一番印象に残っているのは、悪意のない友人からの男の紹介が亀裂を生む瞬間だったりする。あそこだけ別の映画みたいだった。
本来的には画面には映らない音が、手話で、振動で、表情で伝わる。ああ、映画だ。
好きな人がいるのは分かるという感想はいつもと同じ。ある意味で「テーマパーク」的。
注力するところとそうでないところの差が甚だしく、あまりに歪な映画ではあるけれど、その一点突破的な力強さを支持します。
シナリオの弱さゆえ、それでも魅せてしまう演出の巧さが光ったという印象。少なくとも娘が父親を探す話にはなってないよねこれ。伊東蒼が一旦退場したところで映画は急激に失速。
押し入れのシーンくらいしか心躍る瞬間はなく、あまり面白いとは思えなかった。
やっと見れた。ちょっと他にない画面と脚本の強度。失敗作どころか傑作なのではと思う。
視線は決して交わらず、上辺だけの膨大な会話が続く。小津で言うところの『秋刀魚の味』だと思った。虚無。
「土地の言葉を覚えて~」一言の中に渡世人としての覚悟と実感が見える良いセリフだと思う。
『寝ても覚めても』や『ドライブ・マイ・カー』と比べて明らかに「小さな」映画でありながら、はるかに大きな広がりを感じられるのが面白いところ。映画でまだこんなことができるのかと心底感動した。
セリフにこだわった結果のこのセリフ量という大江さんのコメントがしっくりきた。
改めて見ると、やっぱり曽根→相米の流れって確実にあると思う。音の遊び方など。スタッフがやりたいことやりたいようにやってる感も。