ゆきむしさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

ゆきむし

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生きる LIVING(2022年製作の映画)

4.1

生きるとは、よく生きるとは?
ビル・ナイの寡黙な演技とカズオ・イシグロの脚本が素晴らしい。
無駄な描写はひとつもなく全てを物語る構成。それでいて紳士がいた最後の英国、嘗てはあったのに失われてしまった、
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.9

語られない物語。
ソフィーが、離れて暮らす父と過ごす11歳の夏休みの物語。
しかし、映画は全てを語らない、いや語れない。神の視点からすべてを語るには、映画は、実際に過ごした時間よりはるかに多くの時間が
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アフター・ヤン(2021年製作の映画)

3.9

心はどこにあるのか。

ヤンの不在をきっかけに再認識される家族の物語。
コゴナダ監督の描く映像空間と端正な物語運びが素晴らしい。
近未来SFとしても「ロボットに(AIに、クローンに)心はあるのか」とい
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ラストエンペラー(1987年製作の映画)

3.7

(坂本龍一さん追悼特集にて)
千年の王国の夢。
歴史は繰り返す。為政者の顔と呼び名が変わるだけだ。
そして皇帝のいない、皇帝が変わらない国では、数多の宦官が今も入れ替わり立ち替わり、保存庫の宝物を盗み
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レッド・ロケット(2021年製作の映画)

3.4

金なし職なし、人生どん底でも何とかなる。徹頭徹尾、今と自分のことしか考えないマイキー。そしてマイキーの女神ストロベリー。本人達は真面目に、どうしようもない現状からなんとか抜け出そうとしているだけだ。だ>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.4

「そこに愛はあるんか?」
無限に広がる無限の宇宙の中で、全く無に等しい私の、一片の意味もない馬鹿馬鹿しい人生。その馬鹿馬鹿しさを真正面から引き受けながら、しかし馬鹿馬鹿しさの真っ只中で犬死にしない方法
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渇水(2023年製作の映画)

3.4

太陽は誰のもの?空気は、水は?
自然に溢れ、全ての生き物が生きるために必要なものが、社会システムの中では貨幣によって分配される。仕方のないことであるゆえの一層のやるせなさ。
しかし本当に仕方がないのか
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プチ・ニコラ パリがくれた幸せ(2022年製作の映画)

3.5

普通という宝もの。
何処にでもある家族の、何処にでもいる子ども。作家ゴシニとイラストレーターのサンペが夢見た家族、叶わなかった少年時代を生きるプチ・ニコラ。作者と主人公がスクリーンで生き生きと語り合う
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アダプション/ある母と娘の記録(1975年製作の映画)

3.5

メーサーロシュ監督
家にも制度にも所属しないふたりの女の連帯。カタは一人で生きるために子どもを、アンナは両親と施設から逃れるために結婚を望む。だがアンナの結婚式はすでに崩壊の兆しを孕んでいる。ラストで
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波紋(2023年製作の映画)

2.9

彼らが本気で編むときは、で母性とは?を問うた荻上監督が、生身の母・主婦の家庭や社会の軛からの解放を描いてラストの爽快感が心地よい。
ただ息子の恋人への、小さな差別はともかく利用するくだりは純粋な悪意で
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⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)

3.7

「愛することを恐れないで」
モロッコの伝統衣装カフタン職人ハリムとミナの夫婦と若い職人ユーセフ3人それぞれの愛。
ハリムが1針ひと針魂を込めたカフタンの青が美しく、海のように広く、海のように深く、海の
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ナショナル・シアター・ライブ「ライフ・オブ・パイ」(2023年製作の映画)

3.7

物語が生まれるところ。
生と死の境。夢と現実のはざま。狂気と正気のあわい。過酷な運命を生き抜いたパイが語る奇跡の冒険譚とラストに訪れる深い深い洞察に釘付け。
湧き出るように現れるボートや水中に浮遊する
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トリとロキタ(2022年製作の映画)

3.8

人はひとりでは生きられない。この辛い世界は1人では寂しすぎるから。自分で自分を守るのでなく、互いに相手を支えることでかろうじて自分を保つことができたロキタとトリのふたり。
母親からも故郷からも、たどり
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.5

「王様の耳は、」
EOは歩く。ただ前に歩く。そこに意味などない。意味を求めるのはいつもヒトだ。傍観者でしかないヒトだ。
自分の運命はおろか、1メートル先、1秒先に何が待ち受けているかもわからず闇雲に歩
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シシリアン・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

3.9

祈り、あるいは魂の物語
「事実」はそうではなかっただろう。事実は出逢わなかっただろう。事実は彼女(ルナ)はいなかっただろう。
しかし、事実を超えて「かくあれ!」「そうでなければならない!」という祈りに
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メグレと若い女の死(2022年製作の映画)

3.5

抑制された演技と端正な物語運び、アンダー気味の画面と相まって、新たな王道ミステリーの趣き。
今後のシリーズ化が待ち遠しい!

丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)

3.1

本を読む楽しさ、知識が広がる喜び。
素敵な映画だったけど、映画の評価とは違うところを目指した作品だったのかな。

非常宣言(2020年製作の映画)

2.4

このレビューはネタバレを含みます

シナリオや設定のほつれを中央突破の力業で乗り切るのはいつもの韓国映画、そして泣かせ方も知っている。
とはいえ、物語の基本設定での突っ込みどころ(①テロに最初から最後まで所轄の刑事が対応?、②操縦士1人
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ウィ、シェフ!(2022年製作の映画)

3.5

主人公カティと移民の少年たちの掛け合いが、トントンと小気味よく、軍曹と新兵みたい!
食べること、作ること、給仕することを通じて、少年たちだけじゃなく、カティも一回りおおきく成長していく美食コメディ。

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)

3.6

#NowhereSpecial
死を前に1人残される息子の里親を探す主人公。しかし、どんなに豊かな家庭も、有能な両親も、息子にとって特別な家庭などない。たった1人の父親の、たった1人の息子の代わりなど
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それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

3.8

仕事、子育て、父の介護に毎日追われるサンドラの、不幸ではないけれど、行き場のない閉塞感を感じる生活に新しく芽生えた恋のときめきと戸惑い。サンドラ役のレア・セドゥが素晴らしい。大人の女性向け等身大の恋の>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

3.5

「僕は愛がなにかよく分からない」「いいのよ、私たちが愛だと思っているんだから」相手のために相手を想い、自分のために相手を想う、そして相手のために自分を想う。最後には自分と相手がひとつになるだろう。
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

3.8

信仰とは?、神とは?
ヴァーホーヴェン監督の、宗教ではなく宗教システム、そして教会権威への強烈な違和感と1人の人間の信仰、自身の内なる神を見いだした人間の真摯で直裁な意志と信仰の物語。
同時期に観たN
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ナショナル・シアター・ライブ 2023 「るつぼ」(2023年製作の映画)

3.9

無知と盲信が街に混乱を生み、それを利用する権威と狂信が、やがて大きな悲劇を引き起こす。
人間の愚かさ、運命の醜悪さを描きながら、その絶望の涯の果てに、運命に翻弄された人間が、翻弄された人間だけが出会う
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不思議の国の数学者(2022年製作の映画)

3.5

神の言語、数学。
数学を、何かの手段でなく純粋に数学として愛し関わるために脱北した数学者と南の高校生の物語。円周率をピアノで奏でる情景が美しい。
ポアンカレ予想を証明したロシアのグレゴリー・ペレルマン
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世界の終わりから(2023年製作の映画)

3.8

世界は終わるのか?
世界は、人間は救う価値が、救われる価値があるのか?紀里谷監督の強い強い想いがスクリーンから伝わり、また、それに応える伊東蒼の演技が素晴らしい。
ただラストのメッセージは、それが監督
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