中島晋作さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

四月(1962年製作の映画)

3.7

音の使い方がサイレント的。運び出され、また運び入れられる家具たち。アパートの部屋の様々な住人をひとつのショットに収めている。
はじまりの四月、新婚夫婦の生活のはじまり。人だけでなく、モノも執拗に撮る。
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水彩画(1958年製作の映画)

5.0

崩壊した家庭。夫は金を妻から奪い取り、家を出る。たどり着いた先は美術館。一枚の絵を見る。家が描かれている。自分の家だ。学芸員がその絵の前で立ち止まる。「きっと素敵な家庭なのでしょう」と解説をする。幸福>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

4.4

ショッカーとの対決は、基本的に昆虫自体の面白さに依存しているとはいえ、画の斬新さはある。しかし、画に身体がついていっていない。身体ではなく、頭で作った映画という印象。その意味で、映画全体が孤独に自閉し>>続きを読む

ミューズは溺れない(2021年製作の映画)

2.1

溺れている少女。時計を分解してネジを取り出すことは、彼女の時間が止まってしまったことに呼応する。今の世界から抜け出すために船を作る。少女二人が船を押すショットには、明らかに希望のようなものが託されてい>>続きを読む

ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

1.2

自然主義的、という形容が適切なのかわからないが、とにかく言葉と発話に違和感を感じる。マンブルコアに対する違和感とは微妙に異なる。演出の問題というより、脚本の不在か。全体に、若者(の言葉)を信じすぎてい>>続きを読む

シャザム!~神々の怒り〜(2023年製作の映画)

3.9

18歳になったら家を出るか働かなければならないという。でもそれは帰る家がない場合の話。この映画は、最終的には帰る場所がある人のための映画なのだと思う。

Winny(2023年製作の映画)

3.5

日本版『ソーシャル・ネットワーク』。室内照明の控えめさがよい。時代性を鑑みても、フェミニストの方が見たら違和感を持つだろうシーンが散見された。

毒薬/我慢ならない女(1951年製作の映画)

4.0

映画のスタッフへの感謝から始まる。大人たちと子供たちの裁判劇。

幸運を!(1935年製作の映画)

3.5

教会でなかなか結婚できないギャグなどがスクリューボール的。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

1.4

カットを細切れに割る。情報としての映像断片がまずあって、ミシェル・ヨーをはじめとした俳優の身体性に力点は置かれていない。
キー・ホイ・クァンはそれこそ『魔宮の伝説』の思い出しかないが、現在はあんな顔を
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王冠の真珠(1937年製作の映画)

3.3

人から人へ、真珠とともに言葉も伝えられてゆく。ときには伝言ゲームのよう。

役者(1948年製作の映画)

4.6

舞台が終わる瞬間に死ぬことが、一番幸福な生の在り方なのだという。言葉が多い。ギトリの映画は言葉の映画だと思う。
客が入らない舞台の二階席を無料で周りに配っていたというコメディ・フランセーズの豊かさに泣
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二羽の鳩(1949年製作の映画)

2.8

映画製作の舞台裏。仕事のない俳優が役を探している。ギトリはカメラに向かって台詞を喋り、観客に対する語り手として振る舞っている。

SHARING(2014年製作の映画)

4.8

自分の存在に確からしさが感じられないとき、分身が現れる。自分が自分でない、この自分でありたくない、という感覚。それが恐怖になる。

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

1.0

資本家と労働者のあいだにある権力構造が揺らぐ、あるいは反転することを、船の揺らぎとその反復で表している。

物ブツ交換(2018年製作の映画)

4.9

ただ座っているだけで時間が過ぎていく。ここには何もない。抜け出そうにも、歳をとりすぎてしまった。

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.3

傷ついた鳩が映画館に迷い込み、傷を直したら飛び立っていく。映画館は治療、あるいは癒しの空間として措定されている。
この映画におけるライトはノスタルジーを優しく包み込むものであり、醜悪さを照らし出すもの
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悲愁物語(1977年製作の映画)

4.0

ゴルフのスポ根からメロドラマ、喜劇へと転調の連続。自宅のゴルフマットで近所の住人とランウェイする終盤で映画の底が抜ける。筋は追えるが物語がまったく意味不明。ここまで理解不能な映画も久しく見ない。鈴木清>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

5.0

光量はやはり多い。スタンドライト、ヘッドライト、なにより映写機のライト。スピルバーグの原初にあるのがクラッシュ。
映画は芸術などではなく、ここでは現実逃避でしかない。現実は逃れようのない地獄。その地獄
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アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

3.0

量子世界へ縮退していった次の瞬間にはガリバー旅行記になっている。蟻の大群が宇宙を支配する。蟻が映れば画面が活気づく。醜い人間は死ぬ寸前まで醜い、としたのは正しい。

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

3.4

歴史に前景化しない女性たちは常に存在する、という告発。構成は『ベルリン・天使の詩』を思い出させる。
物語についての物語。物語は人を争わせ、和解させ、そして何よりも人を孤独にさせる。

バビロン(2021年製作の映画)

1.5

狂乱か静寂か、の極しかない。中間がない。ある意味で中間しかなかった『ファースト・マン』とは対極であり、その意味で面白い。切迫した音楽、カット割り。感覚刺激だけで勝負している印象。

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

1.1

コリン・ファレル、バリー・コーガンの佇まいを見る。内戦のアナロジーとしての人間関係。映像よりも、物語が映画を牽引している印象を受ける。

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

1.4

『サスペリア』にあった、被写体に対する冒涜的ともいえる細切れのカット割り演出は影を潜めた。男女の邂逅よりも、男性どうしの出会いのほうがドラマチックに演出されている。

崖上のスパイ(2021年製作の映画)

1.9

ハルビンの街並みは迫力がある。物語としても、演出の点でも、映画全体が夜明けを望んでいる。夜明けそのものを諦める厳しさはない。

別れる決心(2022年製作の映画)

5.0

どれだけヒッチコッキアンだとアピールしようと、ベルイマン的構図を多用していようと、画面から育ちの悪さが滲み出てしまう。浜辺に掘った穴に海水が侵入してくる場面の下品さなど特筆に値する。
スマホ表象には失
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悪魔の街(1956年製作の映画)

2.1

山根貞男さんが亡くなってショックを受けています…

ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.0

鳥の糞から始まって排便に繋がる。露悪的に見えるが、品の良さは隠せない。レズビアン・セックスシーンは確かに素晴らしい。しかしそれにも増して印象づけられるのは、荘厳さを宿したシャーロット・ランプリングの眼>>続きを読む

シャドウプレイ 完全版(2018年製作の映画)

2.0

都市に生きることの匿名性を表現するのに影ほど便利なものはない。しかし、乱用しすぎている。映像の断片による万華鏡でしかない。

かがみの孤城(2022年製作の映画)

1.1

伏線を回収することのくだらなさ。原作は誰だと思ったら辻村深月だった。
登場する子供たちがほぼブルジョワジー。別にマルキストではないのでそのことを批判する気はないが、誰かに相談すれば皆が協力してくれて悩
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新生ロシア1991(2015年製作の映画)

3.9

レニングラードに集まった8万人もの群衆。これが、きわめて20世紀的な、捨て置かれた風景のように見えてしまう。流行病のせいではないが、大昔の出来事のようで、90年代なのが信じがたい。
幸福を追い求めるう
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こどもが映画をつくるとき(2021年製作の映画)

3.8

被写体に寄り添うことはせず、常に一定の距離が保たれる。輪に入れない子供、勝手に遊び始める子供。映画を撮ることは、常に現実との格闘になる。
井口奈己の映画をほんとうに久しぶりに見た。ニシノユキヒコからも
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ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

2.8

男性の暴力性を統制する女性たち。オーディンの鴉に監視されながら、男は野獣化して遠吠えする。
デヴィッド・ロウリーによる究極のファンタジー映画の記憶も新しいため、やや印象に残りづらい。音響の特異性に映像
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ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.8

スマパンが流れたときの時代錯誤感に不安になるも、中盤からは盛り上がる。ピアース・ブロスナンが良い。
映画でロックが流れるときに襲われる残念な感覚はいつからか、もう忘れた。古いとは言わないが。使い方の問
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ヨーヨー(1965年製作の映画)

3.6

フェリーニ、マルクス兄弟、キートン、チャップリン、といった先人たちに敬意を捧げ、自らの喜劇を創り出す。タバコの火がなかなかつかない。