスオブワンダー!一生見てられる。肉片と血潮と共に花が咲き乱れ、小鳥が囀る下品で美しいイマジネーションワールド!大仰で陳腐な星条旗ではなく、個人が大切にする信念を背負った負け犬決死隊の尊厳と勇>>続きを読む

空白(2021年製作の映画)

4.6

『ブルー』に続き、またも吉田恵輔大傑作と言いたいところだが劇中の古田新太の台詞よろしく、「モヤモヤ」が残る。それは「モヤモヤ」が無いことに対する「モヤモヤ」。これだけ他者のことは分からないという前提で>>続きを読む

シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021年製作の映画)

4.4

初デスティン・ダニエル・クレットン。
エンドゲーム以来のMCU劇場鑑賞。
泣ける程面白い。1000年も暗躍してきた組織にしては間抜けで切り替えの早すぎる顛末、母の幻影を追い求める父と子の物語というエヴ
>>続きを読む

水俣 患者さんとその世界(1971年製作の映画)

4.3

初土本典昭。
高度経済成長の代償として罪の無い住民たちの命と生活を奪った水俣病。長い間、ろくな補償も受けずに苦しみ続けた患者とその家族という残された者たちの生活が淡々と記録された本作の前半部では、責任
>>続きを読む

東京自転車節(2021年製作の映画)

4.5

作為ありきの作劇だろうけど、ウーバードライバー目線で切実に切り取られた紛れもない2020年東京の記録。糸井重里に見てもらいたい。社会や搾取構造への強い違和感や問題提起を孕んだ作品だが、本作がそれに留ま>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.8

『ドライブ・マイ・カー』を観た、聴いた。本当に素晴らしい。言語化が憚られるほど「役者の間に起きた何か」という曖昧だが計り知れない重力のあるものが克明に記録されていた。それは顔であり、そして何より声だっ>>続きを読む

息の跡(2015年製作の映画)

4.5

『空に聞く』と違い、本作で小森監督は聞き手に徹する。更に一人でカメラを回しながら被写体である佐藤貞一さんと会話し、確実に良い顔と良い声を記録する。濱口竜介があのようなコメントを書くのも納得できる。佐藤>>続きを読む

空に聞く(2018年製作の映画)

4.5

聞き手(下手)から、背後に無数の他者を背負った"複声"の語り手(上手)となった阿部さん。取材から5年を経た後に、彼女から「少しだけ前を向けるようになった」という言葉を記録できた本作の価値は計り知れない>>続きを読む

ワイルド・スピード/ジェットブレイク(2020年製作の映画)

4.0

ジャスティン・リンが復帰した世紀の後出しジャンケンシリーズ第9弾。今回の後出しジャンケンでデッカードのハン殺し問題が丸く収まる。ハン復帰はまるでドラマチックではないが…。ディープフェイクのポール・ウォ>>続きを読む

本気のしるし 劇場版(2020年製作の映画)

4.7

「愛されているから愛している」から「愛しているから愛してる」に至るまでの4時間の道程。4時間という長尺によって2時間前後の映画にはできない多層的で奥行きのあるストーリーテリングが可能になっており、その>>続きを読む

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

-

ケリー・ライカート特集唯一ハマらなかった作品。大爆睡してしまった。映画前のレッドブルでその映画への集中力が格段に上がるということが最近分かったので、再チャレンジしたい。犬は可愛い。

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.7

いい…。
登場人物が多いわ、意味のない話をぺちゃくちゃ喋るわ、ドタバタコメディ要素もあるわ(馬鹿ここに極まれりなゴキブリ殺しシーンと強盗シーンに大爆笑)で処女作では後の作品とこうも印象が変わるものかと
>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.7

ラピュタのドーラ一家の息子ルイがタイガーモス号で着替えたシータを見て思わず漏らしたような「いい…」を誇張抜きで100回くらい頭の中で呟いた。いい…。
カートと合流後、車に乗車して間もなくラジオから流れ
>>続きを読む

ライトハウス(2019年製作の映画)

4.4

個人的にどストライクだった大傑作『ウィッチ』のロバート・エガース最新作の本作は今年のお祭り映画の一つ。語彙不足のためフィルマークスで何度か使っている表現の「よく分からないのだが、超絶面白い」と形容せざ>>続きを読む

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)

-

この世の不幸は全ての不安と、フィッシュマンズの音楽に出会った時には佐藤伸治がこの世にいなかったこと。でもフィッシュマンズに出会い、置物みたいな暇人主人である我々の退屈で幸せな日常を肯定する彼らの音楽に>>続きを読む

クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021年製作の映画)

4.4

モンスター襲撃初日が描かれる冒頭の掴みだけで大満足。日常が大殺戮に移行するまでを緻密に設計して描く恐怖描写にはあまりの恐ろしさに心が歓喜して泣きそうになった。リーが地元のスーパーで朝食用のリンゴとそれ>>続きを読む