なまくらウォッチメンさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

なまくらウォッチメン

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麻薬密売人 プッシャー(1997年製作の映画)

4.1

再鑑賞

レフン監督がドグマ95方式のドキュメンタリータッチで撮ったデビュー作

人生のどん底を生きる麻薬密売人のチンピラのどん底の一週間を破滅一直線で描いていく

主演のキム・ボドゥニアの絶望顔が絶
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自由の幻想(1974年製作の映画)

4.3

100分間ずっとツッコミ不在のコント

何の秩序もない自由は混沌と変わりないのではないだろうか

自由を自由自在に解釈すること自体がナンセンスに思えてきた

小間使の日記(1963年製作の映画)

4.2

面白い
ブルジョワジー批判を小間使の視点から箱庭的な領域で捌いていく、という主題自体が興味深いが、それ以上に登場人物たちが息をするように叱言と陰口しか言わないので終始会話がギスギスしてて笑ってしまった
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ネイビーシールズ ローグ・ネイション(2021年製作の映画)

4.1

面白い
全体的なスケールの小ささは否めないが、アクションの構築の良さとバリエーションで観ていて飽きない

擬似ワンカット撮影ということで少し不安だったが、時間制限付きで逼迫している状態のワンシチュエー
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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

4.2

面白い
ミステリーの脱構築的な作りが良い
主題のミニマリズムというか、資本主義のナンセンスさへのアンチテーゼがしっかりラストの爽快な展開と繋がってくるところとか、作りが巧い

今作を観て、古典ミステリ
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エルマー・ガントリー/魅せられた男(1960年製作の映画)

4.3

口先三寸で信仰心のない男による、聞こえの良い説得力ある演説で容易く誘導される「宗教」という集団心理の脆さを徹底的に突いた傑作

宗教それ自体がエンターテイメントなのだという解剖の仕方が非常に面白い

アッカトーネ(1961年製作の映画)

4.2

面白い

フェリーニの『青春群像』を彷彿とさせる三十路無職のダメ男たちを描いたネオレアリズモ的作品

「神を信じていれば飢えない」と言った2分後くらいに主人公が事故死したのは笑った
主人公がラスト数分
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ドアをノックするのは誰?(1968年製作の映画)

4.2

面白い
映像的な手法こそゴダールのようなジャンプカットや撮影を用いているが、他者へのコミュニケーション不全、ホモソーシャル、BGMに合わせた群像的映像運びetc…
スコセッシ作品のエッセンスが既にデビ
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バーバー(2001年製作の映画)

4.3

再鑑賞

主人公がきっかけで起こる事件と出来事の中心に主人公がいない、悲劇の主人公にすらなれない精神的な透明人間の話

徹底的に傍観的な、主人公不在のノワール映画としてやはり最高に面白い
ストーリーは
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ブローニュの森の貴婦人たち(1944年製作の映画)

4.1

『田舎司祭の日記』以前の作品なのであまりブレッソンっぽい撮影はなく、かつ脚本がジャン・コクトーなので不思議な感じの作品だった

思ってたよりもかなり重いドロドロの復讐ものメロドラマだった

終盤何度も
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悪魔のいけにえ(1974年製作の映画)

4.7

実に5年ぶりに再見かつ初の劇場鑑賞

素晴らしすぎる
まるでスナッフフィルムを目撃してしまったかのような怖さ・厭さはもちろんのこと、神がかり的な画作りの良さに改めて感嘆とした

テキサスに染み付いた狂
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深く静かに潜航せよ(1958年製作の映画)

4.2

面白い
米海軍対日本海軍の潜水艦アクションを無駄なくタイトに見せていく娯楽作
ベタな展開もきっちりと盛り上げつつ、最後には一捻りのアクションを挿し込むのが良い

艦長のクラーク・ゲイブルと副長のバート
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豚小屋(1969年製作の映画)

4.3

面白い
中世パートと現代パートで並行的に描いていく全体主義・共産主義の寓話的風刺劇

劇中で間接的に描かれる「食人・獣姦」と言った異端的な行いが権威によって抑圧・是正されていき、更には全体主義の復興す
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或る殺人(1959年製作の映画)

4.2

『12人の怒れる男』とは対照的に、陪審員へ与える印象を決定づけるための法廷劇にフォーカスした作品

シリアスな法廷劇というよりは割とユーモア混じりの展開で、レイプ犯への復讐殺人の裁判の中でジョーク混じ
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ディフェンドー 闇の仕事人(2009年製作の映画)

4.3

面白い
知的障害を抱えヒーローという妄執に取り憑かれた主人公が、狂気的なヴィジランテから実際に街を救う英雄として認められることになる、ヒーロー版『キング・オブ・コメディ』

『アンブレイカブル』『ウォ
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ジャン=ポール・ベルモンドの 恐怖に襲われた街(1973年製作の映画)

4.0

ジャン=ポール・ベルモンドの身体を張った手に汗を握るアクションは素晴らしかったが、刑事アクションドラマとしては展開がダラダラしすぎで、二つの事件を並行して描いた意義がよく分からなかった

そもそもアク
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SF核戦争後の未来・スレッズ(1984年製作の映画)

4.5

世界規模の核戦争が起きた未来をシミュレーションしたBBC制作映画
米ソ対立から核投下、放射能の脅威に晒され続ける数十年の地獄をドキュメンタリータッチで描いていく
一応主人公にあたる女性から親子三代に渡
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ブラック・フォン(2022年製作の映画)

4.1

面白い
手堅い作りのジュブナイルホラーで、テンポ良く暴力描写もサラッと見せつつ容赦ない

ただ、序盤で巧かった省略部分(誘拐や過去の犠牲者のシーン)をその後また丁寧に説明するのは蛇足に感じた
兄妹愛の
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ブラックボックス:音声分析捜査(2021年製作の映画)

4.2

面白い

音声分析官の主人公が航空機事故の真相に迫るポリティカルサスペンス
ストーリーや主人公が徐々に狂気的に執着するようになるところは『カンバセーション…盗聴…』×『ミッドナイトクロス』×『ゾディア
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X エックス(2022年製作の映画)

4.0

純正ホラー・スリラーとしては全然面白くないが、グラインドハウスオマージュとしてはかなりの力作
正直娯楽映画というよりはグラインドハウスリスペクトに徹したアート映画として楽しんだ

惜しむらくは監督がグ
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メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)

4.1

面白い
女子高生と老婦人がBL漫画という共通の趣味から出会う、という所が最も劇的な出来事で、話自体は普遍的な青春物語なのが良かった
2人を隔てるのが若さと老いだけ、という構図も単純明快で良い

原作は
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バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

1.8

今年ワースト
フェリーニとタルコフスキーの真似事をしてやりたかったのがイニャリトゥのオナニーなのがキツい
そしてそれがユーモアもなく大して面白くないのが致命的

『8 1/2』的な作家の自己言及的な話
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秋のソナタ(1978年製作の映画)

4.3

大傑作
父性が存在しないエディプス・コンプレックスの話で、頼れる父親がいないのを埋めるように娘が信仰に走るが、結果的に何の救いにもならないのが何ともベルイマンらしい

支えてほしい、愛されたいが故に憎
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不貞の女(1968年製作の映画)

4.1

面白い
ブルジョワ家庭の不倫から始まるサスペンスを淡々と捉える変わった作品
一見ヒッチコック的サスペンスだが、サスペンス的な緊張感は無く、それが却ってブルジョワらしい空虚さが際立ってるようで良かった
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冬の旅(1985年製作の映画)

4.5

大傑作

『5時から7時までのクレオ』で好きだった死生観の描き方をより刹那的な方向へ拡張したような素晴らしい作品

主人公の屍体が見つかるところから始まり、彼女が交流してきた人々の回想で進行していく『
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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.8

『アバター』という名の『エイリアン2』×『タイタニック』だった

正に『エイリアン2』的な大衆アクション映画への発展として素晴らしかったが、3時間はどうしても長いのと『アバター』内世界の「記憶と意識の
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PASSION(2008年製作の映画)

4.5

傑作

劇中の暴力についての授業の話が、濱口作品全体を包括するような「自己と他者という世界の境」を扱ってて素晴らしい
フレーミングやカット割もそれに沿ってきちんと練られていて巧い
群像的な話を巧妙に考
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プレデター:ザ・プレイ(2022年製作の映画)

3.6

つまらなかったわけではないがまともに戦うまでに1時間近くかけるのは流石に冗長すぎる
『プレデター』一作目を意識した作りなのも伝わってくるが、やはり余計にドラマ要素を足してしまってるせいでバランスが悪く
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カモン カモン(2021年製作の映画)

3.5

映画としての作りが散漫
ドラマ部分と半ドキュメンタリー部分でテーマは共通してるのだけど相互作用が起きないので単に説明的なだけだった
全編モノクローム撮影もカラーの方が情景の良さが際立つように思う

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ダークマン(1990年製作の映画)

4.2

再鑑賞

人生と顔を理不尽に奪われた男が復讐を誓い、そして偽りの幸福とアイデンティティを捨て”ダークマン”として闇に身を落とす哀しき物語

最後に人間性と名前(アイデンティティ)を取り戻す『ロボコップ
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バートン・フィンク(1991年製作の映画)

3.9

再鑑賞

あんまり内容覚えてかったのも然もありなんという感じでそこまで好きではなかった
作家が創作に悩む内省的なストーリーは好みだが、なんかバシッと決まったオチみたいなのがやっぱり欲しい

コーエン兄
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西部戦線異状なし(1930年製作の映画)

4.2

過去鑑賞

反戦映画の傑作
意気揚々と戦場に飛び込んだ若者たちが現実を知り、故郷に帰っても自分たちの居場所が戦場にしかないことに気づく残酷さを描くのが見事

ヘイズ・コード以前ということもあるが、欠損
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マンマ・ローマ(1962年製作の映画)

4.1

初期パゾリーニ作品
他のイタリアン・ネオレアリズモ作品に比べると特に個人的に刺さるものは無かったが、とにかく人物一つ一つの動線の設計が見事
フレーム内の人物の動きを追ってるだけでも飽きない面白さ

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Mommy/マミー(2014年製作の映画)

3.7

ADHDを持つ息子とその母の真の愛の話…という感じで私にはあまり惹かれる題材ではなかった
露骨な感動演出みたいなのはなかったが、演技、演出、音楽の挿しこみ方等が大仰で悉く合わない

まぁ作品の出来が悪
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最強殺し屋伝説国岡 外伝 国岡ツアーズ大阪編 蘇る金のドラゴン なにわアサシンの逆襲(2022年製作の映画)

4.0

外伝と冠する通り、本編外の小話的な肩の力が抜けるような規模なのが映画に無い独特な感じで良い

国岡が母親と自分の主演作を観るという、罰ゲームみたいな展開が大トリで爆笑してしまった

やっぱりどれだけ虚
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FLEE フリー(2021年製作の映画)

4.2

ドキュメンタリーとアニメーションという変わった組み合わせだが、淡々と事実を捉えるドキュメンタリーにはない「物語」の強調を、ほぼ劇映画のような形で見せているのが見事

難民でありゲイである主人公の旅路の
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